急性脳症はウイルスが原因?意識障害などの症状・治療や社会的サポートについて紹介します。

ライター:発達障害のキホン
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乳幼児がかかりやすい急性脳症をご存じでしょうか?急性脳症はインフルエンザなどの身近な感染症が進行し、脳に浮腫をつくることによってけいれんや意識障害を発症する病気です。最悪の場合は死を招くこともあります。急性脳症の原因や予防法なども紹介していきます。

目次

急性脳症とは

急性脳症は主にウイルス感染症に感染したのをきっかけに、急激に脳に浮腫(むくみ)が生じ、意識レベルが低下する疾患のことをいいます。

病原となるウイルスに感染し、ウイルスに対して過剰な免疫反応が全身の血管に炎症をおこすことにより、意識障害、けいれん、嘔吐、血圧・呼吸の変化などが起こります。

ウイルスは身近なインフルエンザウイルスや、突発性発疹を引き起こすヒトヘルペスウイルス、急性胃腸炎を引き起こすロタウイルスなどが主な病原となっています。突発性発疹や急性胃腸炎は乳幼児や子どもに多く発症する疾患ということもあって、急性脳症は生後6ヶ月~1歳代に多く発症します。

実は急性脳症という名称は正式な学術用語としては使われていません。したがって、何らかのウイルスに感染し急性脳症を起こした場合は「けいれん重積型(二相性)急性脳症」か「急性壊死性脳症」などの症候群の名称、または「インフルエンザ脳症」など病原ウイルスに関連した名称で診断されます。

病原体による分類と臨床・病理・画像所見による症候群分類があるため診断名に違いはありますが、どのウイルスにかかっても「けいれん重積型(二相性)急性脳症」または「急性壊死性脳症」「可逆性脳梁(かぎゃくせいのうりょう)膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症」などの病理がみられるため、分類には大きな違いはありません。

これら3つの病理は画像所見などが異なりますが、症状には特異的な違いは見られません。ですので、下記では急性脳症の症状や原因などをまとめて紹介していきたいと思います。
参考:急性脳症の全国実態調査 |水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)
https://encephalopathy.jp/nsurvey_data/h22.pdf
参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4513
参考:重症・難治性急性脳症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3196
参考:『急性脳症の分類とけいれん重積型』|水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/40/2/40_2_117/_pdf

急性脳症の主な症状

急性脳症は主にウイルス感染症に罹患し、何らかの原因で重篤化することで脳機能全般に障害が生じる疾患です。例えば意識障害、けいれん、嘔吐、血圧・呼吸の変化、などが子どもに現れ、救急で病院を受診することで発覚します。ここでは子どもがウイルスに感染してから、どのような症状が起こるのかまとめていきたいと思います。

ウイルス感染症に感染

◇インフルエンザ・・・インフルエンザはA型またはB型のインフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状(風邪の症状)が出てきます。約1週間の経過で回復するのが典型的なインフルエンザで、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強いことが特徴です。
参考:インフルエンザとは|NIID国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu/392-encyclopedia/219-about-flu.html
◇突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス)・・・乳児期に発症するのを特徴とする熱性発疹性疾患といわれています。38度以上の発熱が3日間ほど続いた後、解熱とともに鮮紅色の発疹が体幹を中心に顔面、手足に数日間出現します。また下痢、まぶたの腫れ、大泉門(乳児特有の額の上にある骨と骨のつなぎ目)の膨隆、リンパ節の腫れなどがありますが、多くは発熱と発疹のみで経過します。
参考:突発性発疹とは|NIID国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/532-exanthem-subitum.html
◇急性胃腸炎(ロタウイルス)・・・主に発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などがみられます。はじめは発熱があり、嘔吐、下痢など腹部症状が遅れて出現することもあります。
参考:感染性胃腸炎とは|NIID国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/383-intestinal-intro.html

急性脳症の初期症状

それぞれのウイルス症状のほかに、
・頭痛や周囲からの刺激に反応するものの、すぐに意識が混濁する状態
・周囲への警戒心が強く、興奮したり、大きな声で叫んだり、暴力を振るったりしやすい状態
などが表出します。
参考:脳症の治療における留意点|水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)
https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/01901/019010071.pdf

急性脳症の主症状

ウイルスに感染してから初期症状を経て、主症状に変わっていきます。けいれん重積型急性脳症、急性壊死性脳症、どちらの場合も意識障害、けいれんを主として嘔吐、血圧・呼吸の変化、発熱などが生じます。下記では主症状が起こってから予後までの症状を時系列にまとめました。

<主症状が発症してから予後まで>

・ウイルスに感染し発熱から24時間以内・・・主症状のけいれん・意識障害が起こります。けいれんは「けいれん重積(15分~1時間程度続く長いけいれん)」が起こる場合がほとんどです。
※初めてのけいれん、またはけいれんが約5分継続した時点で救急車を呼んでください。


けいれん後・・・意識障害が生じる場合があります。

発熱から4~6日後・・・2回目の短いけいれんが群発して起こります。このとき意識障害を伴う場合もあります。

回復期・・・目的のない運動を繰り返すことがあります。(反り返り、手足を振り回す行為、口をもぐもぐさせる行為など)

予後・・・急性脳症が起こった後、てんかん、知的障害(知的発達症)、運動障害など何らかの後遺症が残る割合は、けいれん重積型急性脳症では66%、急性壊死性脳症では46%といわれています。障害の程度は人それぞれですが、リハビリによって回復することもあります。後遺症に関しては追って説明していきます。
参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4513
参考:急性脳症の全国実態調査 |水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)
https://encephalopathy.jp/nsurvey_data/h22.pdf

急性脳症の原因

急性脳症の原因はまだ分かっていません。現在分かっている急性脳症のメカニズムは、主にウイルス感染をきっかけとしてサイトカインストーム、代謝異常、興奮毒性などの病態が進行し、脳や各臓器に異常をきたす、ということです。

サイトカインストームとは、免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調整作用などがあるサイトカインという細胞間情報伝達機能をもつタンパク質の多くが、ウイルスや細菌などが原因で調節不全を起こすことを言います。

興奮毒性とは、興奮性神経伝達物質としてのはたらきをもつグルタミン酸が、過剰に存在することによって細胞毒性を示すというものです。

急性壊死性脳症ではサイトカインストームが進行することが多く、けいれん重積型急性脳炎は興奮毒性が多いと推定されています。

インフルエンザなどのウイルスに感染してもほとんどの人は病態は進行しません。まれに病態が進行すると急性脳症となります。急性脳症のメカニズムは解明されていますが、どのような条件が揃うと病態が進行し、急性脳症になるのかは分かっていません。

しかし、近年の難病情報センターの研究班による研究によって、これらの病態の背景には複数の遺伝的要因が存在するのではないかという仮説が立てられ解明が進められています。特定の遺伝子に特徴があることによって、前述の病態の進行を引き起こし、急性脳症も引き起こす関連があるのではないかといわれています。
参考:重症・難治性急性脳症|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3196

急性脳症を予防するには?

以上のことから根本的に急性脳症を予防することは難しく、考えられる予防策はインフルエンザや突発性発疹、ロタウイルスなどの感染症を予防することです。

ウイルス感染は日々のうがい・手洗いなどによって防ぐことができます。また予防接種などを行うことで、できる限りウイルス感染を予防しましょう。
次ページ「急性脳症の診断/検査」

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