お友達のお弁当が床にガッシャーン!無関係の息子まで涙したそのワケとは

ライター:林真紀
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発達障害児の特徴について説明されるときに、「人の気持ちを想像するのが苦手」ということをよく言われませんか?でも、そう決めつけてしまうのは早計です。息子のように、「人の気持ちを想像し過ぎてしまってパニックになる」子どももいるのです。

「人の気持ちを想像することが苦手」ってよく言われるけど、うちの場合…

「発達障害のある子どもは、人の気持ちを想像することが苦手です」

発達障害について本や講演会で語られる内容で、こんなことを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

確かに、自閉症スペクトラム障害とADHDの診断を受けている小学校1年生の息子も、人の気持ちを汲むことが苦手です。

たとえば、必要以上に友達にベタベタしたり、何度も同じことをしつこく言ってしまったりして、友達に嫌な思いをさせていたとしても、相手の気持ちに気づくことができません。

私がそのことを説明しても、腑に落ちない様子。これでは、知らず知らずのうちに友達の琴線に触れ、トラブルになってしまうこともあるかもしれません。

けれども、私は、息子の本当の辛さは「人の気持ちを想像することが苦手」なことではなく、むしろ「人の気持ちに共感し過ぎてしまう」ところにあるのではないかと思っているのです。そんな息子の辛さが感じられるエピソードを紹介したいと思います。

自分は関係ないのに泣いている!?「友達のお母さんのお弁当」事件

息子が放課後等デイサービスに出かけたときのことです。その日は学校がお休みの日だったので、息子にお弁当を持たることに。偏食のある息子にとって、私が作る苦手なものが入っていないお弁当は、特別嬉しいようでした。

その日も私は息子の大好きな物だけをてんこ盛りに詰めたお弁当を持たせました。なので「美味しかったよ~!」と息子がニコニコしながら帰宅する姿を想像していたのですが…なぜか帰宅した息子は青ざめてパニックになっていました。目には涙がたまっています。

「どうしたの?」と私が聞くと、息子は耐えかねたように言ったのです。

「お友達のひとりが、自分のお弁当を、床に投げちゃったんだよ。その子のお母さんが一生懸命作ったお弁当なのに…。」

それを聞いて私は「あらら」と思いましたが、それでなぜ息子が真っ青になって泣いているのか意味が分かりませんでした。その子が投げつけたお弁当の中身が自分に当たったりしたのかな?と思いましたが、そういうわけでもなさそうなのです。息子は続けました。

「僕のお母さんは朝の5時30分に起きて、僕のお弁当を一生懸命作ってくれてた。前日にお弁当の材料を一緒に買いに行ってくれて、僕の好きなものを一緒にお話ししながら買ってくれた。そのお弁当を床に投げたなんてお母さんが知ったら、どんなに悲しむと思う?お迎えのときにその子のお母さんを見たら、かわいそうで涙が出てきちゃった。」

どうやら息子は、友達のお母さんに私の姿を重ね、「お友達のお母さんがかわいそう」と言って泣いているようなのです。自分が何かの被害を受けたわけでもなければ、そのときに何かを言われたわけでもありません。それでも、床に散らばったお弁当の様子がどうしても頭から離れない様子。

私は「おいおい」という感じでした。だって、お友達が投げたお弁当は、私が作ったお弁当ではないのです。

「人の気持ちを想像することが苦手」と言われる、発達障害の息子がなぜ、他人の気持ちに過剰なまでに寄り添い、涙まで流してしまうのでしょうか。

過度の共感が生きづらさにつながる

息子はたびたびこういうことがあります。自分とは全く関係のない人のことでも、過度に共感してしまい、パニックになってしまうのです。

「発達障害児は人の気持ちを想像するのが苦手」

確かにそういう一面もあるかもしれません。けれども、常にそうであると決めつけてはいけないなと思います。少なくとも息子の場合は、人に共感し過ぎて辛いのです。過度の共感するあまり、他者と自分との境界線が曖昧になり、必要以上の精神を消耗してしまうのです。

息子はよく「優しい」と言われます。それは、相手の辛さを自分も抱え込むような共感の仕方をするからです。その息子の態度に癒されている人たちがたくさんいるのも、私は知っています。それは息子の「いいところ」なのかもしれない、でも同時に、息子の生きづらさでもあるのです。

「人の気持ちを想像するのが苦手」だと決めつけていたら見えない、他人に共感し過ぎる生きづらさ。発達障害の子どもは、人に無関心なのではなく、関心があり過ぎるから辛いのかもしれないと、考えを改めることになりました。

今まで、「なんでそんなことになるの!?」と思っていた、理解しがたい子どもの行動や言動も、もしかしたらこうしたことが原因なのかもししれません。よく聞く定説だからといって決めつけてかからず、子ども一人ひとりの声に向き合ってあげることで、子どもの抱える困難をさらに理解することができるようになるかもしれませんね。
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