結節性硬化症の原因

結節性硬化症は9番目(TSC1)と16番目(TSC2)の遺伝子上に異常があることによって、腫瘍をつくるタンパク質(mTOR)をコントロールできなくなることが原因です。

TSC1とTSC2はハマルチンとチュベリンという腫瘍を抑制する機能を持ったタンパク質をつくりだします。mTOR(エムトール)は働きが強くなりすぎると腫瘍をつくりだすため、このハマルチンとチュベリンがうまく働かなくなると腫瘍が表出するのだろうと考えられています。

またmTORは腫瘍の他にてんかん、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害を発症させる働きもあるといわれています。結節性硬化症の方にてんかんや自閉症などの発達障害がある方が多いといわれているのは、結節性硬化症によってmTORをコントロールすることができなくなるために起こるのではないかと考えられています。
参考:結節性硬化症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4384

結節性硬化症は遺伝するの?

結節性硬化症は両親からもらった遺伝子の中に異常が起こることによって起きる遺伝性の疾患です。疾患を発症する可能性は、男女を問わず50%とされています。

しかし調べてみると両親に結節性硬化症の症状が全く見つからないというケースが約60%以上あったことが分かりました。このような場合は両親からの遺伝ではなく、両親の精子または卵子の遺伝子に突然変異が起こり、子どもが発病したと考えられます。突然変異が起こる原因は残念ながらまだ分かっていません。

またてんかんやASD(自閉スペクトラム症)や知的障害(知的発達症)などが発症しない軽度の結節性硬化症がある方の場合、また突然変異によって結節性硬化症になった場合でも同じく50%の確率で遺伝子の異常がみられます。

また両親が遺伝子異常を持たずに、突然変異によって結節性硬化症が表出した子どもの次に生まれてくる子どもが罹患する確率は、遺伝子異常がない方の出産とだいたい同じだといわれています。
出典:結節性硬化症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4384

結節性硬化症の確定診断はどうやって行うの?

結節性硬化症は遺伝子検査で診断することができますが、実際は遺伝子検査での病変の検出率は低く、臨床診断に頼らざるをえない状況になっています。

症状もバラつきがあり、特殊なものばかりではなく結節性硬化症でなくとも一般的に発症することがあるものがほとんどです。したがって、診断はいくつかの症状の組み合わせによって判断していくことになります。

診断基準

臨床診断の他にもさまざまな検査結果と合わせ医師が総合的に診断を下します。下記の要素をもとに臨床診断を行います。

・結節性硬化症であることが確実 :大症状 2つ、または大症状 1つと小症状 2つ
・結節性硬化症の可能性が高い :大症状 1つと小症状 1つ
・結節性硬化症が疑われる :大症状 1つ、または小症状 2つ以上
◇大症状
1.顔面の血管線維腫または前額部,頭部の結合織よりなる局面
2.非外傷性多発性爪囲線維腫
3.3つ以上の白斑(hypomelanoticmacules,threeormore)
4.シカグリパンチ(shagreenpatch/connectivetissuenevus)
5.多発性の網膜の過誤腫(multipleretinalnodularhamartomas)
6.大脳皮質結節(corticaltuber)
7.脳室上衣下結節(subependymalnodule)
8.脳室上衣下巨大細胞性星状細胞腫(subependymalgiantcellastrocytoma)
9.心の横紋筋腫(cardiacrhabdomyoma)
10.肺リンパ管筋腫症(lymphangiomyomatosis)
11.腎血管筋脂肪腫(renalangiomyolipoma)

◇小症状
1.歯エナメル質の多発性小腔(multiple,randomlydistributeddentalenamelpits)
2.過誤腫性直腸ポリープ(hamartomatousrectalpolyp)
3.骨シスト(bonecyst)
4.放射状大脳白質神経細胞移動線(cerebralwhitematterradialmigrationlines)
5.歯肉の線維腫(gingivalfibromas)
6.腎以外の過誤腫(nonrenalhamartoma)
7.網膜無色素斑(retinalachromicpatch)
8.散在性小白斑(confettiskinlesions)
9.多発性腎嚢腫(multiplerenalcyst)
出典:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913643_2.pdf

検査方法

結節性硬化症を診断するためには、表出している疾患や症状の根本的な原因が結節性硬化症であることを断定していく必要があります。その際にMRIやCTといった画像検査などを行います。結節性硬化症は遺伝子検査または次の項目を含む一連の検査により診断されます。

・脳の磁気共鳴画像診断(magnetic resonance imaging、略してMRI)
・コンピューター断層撮影 (computed tomography、略してCTスキャン)
・心電図(electrocardiogram、略してEKG)
・心エコー図検査
・腎臓の超音波検査
・目の検査
・ウッドランプ(紫外光)の下で皮膚を観察する
出典:『結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン』|結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913643_2.pdf
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