ダウン症のある人の、年代別健康管理のポイントは?

ダウン症はさまざまな合併症を伴う可能性がありますが、逆に100%の確率で合併する特定の病気というものもなく、そのため健康管理に関しても決まったパターンはありません。一人ひとりに応じた、適切な健康管理を行うことが大切です。

健康管理には、合併症の発見、治療はもちろんのこと、発症するリスクの高い疾患の予防が大切です。

・乳児期・幼児期の健康管理
乳児期までは先天性合併症の発見と発育の細やかな観察、フォロー体制の確立が大切になります。

新生児期から1歳までは1ヶ月ごと、1歳から3歳は3ヶ月ごと、3歳から6歳は6ヶ月ごとの受診がすすめられることが多いようです。ダウン症のある人の成長曲線に則して、発達や日常生活(身辺自立)の経過のチェックが行われます。

・学童期の健康管理
学童期は健康の維持と合併症の予防が大切です。就学以降は1年ごとの受診がすすめられています。偏食や肥満のチェックなども行われます。

・思春期の健康管理
第二次性徴を迎える思春期には、ホルモンのバランスが一時的に崩れることがあるため、心身共に不安定になりやすい時期です。年に一度の受診のほか、体調や精神的な変化について心配なことがあったら、医師に相談してください。

・成人期の健康管理
成人期には健康を維持するための生活習慣の指導、そして、成人期に発症するリスクの高い合併症の予防、早期発見・治療が重要です。

ダウン症のある人の、成人期の生活で重要なポイントは?

寿命が延びたことにより、長い成人期を視野に入れた生涯を通じての発達や生活、生き方を考えることが必要になってきました。ダウン症のある人の「生涯発達」を考えた支援が重要だと考えられています。

学校教育を終え成人したダウン症のある人は、地域の作業所や企業などで働いたり、さまざまな日中の活動を楽しむ施設に通所、入所して過ごしています。またダンス、音楽、スポーツ、書道、絵画などの分野で活躍する人もいます。また、生活の基盤も家庭だけでなく、グループホームなどで家族と離れて暮らす人もいます。

また、成人期には、さまざまな疾患のほかに「肥満」の解消など、生活習慣に関わる問題も健康管理上重要です。しかし、大人になったダウン症のある人について知識を持った内科医はまだまだ少ないようです。

つまり成人期の生活で大切なことは、地域社会の中で仕事や余暇などを楽しみながらいきいきと暮らすことと、適切な健康管理です。現在、生活の幅は広がり、地域生活でのサポート体制も整いつつあります。しかし、健康管理の面ではまだまだ課題があるようです。

ダウン症のある30代以降の人にあらわれやすい、認知機能の低下とは?

平均寿命が長くなってきたことに伴い、近年、多くのダウン症のある人たちが地域の中で元気に暮らしています。しかし、大人のダウン症のある人に関する新たなトピックが注目されるようになってきました。

30代以降、アルツハイマー病と同じ機序によって日常生活の能力や運動能力が低下していると考えられる人がいるのではないか、とする報告がみられるようになってきたのです。ダウン症のある人は、「アミロイド前駆体タンパク遺伝子」という遺伝子が通常よりも多く存在し、その結果、脳の中のアミロイドタンパクが増加してアルツハイマー病と同じような変化を脳内に生じさせるのではないかと考えられているようです。
参考:ダウン症患者における早期アルツハイマー病発症メカニズムの解明(著者:浅井 将、 川久保 昂、 森 亮太郎、 岩田 修永)
https://doi.org/10.1248/yakushi.16-00236-2
現在、ダウン症のある人の認知機能の低下に効果がある治療薬はまだなく、定まった見解もありません。

また、ダウン症のある人の思春期から若年成人期に生じる可能性のある急激な退行様症状(生活機能の低下)と成人期以降の変化についても同じものであるかどうか、研究者のあいだでもさまざまな見解があります。ダウン症のない人とダウン症のある人の機能低下の症状が同じかどうか、認知機能低下の原因は何か、あるいは寿命に関係があるのかなどについて論じるための累計的なデータはまだ乏しく、分からないことが多いのが現状です。

今後、上記の臨床試験の結果がまとめられ、別の角度からの研究がすすみ、すべてのダウン症のある人たちが安心して成人期を迎えられる日がくることを願っています。
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