妊娠中に気をつけたいサイトメガロウイルスとは? 感染するとどうなるの?治療・予防方法って?

サイトメガロウイルスとは、人の体液に多く含まれるウイルスです。日本人の多くが抗体を持ち、多くは重い症状は出ないと言われています。しかし、近年サイトメガロウイルスの免疫がなかったり、妊娠中の初感染により生まれてくる子どもに影響が出たりすることが増えています。以下、サイトメガロウイルスの感染経路や症状、重症化を予防するために妊娠期に気をつけたいことを紹介します。

サイトメガロウイルスとは?
ですが現在、生活環境が以前より改善され、清潔なものに囲まれることが多くなったため、サイトメガロウイルスに感染したことがなく、抗体を持っていない女性の割合が増えていると言われています。
そのため、妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染してしまい、そのままお腹にいる赤ちゃんにも感染してしまうことがあります。その場合、低出生体重児で生まれてきたり、視覚障害・聴覚障害・発達障害など体のさまざまな部分に障害が現れたりすることもあります。
妊娠中の女性に感染すると大変?TORCH症候群とは
「TORCH」は5種類の感染症の頭文字をとっています。
出典:http://toxo-cmv.org/about_meisyo.htmlTはToxoplasma gondii(トキソプラズマ原虫)、Oはothers(その他)ということで梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)などを含み、RはRubella virus(風疹ウイルス)、CはCytomegalovirus(サイトメガロウイルス [CMV])、そしてHはHerpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス [HSV])を示します。
サイトメガロウイルスに感染するとどうなるの?
ですので、サイトメガロウイルスに感染することに対して特別神経質になる必要はありません。一度感染することでサイトメガロウイルスへの抗体がつくられるので、感染すること自体は悪いことではないのです。
サイトメガロウイルスの感染について気をつけるべきことは、妊娠中の方が初めてサイトメガロウイルスに感染してしまうことで起きる先天性サイトメガロウイルス感染症です。加えて、免疫機能が低い方が子どもの体液に触れてそのままにすることで起きる後天性サイトメガロウイルス感染症も注意する必要があります。以下、詳しくご説明します。
先天性サイトメガロウイルス感染症
近年、妊娠可能年齢の女性が、サイトメガロウイルスの抗体を持っている割合は90%台から70%台程度に減少してきていると言われています。このような、サイトメガロウイルスの抗体がない女性のうち、妊娠した時に初めてサイトメガロウイルスに感染する女性は1~2%います。
出典:http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/cmv.html低出生体重:赤ちゃんが軽い体重で生まれてきます。
小頭症:頭の大きさ(頭囲)が小さくなります。
紫斑(皮下出血):出血を止める働きのある血小板が減少して、皮下に出血が起こります。
肝炎:肝臓の細胞が壊れる肝炎の状態になります。
難聴:耳の聞こえが悪くなります。片耳の場合も両耳の場合もあります。
発達障害:軽度のものから重症のものまで、その重症度には大きな差があります。
てんかん:けいれん発作を起こすことがあります。
視力障害:網膜の炎症や眼球形成自体に異常が起こり、視力に影響が出ます。
死亡:多くはありませんが、最重症の場合は死亡することもあります。
後天性サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルスの影響で何かしらの障害を伴う症状が出るのは、多くが先ほど説明した先天性サイトメガロウイルス感染症です。後天的にサイトメガロウイルスに感染した場合、特に症状は現れないということがほとんどです。
ですが、子どもであれば母親から十分にサイトメガロウイルスの抗体をもらえなかった時、大人であれば免疫機能が低下している時にサイトメガロウイルスに感染すると、症状が伴うことがあります。
特に、早産児や低出生体重児の場合は、母親がサイトメガロウイルスの抗体を持っていたとしても、抗体を十分に受け取る前に生まれることが多くあります。赤ちゃんは、胎盤を通して母親からさまざまな抗体を受け取ることで、生まれてすぐに感染症などを発症するリスクを減らすことができています。そのため、抗体を受け取る量が減ってしまっていると、後天性サイトメガロウイルス感染症による重い症状が現れることがあります。
サイトメガロウイルスの感染経路とは?
・性交による感染(子宮頸管・粘液、腟分泌液、精液)
・母から子へ、胎盤や母乳などによる感染
・輸血や臓器移植などによる感染
また、感染経路の1つとして胎盤や母乳などによる母子感染を挙げましたが、これを知って「赤ちゃんに母乳を与えるとサイトメガロウイルスに感染し、何か症状を引き起こすことがあるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。
既にご説明したように、多くの人はサイトメガロウイルスの感染経験があり、抗体を持っています。そのため、母乳をあげることでサイトメガロウイルスの感染による何かしらの症状につながってしまう、ということはありません。
母乳によるサイトメガロウイルスの感染・感染症の発症は、早産児や低出生体重児などの未熟児の場合、少し気をつける必要があります。先ほども説明したように、未熟児はサイトメガロウイルスの抗体を母親から十分に受け取ることができていないケースが多くあります。母親が妊娠時に初めてサイトメガロウイルスに感染した・それ以前に感染していたに関わらず、母乳には一定数のサイトメガロウイルスが含まれています。サイトメガロウイルスの抗体が少ない未熟児が母乳を飲むことで、サイトメガロウイルスによる何かしらの症状が現れる可能性もあります。
ですが、母乳には生まれたばかりの赤ちゃんにとって重要な栄養素や病気に対する抗体が多く含まれています。このような栄養素や抗体は、未熟児で生まれたからこそ、健康に育つために必要なものでもあります。ですので、生まれてきた赤ちゃんが未熟児であった場合、産婦人科や小児科の先生と相談し、母乳をどのように与えていくか考える必要があります。
このため、サイトメガロウイルスに感染し、それにより症状が現れている人が近くにいるからといって過剰に避けたり隔離したりする必要はありません。
サイトメガロウイルスの診断方法って?治療費用や保険は?
診断方法
抗体検査は主に産婦人科で受けることができます。先ほどもご説明したように、妊娠した方にサイトメガロウイルスの抗体がないと、生まれてくる赤ちゃんが先天性サイトメガロウイルス感染症になることがあります。ですが、サイトメガロウイルスの抗体検査は妊婦健診には含まれてない産婦人科が大多数です。そのため、もし検査をしたい場合は自分から産婦人科医に申し出て検査を受ける必要があります。
また、中には結婚前に治療が必要な病気があるかチェックする、ブライダルチェックの項目に含まれていることもあります。
治療法はあるの?
サイトメガロウイルスによる感染症が認められた場合、薬物治療という方法が取られます。しかし、使われる薬は副作用が強いもの、効きが強いものが多く、小さな子どもに服用させるには危険なことがあります。
子どもに先ほど挙げたような症状が見られた場合、まずは産婦人科や小児科へ相談しましょう。そこでサイトメガロウイルスによる影響である、と認められた場合、どのような治療法を選択し、実際に行っていくか納得したうえで治療を進めていきましょう。
費用・保険
サイトメガロウイルスの感染を予防するには?
・乳幼児の唾液、排泄物を触った時は必ず石鹸を使って手を洗う
・食べ物や飲み物は子どもとは別にする
・同じ箸やスプーン、フォークをなるべく使わないようにする
・子どものよだれやおしっこがついてしまったオモチャや家具などは石鹸やアルコール消毒薬などを使ってきれいに拭き取る
・敷物や布団類は天日で十分に乾燥させる
・抗体検査を受ける(妊娠する前が理想的)
・妊娠中の性行為の際には、コンドームを使う
特に、妊娠中ですでに小さい子どもがいるママは、子育てをしながら妊娠期間を過ごすことになります。子どもの体液に触れないようにするということは無理に近いことですよね。ですが、サイトメガロウイルスの感染経路や予防策を知っているだけで、先天性サイトメガロウイルス感染症などのリスクを減らすことができます。子どもやパートナーと過ごすうえで日々気をつけていきたいですね。
まとめ
近年サイトメガロウイルスの抗体を持っている人が減少傾向にあります。なので、妊娠している方や妊娠を考えている方は、一度自分がサイトメガロウイルスの抗体を持っているのかどうか検査してみるとともに、感染予防の方法を知ることが大切です。
お腹の中の赤ちゃんへの先天的な感染を防ぐためにも、まずはサイトメガロウイルスについて知っていくことからはじめましょう。正しい感染経路、症状、予防方法についての理解を深め、安心したマタニティライフを送りたいですね。

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発達障害のキホン さんが書いた記事

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