解離性健忘とは?記憶を失うの?症状や原因、治療法【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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解離性健忘は、解離性障害のひとつで過去のできごとや感情などを思い出せなくなる精神障害です。強いストレスとなるできごとが原因で生じ、日常生活に支障が出ることもあると言われています。この記事では、解離性健忘の症状や他の健忘との違い、治療などを詳しくご紹介します。

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監修: 矢花芙美子
花クリニック 院長
東京都の渋谷区代々木で長年開業している(0歳から年齢制限なし)。 プレイセラピー、行動療法、対話精神療法などにより、発達の課題を持つ子ども、心理的な面での困難さを持つ子ども、養育に困難を持つ大人、社会生活に困難を持つ大人、生きにくさを持つ方々に対する治療や相談を行っている。
目次

解離性健忘とは?

解離健忘は、通常のもの忘れなどでは一般的に失われない重要な個人情報を思い出せなくなる症状のことを言います。アルコールや薬物、精神疾患などが原因ではなく、心的外傷や強いストレスの影響を受けていることが多くあります。

解離性健忘には症状によって「限局性健忘」「選択性健忘」「全般性健忘」などに分類されることがあります。

解離性健忘は「解離性障害」という大きなカテゴリの中のひとつに位置付けられています。
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解離性同一性障害(解離性同一症)とは?特徴・治療法・相談先を解説【精神科医監修】

解離性健忘の症状

◆健忘の起こる期間
解離性健忘では、「自分は誰か」「どこへ行ったか」「何をしたか」「そのときどう感じたか」など、自分が関わったできごとについての情報を思い出せなくなってしまいます。

解離性健忘のために思い出せなくなっている期間は、人によってさまざまです。

数分から数時間のことを忘れてしまうこともあれば、数日間から数年間にわたることを忘れてしまう場合もあり、なかにはこれまでに経験したことをすべて忘れてしまう例も報告されています。

解離性健忘がある場合、日常生活を送っているさなかにも、その時々の自分の行動や発言について忘れてしまうことがあります。

【例】
・メールの送信履歴を確認してみると、見覚えのないメールを送っていた
・クローゼットの中に、買った覚えのない服が入っていた

日常生活でこのような身に覚えのないことが続くと、不安に感じてしまい、抑うつ症状を示す人も多いようです。一方で、解離性健忘に自覚のない人も少なくありません。これは、体験したできごと自体を忘れているために、忘れていることに気づかないためです。

◆解離性健忘の種類
◇限局性健忘・・・特定の期間に起こったできごとを思い出せない症状です。通常、心的外傷またはストレスがこれらの記憶を想起できないことと関係しています。解離性健忘のなかで、もっとも一般的であると考えられています。

◇選択的健忘・・・特定の期間に行ったできごとの一部が思い出せるだけで、他の部分は覚えていない症状です。戦争に赴いた兵士が、連日の激しい戦闘の一部分しか思い出せずそれ以外のできごとを思い出せないといった例が挙げられます。

◇全般性健忘・・・自分が今まで体験してきたことすべてを忘れてしまう症状です。自分が誰であるのかさえも忘れてしまう場合もあります。

◇系統的健忘・・・特定の人物やできごとの記憶だけを忘れてしまう症状です。例えば学校でのできごとは思い出せるが、同じ期間の家庭でのできごとは断片的にしか思い出せないなどが挙げられます。

◇持続性健忘・・・発症した後は新しいできごとが起こるたびに、そのできごとを忘れてしまう症状です。

◆記憶が戻ることやフラッシュバックが起きることも
解離性のフラッシュバックと呼ばれる症状が起こることもあります。フラッシュバックとは、嫌な怖い体験をした時の雰囲気に似た、映像や音、においなどにより誘発され、過去に心の傷を負ったできごとを再体験してしまうことです。

突然、止まっている画像で思い出すことが一般的であるものの、動画であったり、声を伴ったりする場合もあります。

フラッシュバックは、本人にとってとても恐ろしい体験です。過去に引き戻されたように感じる、もしくは同じできごとが目の前でまた繰り返されているように感じてしまうことようです。
◆解離性とん走も解離性健忘の症状のひとつ
解離性とん走とは、家庭や職場から突然いなくって、どこか別の場所へ行ってしまう症状のことです。米国精神医学会の作成した診断基準である「DSM-5」においては解離性健忘のひとつに位置付けられています。

解離性とん走の場合は、いなくなってしまっている間、「自分は誰であるのか」「どんな人生を送ってきたのか」などの記憶を失ってしまっています。
とん走の持続時間は幅があり、数時間で戻る場合もあれば数か月にわたって続く場合も、さらにそれ以上の期間となる場合もあり、別の人として生きている人もいます。

これまでの記憶を失ってはいるものの、交通機関を使って移動するなど日常的な動作はできることが多いようです。また、他の人から見ても特に変わっている様子はないか、少し混乱している程度に見えて周囲の注目を引くような目立った症状や言動はあまりないと言われています。

解離性健忘の原因

大きなストレスや心の傷となるできごとがきっかけ

解離性健忘は、極度のストレスや心の傷などといった、精神的な原因がきっかけとなって生じます。

解離性健忘の原因となるものには、以下のような体験が含まれます。

・事件・事故・災害などの外傷的な体験
・虐待やDV、家族関係の不和などの家庭内でのストレス
・借金や貧困などのような経済的困窮
・学校でのいじめや失恋、離婚などの対人的ストレス
・その他の大きなストレスとなる出来事

解離性健忘は発症以前や以後に起きた経験は思い出すことができるものの、特定の出来事だけは思い出せなくなります。そのため解離性健忘によってつらい体験を忘れることができると言い換えることもでき、解離性健忘は本人の心を守ってくれる側面もあると考えられています。

解離性健忘の治療法

解離性健忘の治療には、医師や臨床心理士などによる精神療法が有効だと考えられています。

精神療法の目的は、思い出せないことを思い出すことではなく、本人がトラウマや葛藤の原因を認識し、今後の生活のために解決する方法を見つけていくことです。

その理由としては、思い出せないできごとの多くは、当事者にとっての大きなストレスの原因であるため、思い出したからといってそのストレスや問題が解消するわけではないからです。

もちろん、患者さんと治療する側との安心、かつ信頼できる関係性の中で、健忘の原因への理解が進み、思い出せるようになることもあります。ただ、思い出した記憶が正確でない場合もあるので、あらかじめその可能性も含めて説明して治療を行っていきます。
次ページ「そのほかの健忘との違いは? 」

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