「感覚統合とは?」子どもの気になる行動の理解につながる感覚統合の視点【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
子どもが集団生活をはじめ、不器用さや集中力の続かなさが目立ってきた場合、心配になる保護者の方もいらっしゃるかもしれません。鉛筆がうまく持てずマスの中におさまるような字が書けない、きれいに紙を折れないなどの場合、「感覚統合」がうまくいっていない可能性があります。そのメカニズムと解決方法を探っていきましょう。
監修: 高畑脩平
藍野大学 医療保健学部 作業療法学科 講師
NPO法人はびりす 理事
作業療法士。NPO法人はびりす理事。専門は読み書き障害の子どもへの支援。著書に「子ども理解からはじめる感覚統合遊び 保育者と作業療法士のコラボレーション (クリエイツかもがわ)」ほか。
NPO法人はびりす 理事
感覚統合とは?
感覚統合とは、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。
私たちは、光や音など、たくさんの刺激に囲まれながら生活しています。そのたくさんの刺激が身体に加わっていることを感じるはたらきを感覚といいます。
人間の感覚には、すでによく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。
これらの感覚は、生活していると、絶えずさまざまな感覚器官から入ってきます。私たちの脳は、このたくさんの感覚をきちんと分類したり整理したりすることができ、これを統合といいます。
この統合という機能は言わば交通整理をしている警官のようなものです。たくさんやってくる車を警官がきちんと整えることでスムーズに車が走ることができるように、身体に入ってくる感覚に対して統合機能が正しくはたらくことで、正しく感覚を整理し、取り入れることができます。しかし交通整理ができていないと、車はどこを走っていいか分からなくなり、混乱し、渋滞してしまいます。統合がうまくいかないと、次々にやってくる感覚の強弱を調整したり、感覚を受け入れる量を調節することがうまくできず、混乱してしまうという状態を引き起こしてしまうのです。
つまり、次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場そのときに応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。
私たちは、光や音など、たくさんの刺激に囲まれながら生活しています。そのたくさんの刺激が身体に加わっていることを感じるはたらきを感覚といいます。
人間の感覚には、すでによく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。
これらの感覚は、生活していると、絶えずさまざまな感覚器官から入ってきます。私たちの脳は、このたくさんの感覚をきちんと分類したり整理したりすることができ、これを統合といいます。
この統合という機能は言わば交通整理をしている警官のようなものです。たくさんやってくる車を警官がきちんと整えることでスムーズに車が走ることができるように、身体に入ってくる感覚に対して統合機能が正しくはたらくことで、正しく感覚を整理し、取り入れることができます。しかし交通整理ができていないと、車はどこを走っていいか分からなくなり、混乱し、渋滞してしまいます。統合がうまくいかないと、次々にやってくる感覚の強弱を調整したり、感覚を受け入れる量を調節することがうまくできず、混乱してしまうという状態を引き起こしてしまうのです。
つまり、次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場そのときに応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。
感覚統合がうまくいかないとは?
反対に感覚統合がうまくいかないと、どのようなことが起こるでしょうか。例えば先生の話を静かに聞くというシーンにおいて、感覚統合がうまくいっていない子どもは、扇風機の音が気になったり(聴覚)、窓の外を歩いている人が気になったり(視覚)、着ている服のタグが気になったり(触覚)、給食の匂いが気になったり(嗅覚)、なかなか集中して話を聞くのが難しい様子が見られるかもしれません。周囲から見ると、落ち着きがない、集中力がないと捉えられがちですが、その背景には感覚統合のトラブルがあるかもしれません。
感覚統合につまずきがあると出る影響は? 感覚過敏や発達障害とも関係がある?
感覚統合がうまくいかないと、情緒面、対人面、言語面など日常生活のさまざまな場面で困ったことが起こることがあります。以下で感覚統合がうまくいかないと、どのようなことが起きるのかについて挙げました。
感覚面
・触られることを極端に嫌がる
・ドライヤーや泣き声など特定の音が嫌いである
・自分で頭を叩く
・いつまでもジャンプする
感覚面では感覚過敏・感覚鈍麻があらわれるケースが多いです。感覚過敏とは、特定の感覚刺激に対して過剰に反応してしまう状態を指し、反対に感覚鈍麻とは、感覚刺激に対して反応が鈍く、子どもによっては自分からより強い刺激を与えようとする状態のことを言います。感覚刺激を上手にコントロールして整理することができず、それが原因で子どもが苦しい思いをすることがあります。
・ドライヤーや泣き声など特定の音が嫌いである
・自分で頭を叩く
・いつまでもジャンプする
感覚面では感覚過敏・感覚鈍麻があらわれるケースが多いです。感覚過敏とは、特定の感覚刺激に対して過剰に反応してしまう状態を指し、反対に感覚鈍麻とは、感覚刺激に対して反応が鈍く、子どもによっては自分からより強い刺激を与えようとする状態のことを言います。感覚刺激を上手にコントロールして整理することができず、それが原因で子どもが苦しい思いをすることがあります。
感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?発達障害との関係、子どもの症状、対処方法まとめ【専門家監修】
情緒面
・不注意、集中ができない
・順番が待てない、すぐに怒る
・気分の切り替えができない、こだわりがある
情緒面での問題としては、集中力が続かない、自分の感情を抑えることが難しく、衝動的に行動してしまうという傾向がみられます。それゆえに順番待ちができず割り込みをする、自分の想定外の結果を柔軟に受け入れられず、集団で決めたルールや時間などが守れないということがあります。
・順番が待てない、すぐに怒る
・気分の切り替えができない、こだわりがある
情緒面での問題としては、集中力が続かない、自分の感情を抑えることが難しく、衝動的に行動してしまうという傾向がみられます。それゆえに順番待ちができず割り込みをする、自分の想定外の結果を柔軟に受け入れられず、集団で決めたルールや時間などが守れないということがあります。
言語面
・言葉が出てこない
・話しかけても振り向かない
・自分が思っていることをうまく言えない
・助詞の間違い
言語面では、言葉を使ったコミュニケーションが上手にできない、伝えたい気持ちがあっても言葉に出して相手に伝えるということが難しい、というような苦手意識をもつ傾向があります。
・話しかけても振り向かない
・自分が思っていることをうまく言えない
・助詞の間違い
言語面では、言葉を使ったコミュニケーションが上手にできない、伝えたい気持ちがあっても言葉に出して相手に伝えるということが難しい、というような苦手意識をもつ傾向があります。
対人面
・友達とうまく遊べない、みんなと同じ行動ができない
・ルールの理解ができない
対人面でのつまずきは、情緒面や言語面でのつまずきとの関連が強いです。友達どうしで決めた遊びのルールや法則を理解することが苦手なために、友達とうまく遊べない。また、衝動的な行動をしてしまうため友達から距離を置かれてしまい、一緒に遊ぶことができないという場合もあります。
・ルールの理解ができない
対人面でのつまずきは、情緒面や言語面でのつまずきとの関連が強いです。友達どうしで決めた遊びのルールや法則を理解することが苦手なために、友達とうまく遊べない。また、衝動的な行動をしてしまうため友達から距離を置かれてしまい、一緒に遊ぶことができないという場合もあります。
動作面
・じっとしていられない
・跳び箱、縄跳びやボール投げなどが大きな運動が苦手
・ひも結びや箸の使い方など細かな運動が苦手
動作面では、情緒面での問題がそのまま動作に表れることがあります。つまり、集中力が続かない・自分の感情をコントロールできないという情緒的問題がある場合、じっとすることができない、そわそわしてしまうという直接的な動作に表れるということです。また、感覚統合の発達過程であるボディイメージの形成、手指の機能分化がうまくいかず、身体を大きく使った運動や手先の細かな動きを必要とする動作が苦手であると感じてしまうことがあります。
・跳び箱、縄跳びやボール投げなどが大きな運動が苦手
・ひも結びや箸の使い方など細かな運動が苦手
動作面では、情緒面での問題がそのまま動作に表れることがあります。つまり、集中力が続かない・自分の感情をコントロールできないという情緒的問題がある場合、じっとすることができない、そわそわしてしまうという直接的な動作に表れるということです。また、感覚統合の発達過程であるボディイメージの形成、手指の機能分化がうまくいかず、身体を大きく使った運動や手先の細かな動きを必要とする動作が苦手であると感じてしまうことがあります。
感覚統合の心理的・二次的問題
感覚統合に問題がある場合、さまざまな活動に失敗することがどうしても多くなります。これを、感覚統合がうまくできないということを理解していない周囲から「怠けている」「不器用だ」という見方をされてしまうことがあります。このような周囲からの評価によって子どもは自信を失ってしまうことがあります。
感覚統合の難しさと、発達障害との関係は?
数々の発達障害の症状には、感覚統合がうまくいかないことが関わっている場合があります。感覚統合の仕組みを理解することは発達障害への理解にもつながります。感覚統合の仕組みをもとに生み出された感覚統合療法は、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)がある子どもによく利用されている療育方法でもあります。
「6年間の感覚統合遊びの成果?自転車や縄跳びもできるように」発達障害がある子どもの感覚統合療法の体験談
発達障害がある子どもに感覚統合という面でつまずきがある、感覚統合療法を受けているという体験談をご紹介します。このお子さんは2歳の時点でASD(自閉スペクトラム症)、DCD(発達性協調運動症)と診断されたそうです。DCD(発達性協調運動症)には、手・目・足のそれぞれの部位の動きを一緒に行う運動(キャッチボール、縄跳びなど)が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確だであったり、困難であったりする特徴があります。
2歳の時に主治医に書いていただいた診断書を見返してみて、「発達性協調運動障害」の文字を見つけ、やっぱり感覚統合が必要だったのだと、改めて思いました。
現在の年齢(小学三年生)になり、療育を受けられるところがなくなったので、いろいろ家庭でできることを調べていると、訓練に通っていたときにやっていた遊びがどのようなことに関係しているか、分かってきました。
たとえば、
・ボールプールに入ることは、ボールの感触が背中に伝わることによって、自分の背中を認識できる
・ビーズコースターを使うことは、手と目の協調運動を促す
などです。
6年間の訓練の成果かどうかはわかりませんが、自転車に乗れるようになったり、縄跳びがとべるようになったりしています。
※「発達性協調運動障害」は、最新版『DSM-5-TR』以降「DCD(発達性協調運動症)」という診断名に変更されました。
DCD(発達性協調運動症)とは?具体的な特徴や対応法/専門家監修
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感覚統合に問題があるかも…と思ったら?
子どもが感覚統合に問題があるかもしれないと感じた場合、どのように支援していけばいいかについて紹介します。
◇感覚統合検査、チェックシートなどで自分の子どもの傾向を調べてみる
日本感覚統合学会ではこれまでの研究結果をもとに開発された感覚発達のチェックシートを公開しており、誰でもダウンロードすることができます。このチェックシートに沿って子どもの感覚統合の発達状態やどこにつまずきがあるのか確認することができます。ぜひ参考にしてみてください。なお、チェックシートの結果だけで子どもの状態を判断するものではないので、目安として利用することが大切です。
最終的な解釈については専門家に相談することがおすすめです。
◇感覚統合検査、チェックシートなどで自分の子どもの傾向を調べてみる
日本感覚統合学会ではこれまでの研究結果をもとに開発された感覚発達のチェックシートを公開しており、誰でもダウンロードすることができます。このチェックシートに沿って子どもの感覚統合の発達状態やどこにつまずきがあるのか確認することができます。ぜひ参考にしてみてください。なお、チェックシートの結果だけで子どもの状態を判断するものではないので、目安として利用することが大切です。
最終的な解釈については専門家に相談することがおすすめです。
◇感覚統合療法を受けてみる
感覚統合のつまずきへの支援には、感覚統合療法を取り入れることも1つの方法です。感覚統合療法では、作業療法士(OT)が子どもに寄り添いながら、子どもが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。感覚統合療法に興味がある方は、自治体の療育センターやリハビリ、小児科医などの医療機関へ足を運び、相談してみるのも一つの手かもしれません。
◇感覚統合が促進されるような遊びや活動をやってみる
感覚統合は、日々の活動や遊びを通して楽しく高めることができます。ボールを投げ合いっこする、積み木を高く積み重ねていく、ブランコ遊びなど身近にあるおもちゃや遊具でも感覚統合を促進するような遊びにつながります。家庭や保育・学校環境でできる感覚統合を高める遊びは以下の書籍に紹介されているので、参考にして取り入れてみるのもよいでしょう。
感覚統合のつまずきへの支援には、感覚統合療法を取り入れることも1つの方法です。感覚統合療法では、作業療法士(OT)が子どもに寄り添いながら、子どもが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。感覚統合療法に興味がある方は、自治体の療育センターやリハビリ、小児科医などの医療機関へ足を運び、相談してみるのも一つの手かもしれません。
◇感覚統合が促進されるような遊びや活動をやってみる
感覚統合は、日々の活動や遊びを通して楽しく高めることができます。ボールを投げ合いっこする、積み木を高く積み重ねていく、ブランコ遊びなど身近にあるおもちゃや遊具でも感覚統合を促進するような遊びにつながります。家庭や保育・学校環境でできる感覚統合を高める遊びは以下の書籍に紹介されているので、参考にして取り入れてみるのもよいでしょう。
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