解離性同一性障害(解離性同一症)とは?特徴・治療法・相談先を解説【精神科医監修】
ライター:発達障害のキホン
解離性障害(解離症)とは、解離症状によって社会生活や対人関係に支障をきたす精神疾患です。解離性障害(解離症)の一つである解離性同一性障害(解離性同一症)は、一人の人に2つ以上の人格が生じている状態をいいます。かつては多重人格障害と呼ばれていました。この記事では、主に解離性同一性障害(解離性同一症)について、具体的な症状や治療法・相談先を解説します。
監修: 染村宏法
精神科医
産業医
大手企業の専属産業医として勤務後、昭和大学精神医学講座へ入局、昭和大学附属烏山病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動に従事。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、簡易型認知行動療法、睡眠衛生等に関する介入研究や教育に携わった。
産業医
解離性障害(解離症)とは
解離性障害(解離症)とは、強いストレスのあとに生じることが多い、解離症状によって社会生活や対人関係に支障をきたすほどの状態が特徴の精神疾患です。
アメリカ精神医学会が作成する『DSM(精神疾患の診断と統計マニュアル)』では、「解離症群」には、離人感・現実感消失症、解離性健忘、解離性同一症が含まれます。
アメリカ精神医学会が作成する『DSM(精神疾患の診断と統計マニュアル)』では、「解離症群」には、離人感・現実感消失症、解離性健忘、解離性同一症が含まれます。
「解離」とは?
そもそも「解離」とは、どのような状態なのでしょうか。「解離」とは、自分の意識や記憶、感覚、考え、感情、行動などが分断されて体験される現象のことです。
実は、この「解離」現象は誰もが経験しうるものでもあります。
例えば、授業中に空想にふけっていて授業の内容が耳に入らないことや、いつも通りお風呂に入っていたら自分が身体を洗ったかどうか思い出せないことなども解離現象の一つです。これらは日常生活に支障をきたすほどのものではない、正常な解離と考えられます。
一方で、解離性障害(解離症)は、解離を主とする症状のために、日常や社会生活に支障をきたす状態です。一定期間の記憶が完全になかったり、自分が自分でないように思えたり、自分が世界から切り離されたように感じたりすることがあります。
この記事では、解離性障害(解離症)の一つである「解離性同一性障害(解離性同一症)」について詳しく解説します。
実は、この「解離」現象は誰もが経験しうるものでもあります。
例えば、授業中に空想にふけっていて授業の内容が耳に入らないことや、いつも通りお風呂に入っていたら自分が身体を洗ったかどうか思い出せないことなども解離現象の一つです。これらは日常生活に支障をきたすほどのものではない、正常な解離と考えられます。
一方で、解離性障害(解離症)は、解離を主とする症状のために、日常や社会生活に支障をきたす状態です。一定期間の記憶が完全になかったり、自分が自分でないように思えたり、自分が世界から切り離されたように感じたりすることがあります。
この記事では、解離性障害(解離症)の一つである「解離性同一性障害(解離性同一症)」について詳しく解説します。
解離性同一性障害(解離性同一症)の種類・特徴は?
解離性同一性障害(解離性同一症)は、かつては多重人格障害と呼ばれていた精神疾患で、一人の人に2つ以上のパーソナリティ(人格)が生じている状態です。
その人の生活において、自分の感覚や考えが一つの人格として連続したものではなく、複数の思考の流れや記憶・意識を体験することがあります。これらの状態や症状は、周囲の人によって知らされる場合もあれば、本人から報告される場合もあります。
また、日々の出来事や過去のトラウマ、また個人情報など、通常であれば忘れないような記憶を思い出せないことがあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)には、「憑依型」「非憑依型」の2種類があります。
憑依型では、別の人格がその人のことを支配するように表れます。話し方や振る舞いが普段とは明らかに変わり別人のようになるため、周りの人も気づきやすいと考えられます。
非憑依型では、本人にとって突然自分の感覚が変わったように感じることがあります。自分の気持ちや行動、誰かとの会話についても、外から観察しているような感覚になります。
解離性同一性障害(解離性同一症)は、人格が変わったあと、しばらくすると元に戻ることなどもあり、周囲から「自作自演ではないか」「思い込みなのでは?」と誤解される場合もあります。
その人の生活において、自分の感覚や考えが一つの人格として連続したものではなく、複数の思考の流れや記憶・意識を体験することがあります。これらの状態や症状は、周囲の人によって知らされる場合もあれば、本人から報告される場合もあります。
また、日々の出来事や過去のトラウマ、また個人情報など、通常であれば忘れないような記憶を思い出せないことがあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)には、「憑依型」「非憑依型」の2種類があります。
憑依型では、別の人格がその人のことを支配するように表れます。話し方や振る舞いが普段とは明らかに変わり別人のようになるため、周りの人も気づきやすいと考えられます。
非憑依型では、本人にとって突然自分の感覚が変わったように感じることがあります。自分の気持ちや行動、誰かとの会話についても、外から観察しているような感覚になります。
解離性同一性障害(解離性同一症)は、人格が変わったあと、しばらくすると元に戻ることなどもあり、周囲から「自作自演ではないか」「思い込みなのでは?」と誤解される場合もあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)の症状は?
解離性同一性障害(解離性同一症)の主な症状として、健忘や複数の人格の出現などが挙げられます。
健忘には、過去の自分に関する出来事を思い出せない、できるはずのことを一時的に忘れてできなくなる、などがあります。一定期間の記憶がないことに本人が気付いている場合もあります。また、自分のメモを発見するなど「自分がやった」という証拠を発見しつつも、自分が行ったことを覚えていないこともあります。
複数の人格の出現では、自分の体が自分のものでないように感じることや、だれか別の人に変わったように感じることがあります。複数の人格が交代したり、生活を分け合ったりしている場合もあります。人格が交代したときに、別の人格の言動を認識していない場合には、本人や周囲の生活に支障をきたすこともあるでしょう。
そのほかにも、頭痛などの身体症状、気分の落ち込み、自分を傷つける行為が生じることがあります。別の人格の声が聞こえたり、幻覚を経験したりすることもあり、統合失調症などと誤診されることもあります。
健忘には、過去の自分に関する出来事を思い出せない、できるはずのことを一時的に忘れてできなくなる、などがあります。一定期間の記憶がないことに本人が気付いている場合もあります。また、自分のメモを発見するなど「自分がやった」という証拠を発見しつつも、自分が行ったことを覚えていないこともあります。
複数の人格の出現では、自分の体が自分のものでないように感じることや、だれか別の人に変わったように感じることがあります。複数の人格が交代したり、生活を分け合ったりしている場合もあります。人格が交代したときに、別の人格の言動を認識していない場合には、本人や周囲の生活に支障をきたすこともあるでしょう。
そのほかにも、頭痛などの身体症状、気分の落ち込み、自分を傷つける行為が生じることがあります。別の人格の声が聞こえたり、幻覚を経験したりすることもあり、統合失調症などと誤診されることもあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)の診断と治療
解離性同一性障害(解離性同一症)の診断
インターネット上には解離性同一性障害(解離性同一症)の無料チェックや診断テストなどがありますが、正式な診断は医師のみが行うものです。正しい治療を受けるためにも、気になる症状があるときは、精神保健福祉センターへの相談や医療機関の受診などを行うようにしましょう。相談先について、詳しくは後述します。
解離性同一性障害(解離性同一症)の診断は、その人の病歴と症状に基づいて行われます。
例えば、複数の人格がある、自分で自分の行動をコントロールできているという感覚を持てていない、通常であれば忘れるはずのない情報についての記憶がないなどの症状があり、社会的な生活に支障があるかどうかなどを確認していきます。
また、それらの症状はアルコールなどの物質や、ほかの医学的疾患によるものではないことも確認されます。
解離性同一性障害(解離性同一症)の診断は、その人の病歴と症状に基づいて行われます。
例えば、複数の人格がある、自分で自分の行動をコントロールできているという感覚を持てていない、通常であれば忘れるはずのない情報についての記憶がないなどの症状があり、社会的な生活に支障があるかどうかなどを確認していきます。
また、それらの症状はアルコールなどの物質や、ほかの医学的疾患によるものではないことも確認されます。
解離性同一性障害(解離性同一症)の一般的な治療
解離性障害(解離性同一症)の治療は、主に精神療法が行われます。その際に大切なことは、患者の安全を確保し、主治医との信頼関係を構築することです。
治療に対して、患者の複数の人格で別の考えがあることもあります。そのときの人格の考え方によって、治療に積極的だったりそうでなかったりすることもあるでしょう。警戒や抵抗感を抱えながら受診することもあるため、患者の不安を和らげることも大切です。
精神療法の要素としては、強い感情を安定させることや、過去のトラウマ体験への対処などが挙げられます。精神療法は長期間にわたることもあり、また治療の過程で精神的な苦痛が生じることもあり、患者の状態によっては、入院加療が行われるケースもあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)に有効とされる薬物療法はまだ分かっていません。薬物療法は、直接的に解離性同一性障害(解離性同一症)へアプローチするというよりは、不安や抑うつなどの併存症状を改善するために使用されることがあります。
また、子どもの精神療法の一つに遊戯療法(プレイセラピー)と呼ばれるものがあります。遊戯療法(プレイセラピー)では、遊びを通じて、子どもが自分の気持ちや考えを表現したり、セラピストが子どもの心を理解したりしていきます。
治療に対して、患者の複数の人格で別の考えがあることもあります。そのときの人格の考え方によって、治療に積極的だったりそうでなかったりすることもあるでしょう。警戒や抵抗感を抱えながら受診することもあるため、患者の不安を和らげることも大切です。
精神療法の要素としては、強い感情を安定させることや、過去のトラウマ体験への対処などが挙げられます。精神療法は長期間にわたることもあり、また治療の過程で精神的な苦痛が生じることもあり、患者の状態によっては、入院加療が行われるケースもあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)に有効とされる薬物療法はまだ分かっていません。薬物療法は、直接的に解離性同一性障害(解離性同一症)へアプローチするというよりは、不安や抑うつなどの併存症状を改善するために使用されることがあります。
また、子どもの精神療法の一つに遊戯療法(プレイセラピー)と呼ばれるものがあります。遊戯療法(プレイセラピー)では、遊びを通じて、子どもが自分の気持ちや考えを表現したり、セラピストが子どもの心を理解したりしていきます。
解離性同一性障害(解離性同一症)って治るもの?
子どもの解離性障害(解離症)は、家庭環境に大きな問題がない場合には、短期間で治ることが多いとの報告もあります。
また解離性同一性障害(解離性同一症)は、穏やかな生活を送っていくことで、症状が良くなっていくことが多いと言われています。
特に「解離」の症状は、大人よりも子どもに起きやすいとも言われており、大人になるにつれて徐々に生じにくくなると考えられます。ストレスの少ない平穏な生活を送るなかで、症状が軽くなっていくこともあります。
また解離性同一性障害(解離性同一症)は、穏やかな生活を送っていくことで、症状が良くなっていくことが多いと言われています。
特に「解離」の症状は、大人よりも子どもに起きやすいとも言われており、大人になるにつれて徐々に生じにくくなると考えられます。ストレスの少ない平穏な生活を送るなかで、症状が軽くなっていくこともあります。
解離性同一性障害(解離性同一症)の原因
解離性同一性障害(解離性同一症)の原因は、はっきりとは分かっていませんが、幼少期のトラウマ体験や、生まれ持った遺伝的要因、また現在受けているストレスなども少なからず影響していると考えられています。
特に、5〜6歳以前に受けた虐待行為(ネグレクト、身体的・性的・情動的虐待)は、解離性同一性障害(解離性同一症)の原因の一つではないかと言われています。
解離症状は、大きな苦痛によって精神が壊れてしまうことを防ぐために、感覚や記憶を自分から分断することを無意識に行っていると考えられています。解離性同一性障害(解離性同一症)は、この解離症状が継続して生じることによるものではないかと考えられています。
また、大人になった現在もストレスやトラウマ体験を受けている場合には、少なからず症状の経過に影響すると考えられます。例えばDVや虐待を受けていた家族との複雑な関係があるなど、大きなストレスを抱えている場合、症状の見通しが良くないとも言われています。
特に、5〜6歳以前に受けた虐待行為(ネグレクト、身体的・性的・情動的虐待)は、解離性同一性障害(解離性同一症)の原因の一つではないかと言われています。
解離症状は、大きな苦痛によって精神が壊れてしまうことを防ぐために、感覚や記憶を自分から分断することを無意識に行っていると考えられています。解離性同一性障害(解離性同一症)は、この解離症状が継続して生じることによるものではないかと考えられています。
また、大人になった現在もストレスやトラウマ体験を受けている場合には、少なからず症状の経過に影響すると考えられます。例えばDVや虐待を受けていた家族との複雑な関係があるなど、大きなストレスを抱えている場合、症状の見通しが良くないとも言われています。