ダウン症のある人の寿命が延びている理由は?現在の平均寿命、成人後や壮年期の生活などについて解説します【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
ダウン症のある人は、寿命が短く、高齢期を迎えられないと考えられてきました。しかし現在、寿命が延びていると言われています。
合併症の早期治療など寿命が延びた理由や、健康管理のポイント、成人期以降、地域でどのように暮らしているのかなどについてまとめました。
監修: 玉井浩
大阪医科薬科大学 小児高次脳機能研究所 LDセンター顧問
大阪医科薬科大学 小児科名誉教授
小児神経学をベースに、小児期から成人期に至るまで医療・教育・福祉にわたる総合的な診療と支援を実践している。また、日本ダウン症協会の代表理事として、家族支援、公益事業や国際連携も行っている。
大阪医科薬科大学 小児科名誉教授
ダウン症のある人の、現在の平均寿命は?
2013年のアメリカでの発表によるとダウン症のある人の平均寿命は、今から1960年代ごろまでには10歳前後といわれていましたが、現在は大幅に延び、約60歳に達しています。
ダウン症のある人の寿命は、短いと考えられていた
ダウン症のある人の寿命に関して、1975年に発行された書籍には「ダウン症候群の赤ちゃんのうち約20~40%は生後数ヶ月、ないし数年以上いきながらえることはできない」と、記載されていました。
しかし正確には、ダウン症そのものが原因ではなく、1975年ごろの医療水準では、ダウン症の合併症である心疾患や感染症などによって、幼少時に重篤な状態に陥ることが多かったため、寿命も短いと考えられていたのでしょう。
しかし正確には、ダウン症そのものが原因ではなく、1975年ごろの医療水準では、ダウン症の合併症である心疾患や感染症などによって、幼少時に重篤な状態に陥ることが多かったため、寿命も短いと考えられていたのでしょう。
ダウン症とは?
通常、ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体によって構成されています。ダウン症は21番目の染色体が3本あるために起こる先天性の疾患です。
ダウン症は大きく分けて、標準型21トリソミー型、モザイク型、転座型の3種類に分かれます。
「標準型21トリソミー型」(ダウン症全体の約95%)…通常であれば22対(44本)あるはずの常染色体のうち、21番目の常染色体が1本多くなり、2本の性染色体と合わせて47本になることで起こるものです。これは受精時に偶然起こるもので、両親の染色体に変異はありません。
「モザイク型」(ダウン症全体の1~3%以下)…2つの異なる細胞で体が構成されています。21番トリソミーを持つ細胞と21番トリソミーを持たない細胞が一定の割合で混在しているというような状態です。モザイク型ダウン症も、両親の染色体に変異がなくても発生します。
「転座型」(ダウン症全体の約4~5%)…21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番など)にくっついたことによって起こります。21番染色体の一部は過剰になりますが、数としては46本の染色体になります。ダウン症全体の約4~5%といわれる転座型の発現率のうちの半分が親に転座染色体保因がある場合、つまり遺伝によって起こります。
ダウン症候群の「染色体異常」そのものを治す方法は現代の医療ではまだありませんが、先天的/後天的に伴う疾患など「合併症」に対する治療法は存在します。
ダウン症は大きく分けて、標準型21トリソミー型、モザイク型、転座型の3種類に分かれます。
「標準型21トリソミー型」(ダウン症全体の約95%)…通常であれば22対(44本)あるはずの常染色体のうち、21番目の常染色体が1本多くなり、2本の性染色体と合わせて47本になることで起こるものです。これは受精時に偶然起こるもので、両親の染色体に変異はありません。
「モザイク型」(ダウン症全体の1~3%以下)…2つの異なる細胞で体が構成されています。21番トリソミーを持つ細胞と21番トリソミーを持たない細胞が一定の割合で混在しているというような状態です。モザイク型ダウン症も、両親の染色体に変異がなくても発生します。
「転座型」(ダウン症全体の約4~5%)…21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番など)にくっついたことによって起こります。21番染色体の一部は過剰になりますが、数としては46本の染色体になります。ダウン症全体の約4~5%といわれる転座型の発現率のうちの半分が親に転座染色体保因がある場合、つまり遺伝によって起こります。
ダウン症候群の「染色体異常」そのものを治す方法は現代の医療ではまだありませんが、先天的/後天的に伴う疾患など「合併症」に対する治療法は存在します。
ダウン症の合併症治療とは?
ダウン症のある人の寿命が長くなった大きな要因には、近年、医学の発展によって合併症の発見と治療が、よりきめ細かく行われるようになったことがあげられます。
ダウン症のある赤ちゃんの50%に合併しているといわれる心疾患など循環器系の病気も、早期段階(胎児期〜乳幼児期)でスクリーニング可能になり、乳幼児のうちから手術や治療ができるようになりました。
小児の心臓病を専門に扱う施設も増え、早期の外科治療ができる可能性が高まると共に、手術の成功率も上昇しているようです。
このように、生命の維持に関わる重要な臓器である心臓の疾患が比較的早い時期から治療できるようになったことで、ダウン症のある人の身体的な健康が保たれやすくなりました。つまり、合併症への対応や治療成績の向上が、平均寿命の延長に貢献しているといえるでしょう。
ダウン症のある人は、さまざまな合併症がある可能性がありますが、適切な健康管理と発達支援、そして社会資源の活用などによって、着実な心身の成長と発達が期待できるようになってきました。
ダウン症のある赤ちゃんの50%に合併しているといわれる心疾患など循環器系の病気も、早期段階(胎児期〜乳幼児期)でスクリーニング可能になり、乳幼児のうちから手術や治療ができるようになりました。
小児の心臓病を専門に扱う施設も増え、早期の外科治療ができる可能性が高まると共に、手術の成功率も上昇しているようです。
このように、生命の維持に関わる重要な臓器である心臓の疾患が比較的早い時期から治療できるようになったことで、ダウン症のある人の身体的な健康が保たれやすくなりました。つまり、合併症への対応や治療成績の向上が、平均寿命の延長に貢献しているといえるでしょう。
ダウン症のある人は、さまざまな合併症がある可能性がありますが、適切な健康管理と発達支援、そして社会資源の活用などによって、着実な心身の成長と発達が期待できるようになってきました。
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ダウン症のある人の、合併症の疾患別健康管理のポイントは?
「長寿を保つためには、健康管理に気をつけなければならない」というのは誰しもあてはまることですが、なかでもダウン症のある人にとっては「合併症の治療と適切な健康管理」が生涯にわたって重要なキーワードになってきます。
■合併症管理とフォローの目安
健診により合併症が認められた場合、適切な管理が必要です。ダウン症のある人に起こりやすいといわれている合併症は以下の通りです(月齢等は目安)。
・先天性心疾患
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など、さまざまな心臓の疾患が合併している可能性があります。新生児期の診察で確認されると、直ちに治療、管理が開始される場合もありますが、経過観察するだけで良い場合もありますので、主治医とよく相談しましょう。
・消化器疾患
十二指腸閉鎖などの消化器官の機能の低下や、肛門がうまく作られず、ふさがった状態で生まれてくる鎖肛などの疾患がある場合があります。治療はすぐに開始され、ほとんどが日常生活を送るのに支障がない状態に管理されます。また、腹筋の弱さや、消化器機能の低下などにより、便秘になりやすいこともあります。特に乳幼児期には服薬などにより排便コントロールが必要な場合もあります。
・血液疾患、甲状腺など
一過性骨髄増殖症などによる白血球等の数値異常や甲状腺機能のほか、血液検査で確認できる疾患の早期発見、治療のために、6ヶ月時、1歳時、以降問題なければ1年ごとに血液検査を受けることが望ましいと考えられています。
・視力・眼疾患
乳幼児期から白内障などの眼疾患の確認のほか、屈折率の測定を行います。乳幼児でも屈折率を測定しやすい機器などのある小児専門の眼科もあります。就学までは1、3、5歳時の眼科受診が推奨されています。
・聴力・耳鼻科疾患
中耳炎、難聴、閉塞性無呼吸などに注意が必要です。新生児期にスクリーニングのための聴力検査を実施し、以降、状態によっては半年から1年ごとにフォローがあります。一般的な聴力検査で測定が難しい場合には、脳波測定による聴力検査を行うこともあります。
・歯科
歯の萌出が認められたら、主治医の勧める歯科などで定期的にフォローが必要です。離乳食の進め方、食べ方の指導などが受けられる歯科もあります。
・泌尿器
男児は、精巣の停留の有無の確認が必要です。また、尿を溜める能力や、排尿に関する機能の問題についても、気になることがあったら相談してみてください。
・整形
外反扁平足などがある場合、靴の中に足をサポートするための特別な中敷きを入れることがあります。
・頸椎不安定性
だいたい3歳時と6歳時(就学前)に頚椎のX線検査を行うよう推奨されています。
異常が認められれば整形外科でフォローが行われます。
■合併症管理とフォローの目安
健診により合併症が認められた場合、適切な管理が必要です。ダウン症のある人に起こりやすいといわれている合併症は以下の通りです(月齢等は目安)。
・先天性心疾患
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など、さまざまな心臓の疾患が合併している可能性があります。新生児期の診察で確認されると、直ちに治療、管理が開始される場合もありますが、経過観察するだけで良い場合もありますので、主治医とよく相談しましょう。
・消化器疾患
十二指腸閉鎖などの消化器官の機能の低下や、肛門がうまく作られず、ふさがった状態で生まれてくる鎖肛などの疾患がある場合があります。治療はすぐに開始され、ほとんどが日常生活を送るのに支障がない状態に管理されます。また、腹筋の弱さや、消化器機能の低下などにより、便秘になりやすいこともあります。特に乳幼児期には服薬などにより排便コントロールが必要な場合もあります。
・血液疾患、甲状腺など
一過性骨髄増殖症などによる白血球等の数値異常や甲状腺機能のほか、血液検査で確認できる疾患の早期発見、治療のために、6ヶ月時、1歳時、以降問題なければ1年ごとに血液検査を受けることが望ましいと考えられています。
・視力・眼疾患
乳幼児期から白内障などの眼疾患の確認のほか、屈折率の測定を行います。乳幼児でも屈折率を測定しやすい機器などのある小児専門の眼科もあります。就学までは1、3、5歳時の眼科受診が推奨されています。
・聴力・耳鼻科疾患
中耳炎、難聴、閉塞性無呼吸などに注意が必要です。新生児期にスクリーニングのための聴力検査を実施し、以降、状態によっては半年から1年ごとにフォローがあります。一般的な聴力検査で測定が難しい場合には、脳波測定による聴力検査を行うこともあります。
・歯科
歯の萌出が認められたら、主治医の勧める歯科などで定期的にフォローが必要です。離乳食の進め方、食べ方の指導などが受けられる歯科もあります。
・泌尿器
男児は、精巣の停留の有無の確認が必要です。また、尿を溜める能力や、排尿に関する機能の問題についても、気になることがあったら相談してみてください。
・整形
外反扁平足などがある場合、靴の中に足をサポートするための特別な中敷きを入れることがあります。
・頸椎不安定性
だいたい3歳時と6歳時(就学前)に頚椎のX線検査を行うよう推奨されています。
異常が認められれば整形外科でフォローが行われます。