ダウン症のある人の寿命が延びている理由は?現在の平均寿命、成人後や壮年期の生活などについて解説します

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ダウン症のある人は、寿命が短く、高齢期を迎えられないと考えられてきました。しかし現在、寿命が延びていると言われています。

合併症の早期治療など寿命が延びた理由や、健康管理のポイント、成人期以降、地域でどのように暮らしているのかなどについてまとめました。

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監修: ヨコハマプロジェクト
一般社団法人
目次 ダウン症とは?平均寿命は変化している? ダウン症のある人の、現在の平均寿命は? ダウン症の合併症治療とは? ダウン症のある人の、合併症の疾患別健康管理のポイントは? ダウン症のある人の、年代別健康管理のポイントは? ダウン症のある人の、成人期の生活で重要なポイントは? ダウン症のある30代以降の人にあらわれやすい、認知機能の低下とは? まとめ

ダウン症とは?平均寿命は変化している?

ダウン症とは?

ダウン症候群は、体の設計図にあたる遺伝子の「染色体」の数が、通常より1本多いことに由来して起こります。23組46本の染色体のうち、21番目の染色体が1本多くなり、全部で47本になります。

21番目の染色体が3本ある一般的なものを「標準型21トリソミー」と呼び、これがダウン症候群全体の95%を占めています。このほか、3本目の染色体が別の染色体にくっついている転座型、21番目の染色体が3本のものと2本のものが混じっているモザイク型というタイプもあります。

ダウン症候群の「染色体異常」そのものを治す方法は現代の医療ではまだありませんが、先天的/後天的に伴う疾患など「合併症」に対する治療法は存在します。
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ダウン症のある人の寿命は、短いと考えられていた

ダウン症のある人の寿命に関して、1975年に発行された書籍には「ダウン症候群の赤ちゃんのうち約20~40%は生後数ヶ月、ないし数年以上いきながらえることはできない」と、記載されていました。

これだけ読むと、ダウン症そのものが命にかかわる疾患だと誤解を生むかもしれません。ですが正確には、ダウン症そのものが原因ではなく、1975年頃の医療水準では、ダウン症の合併症である心疾患や感染症などによって、幼少時に重篤な状態に陥ることが多かったため、寿命も短いと考えられていたのでしょう。

ダウン症のある人の、現在の平均寿命は?

日本のダウン症のある人の平均寿命は、今から50年前には10歳前後といわれていましたが、現在は大幅に延び、約60歳に達しています。

アメリカ合衆国でも、1950年には26歳だった平均余命が、2010年には53歳になったという報告や、ダウン症のある人の100人のうち約12人が70歳まで生きられるとようになってきたという報告があるようです。ダウン症のある人の寿命が、ダウン症のない人たちに近づいてきたことを示しているといえるでしょう(アメリカ人の平均寿命は78歳)。

ダウン症の合併症治療とは?

ダウン症のある人の寿命が長くなった大きな要因には、近年、医学の発展によって合併症の発見と治療が、よりきめ細かく行われるようになったことがあげられます。

ダウン症のある赤ちゃんの50%に合併していると言われる心疾患など循環器系の病気も、早期段階(胎児期〜乳幼児期)でスクリーニング可能になり、乳幼児のうちから手術や治療ができるようになりました。

小児の心臓病を専門に扱う施設も増え、早期の外科治療ができる可能性が高まるとともに、手術の成功率も上昇しているようです。

このように、生命の維持に関わる重要な臓器である心臓の疾患が比較的早い時期から治療できるようになったことで、ダウン症のある人の身体的な健康が保たれやすくなりました。つまり、合併症への対応や治療成績の向上が、平均寿命の延長に貢献しているといえるでしょう。

ダウン症のある人は、さまざまな合併症を持つ可能性がありますが、適切な健康管理と発達支援、そして社会資源の活用などによって、着実な心身の成長と発達が期待できるようになってきました。
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ダウン症のある人の、合併症の疾患別健康管理のポイントは?

「長寿を保つためには、健康管理に気をつけなければならない」というのはダウン症があってもなくても同じですが、なかでもダウン症のある人にとっては「合併症の治療と適切な健康管理」が生涯にわたって重要なキーワードになってきます。

■合併症管理とフォローの目安
健診により合併症が認められた場合、適切な管理が必要です。ダウン症のある人に起こりやすいといわれている合併症は以下の通りです(月齢等は目安)。

・循環器疾患
心室中隔欠損、心房中隔欠損など、さまざまな心臓の疾患が合併している可能性があります。新生児期の診察で確認されると、直ちに治療、管理が開始されます。

・消化器系疾患
消化器官の機能の低下や、肛門がうまく作られずふさがった状態で生まれてくる鎖肛などの疾患がある場合があります。治療はすぐに開始され、ほとんどが日常生活を送るのに支障がない状態に管理されます。また、腹筋の弱さや、消化器機能の低下などにより、便秘がちになることがあります。特に乳幼児期には服薬などにより排便コントロールが必要な場合もあります。

・血液疾患、甲状腺等
白血球等の数値異常や甲状腺機能のほか、血液検査で確認できる疾患の早期発見、治療のために、6ヶ月時、1歳時、以降問題なければ1年ごとに血液検査を受けることが望ましいと考えられています。

・視力・眼疾患
乳幼児期から白内障等の眼疾患の確認のほか、視力の測定を行います。乳幼児でも視力を測定しやすい機器等のある小児専門の眼科もあります。1年ごとの眼科受診が推奨されています。

・聴力・耳鼻科疾患
新生児期にスクリーニングのための聴力検査を実施し、以降、状態によっては半年から1年ごとにフォローがあります。一般的な聴力検査で測定が難しい場合には、脳波測定による聴力検査を行うこともあります。また、風邪などの感染症により中耳炎を発症しやすいため、体調を崩した時には確認してもらうといいでしょう。

・歯科
歯の萌出が認められたら、主治医の勧める歯科などで定期的にフォローが必要です。離乳食の進め方、食べ方の指導などが受けられる歯科もあります。

・泌尿器
男児は、精巣の停留の有無の確認が必要です。また、尿を溜める能力や、排尿に関する機能の問題についても、気になることがあったら相談してみてください。

・整形
外反扁平足などがある場合、靴の中に足をサポートするための特別な中敷きを入れることがあります。

・頸椎不安定性 
だいたい3歳時と6歳時(就学前)に頚椎のX線検査を行うよう推奨されています。異常が認められれば整形外科でフォローが行われます。

ダウン症のある人の、年代別健康管理のポイントは?

ダウン症はさまざまな合併症を伴う可能性がありますが、逆に100%の確率で合併する特定の病気というものもなく、そのため健康管理に関しても決まったパターンはありません。ダウン症のある人一人ひとりに応じた、適切な健康管理を行うことが大切です。

健康管理には、合併症の発見、治療はもちろんのこと、発症するリスクの高い疾患の予防が大切です。

乳児期・幼児期の健康管理
乳児期までは先天性合併症の発見と発育の細やかな観察、フォロー体制の確立が大切になります。

新生児期から1歳までは1ヶ月ごと、1歳から3歳は3ヶ月ごと、3歳から6歳は6ヶ月ごとの受診がすすめられることが多いようです。ダウン症のある人の成長曲線に則して、発達や日常生活(身辺自立)の経過のチェックが行われます。

学童期の健康管理
学童期は健康の維持と合併症の予防が大切です。就学以降は1年ごとの受診がすすめられています。偏食や肥満のチェックなども行われます。

思春期の健康管理
第二次性徴を迎える思春期には、ホルモンのバランスが一時的に崩れることがあるため、心身ともに不安定になりやすい時期です。年に一度の受診のほか、体調や精神的な変化について心配なことがあったら、医師に相談してください。

成人期の健康管理
成人期には健康を維持するための生活習慣の指導、そして、成人期に発症するリスクの高い合併症の予防、早期発見・治療が重要です。

ダウン症のある人の、成人期の生活で重要なポイントは?

寿命が延びたことにより、長い成人期を視野に入れた生涯を通じての発達や生活、生き方を考えることが必要になってきました。ダウン症のある人の「生涯発達」を考えた支援が重要だと考えられています。

教育を終えた成人期以降のダウン症のある人は、地域の作業所や企業などで働いたり、さまざまな日中の活動を楽しむ施設に通所、入所して過ごしています。またダンス、音楽、スポーツ、書道、絵画などの分野で活躍する人もいます。また、生活の基盤も家庭だけでなく、グループホームなどで家族と離れて暮らす人もいます。

また、成人期には、さまざまな疾患のほかに「肥満」の解消など、生活習慣に関わる問題も健康管理上重要です。しかし、成人期のダウン症のある人について知識を持った内科医はまだまだ少ないようです。

つまり成人期の生活で大切なことは、地域社会の中で仕事や余暇などを楽しみながらいきいきと暮らすことと、適切な健康管理です。現在、生活の幅は広がり、地域生活でのサポート体制も整いつつあります。しかし、健康管理の面ではまだまだ課題があるようです。

ダウン症のある30代以降の人にあらわれやすい、認知機能の低下とは?

平均寿命が長くなってきたことに伴い、近年、多くのダウン症のある人たちが地域の中で元気に暮らしています。しかし、大人のダウン症のある人に関する新たなトピックが注目されるようになってきました。

30代以降、アルツハイマー病と同じ機序によって日常生活の能力や運動能力が低下していると考えられる人がいるのではないか、とする報告がみられるようになってきたのです。ダウン症のある人は、「アミロイド前駆体タンパク遺伝子」という遺伝子が通常よりも多く存在し、その結果、脳の中のアミロイドタンパクが増加してアルツハイマー病と同じような変化を脳内に生じさせるのではないかと考えられているようです。

現在、ヨーロッパの製薬会社などが開発した薬を使って、主に認知機能の低下に対する臨床試験が行われています。日本でも、アリセプト(ドネペジル塩酸塩)などを使用した治験が開始されました。

ダウン症のある人の思春期、成人期以降の変化については、研究者のあいだでも様々な見解があります。ダウン症のない人とダウン症のある人の機能低下の症状が同じかどうか、認知機能低下の原因は何か、あるいは寿命に関係があるのかなどについて論じるための累計的なデータはまだ乏しく、分からないことが多いのが現状です。

今後、上記の臨床試験の結果がまとめられ、別の角度からの研究がすすみ、すべてのダウン症のある人たちが安心して成人期を迎えられる日がくることを願っています。

まとめ

医学の進歩などにより、ダウン症のある人の平均寿命は長くなりました。適切な治療などを受けることで健康に成長し、地域社会の中でいきいきと生活できる時代へと確実に向かっています。

保護者や支援者によるサポートをはじめ、当事者が豊かに自律的に暮らしていける仕組みづくりも少しずつ始まり、生活の質(QOL)の向上についての取り組みも進んできています。また、就労して経済的に自立していたり、文化や芸術の分野で活躍するなど、地域の中でいきいきと暮らす、ロールモデルとなるようなダウン症のある人も増えてきています。

一方で、寿命が長くなったことにより、「親なきあと」の心配もクローズアップされています。記録ノートなどを活用して情報を整理し、支援につながる手立て準備する人も増えているようです。保護者も子どもも安心して成人期を迎え、充実した生活を送ることができるよう、少しずつ情報を集め、具体的な支援方法を準備していけるといいのかもしれません。
注:記事中、医学的な内容については正式な名称である「ダウン症候群」を、それ以外の内容では「ダウン症」という略名を使用しています。
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