ダウン症の治療法は?効果的な治療薬は存在するの?合併症の治療、療育、現在進んでいる研究までご紹介します【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
ダウン症の主な原因は偶然に起こる染色体異常です。ダウン症そのものの治療法は現在までのところありません。しかし、心臓疾患などの合併症は早期発見、早期治療に関する知見が広がり、乳児のうちから手術により治療することができるようになるなど近年進展がみられます。ダウン症のある人に起こりやすい疾患やその治療、また発達を促す療育、福祉サービスなどの情報についてまとめました。
監修: 玉井浩
大阪医科薬科大学 小児高次脳機能研究所 LDセンター顧問
大阪医科薬科大学 小児科名誉教授
小児神経学をベースに、小児期から成人期に至るまで医療・教育・福祉にわたる総合的な診療と支援を実践している。また、日本ダウン症協会の代表理事として、家族支援、公益事業や国際連携も行っている。
大阪医科薬科大学 小児科名誉教授
ダウン症とは?治療法はあるの?
ダウン症とは?ダウン症の3つのタイプ
通常、ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体によって構成されています。ダウン症はこの染色体の21番目が3本あるために起こる生まれつきの疾患です。
ダウン症は大きく分けて
・標準型21トリソミー型
・モザイク型
・転座型
の3種類に分かれます。
通常、ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体によって構成されています。
ダウン症の場合、約95%は「標準型21トリソミー型」と呼ばれるもので、これは通常であれば22対(44本)あるはずの常染色体のうち、21番目の常染色体が1本多くなり、2本の性染色体と合わせて47本になることで起こるものです。これは受精時に偶然起こるもので、両親の染色体に変異はありません。
また、ダウン症全体のうち1~3%以下が、「モザイク型」という種類にあてはまります。モザイク型の人は2つの異なる細胞で体が構成されています。21番トリソミーを持つ細胞と21番トリソミーを持たない細胞が一定の割合で混在しているというような状態です。モザイク型ダウン症も、両親の染色体に変異がなくても発生します。
さらに、「転座型」という21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番など)にくっついたことによって起こるダウン症もあります。21番染色体の一部は過剰になりますが、数としては46本の染色体になり、ダウン症全体のうち約4~5%ほどにあたります。そして、この約4~5%の発現率のうちの半分が親に転座染色体保因がある場合、つまり遺伝によって起こります。
ダウン症は大きく分けて
・標準型21トリソミー型
・モザイク型
・転座型
の3種類に分かれます。
通常、ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体によって構成されています。
ダウン症の場合、約95%は「標準型21トリソミー型」と呼ばれるもので、これは通常であれば22対(44本)あるはずの常染色体のうち、21番目の常染色体が1本多くなり、2本の性染色体と合わせて47本になることで起こるものです。これは受精時に偶然起こるもので、両親の染色体に変異はありません。
また、ダウン症全体のうち1~3%以下が、「モザイク型」という種類にあてはまります。モザイク型の人は2つの異なる細胞で体が構成されています。21番トリソミーを持つ細胞と21番トリソミーを持たない細胞が一定の割合で混在しているというような状態です。モザイク型ダウン症も、両親の染色体に変異がなくても発生します。
さらに、「転座型」という21番目の染色体の1本がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番など)にくっついたことによって起こるダウン症もあります。21番染色体の一部は過剰になりますが、数としては46本の染色体になり、ダウン症全体のうち約4~5%ほどにあたります。そして、この約4~5%の発現率のうちの半分が親に転座染色体保因がある場合、つまり遺伝によって起こります。
ダウン症の治療法はあるの?
上記のようにダウン症が引き起こされる原因やタイプはある程度分かっていますが、ダウン症そのものを治療する方法は、現在のところまだ存在しません。
一方、ダウン症のある人に合併しやすい疾患(心臓や消化器の内臓疾患など)の症状を軽減したり治療したりする方法については確立されているものが多く、比較的早期の乳幼児期から、治療が開始できるようになってきています。
一方、ダウン症のある人に合併しやすい疾患(心臓や消化器の内臓疾患など)の症状を軽減したり治療したりする方法については確立されているものが多く、比較的早期の乳幼児期から、治療が開始できるようになってきています。
ダウン症の確定診断はいつ行われるの?赤ちゃんの合併症はすぐに分かるの?
出生後に医師によってダウン症の疑いが認められた場合は、ご両親やご家族に説明し承諾を得たのちに、赤ちゃんの血液で染色体の検査を行い、確定診断を行います。
出生前に母親の血液を採取して調べる検査もありますが、確定診断には、母親の腹部に針を刺して羊水を採取し、染色体を調べる検査を受けることになり、流産等のリスクを伴います。
診断後は医師から説明があるほか、希望すれば医療機関のスタッフや地域の保健担当に詳しい話を聞くことができる場合もあります。
合併症についても、妊娠中や出産後の検査で早期に診断されることが多く、新生児期に手術が可能な場合には、生まれてすぐ医師から手術をすすめられることがあります。生まれたばかりのわが子の手術についての説明に戸惑い、医師と相談をしてもなお不安なことがあるようなら、セカンドオピニオンを求めることもできるかもしれません。
ダウン症協会や地域の親の会などに相談すると、ダウン症のあるお子さんに詳しい医療機関等の情報を紹介してくれることもあるようです。
出生前に母親の血液を採取して調べる検査もありますが、確定診断には、母親の腹部に針を刺して羊水を採取し、染色体を調べる検査を受けることになり、流産等のリスクを伴います。
診断後は医師から説明があるほか、希望すれば医療機関のスタッフや地域の保健担当に詳しい話を聞くことができる場合もあります。
合併症についても、妊娠中や出産後の検査で早期に診断されることが多く、新生児期に手術が可能な場合には、生まれてすぐ医師から手術をすすめられることがあります。生まれたばかりのわが子の手術についての説明に戸惑い、医師と相談をしてもなお不安なことがあるようなら、セカンドオピニオンを求めることもできるかもしれません。
ダウン症協会や地域の親の会などに相談すると、ダウン症のあるお子さんに詳しい医療機関等の情報を紹介してくれることもあるようです。
ダウン症の合併症の治療法は?
乳幼児期の合併症の治療法・医療サポート
ダウン症のある赤ちゃんの約50%に心疾患など循環器系の病気が合併しているといわれています。しかし、早期段階(胎児期〜乳幼児期)でスクリーニング可能になり、乳幼児のうちから手術や治療ができるようになりました。
小児の心臓病を専門に扱う施設も増え、早期の外科治療ができる可能性が高まると共に、手術の成功率も上昇しているようです。
ダウン症のある人は、さまざまな合併症がある可能性がありますが、適切な健康管理と発達支援、そして社会資源の活用などによって、着実な心身の成長と発達が期待できるようになってきています。
小児の心臓病を専門に扱う施設も増え、早期の外科治療ができる可能性が高まると共に、手術の成功率も上昇しているようです。
ダウン症のある人は、さまざまな合併症がある可能性がありますが、適切な健康管理と発達支援、そして社会資源の活用などによって、着実な心身の成長と発達が期待できるようになってきています。
ダウン症のある子どもに起こりやすい合併症とフォローの目安
合併症が認められた場合、適切な管理が必要です。ダウン症のある人に起こりやすいといわれている合併症は以下の通りです(月齢などは目安)。
・先天性心疾患
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など、さまざまな心臓の疾患が合併している可能性があります。新生児期の診察で確認されると、直ちに治療、管理が開始される場合もありますが、経過観察するだけで良い場合もありますので、主治医とよく相談しましょう。
・消化器疾患
十二指腸閉鎖などの消化器官の機能の低下や、肛門がうまく作られず、ふさがった状態で生まれてくる鎖肛などの疾患がある場合があります。治療はすぐに開始され、ほとんどが日常生活を送るのに支障がない状態に管理されます。また、腹筋の弱さや、消化器機能の低下などにより、便秘になりやすいこともあります。特に乳幼児期には服薬などにより排便コントロールが必要な場合もあります。
・血液疾患、甲状腺など
一過性骨髄増殖症などによる白血球等の数値異常や甲状腺機能のほか、血液検査で確認できる疾患の早期発見、治療のために、6ヶ月時、1歳時、以降問題なければ1年ごとに血液検査を受けることが望ましいと考えられています。
・視力・眼疾患
乳幼児期から白内障などの眼疾患の確認のほか、屈折率の測定を行います。乳幼児でも屈折率を測定しやすい機器などのある小児専門の眼科もあります。就学までは1、3、5歳時の眼科受診が推奨されています。
・聴力・耳鼻科疾患
中耳炎、難聴、閉塞性無呼吸などに注意が必要です。新生児期にスクリーニングのための聴力検査を実施し、以降、状態によっては半年から1年ごとにフォローがあります。一般的な聴力検査で測定が難しい場合には、脳波測定による聴力検査を行うこともあります。
・歯科
歯の萌出が認められたら、主治医のすすめる歯科などで定期的にフォローが必要です。離乳食の進め方、食べ方の指導などが受けられる歯科もあります。
・泌尿器
男児は、精巣の停留の有無の確認が必要です。また、尿を溜める能力や、排尿に関する機能の問題についても、気になることがあったら相談してみてください。
・整形
外反扁平足などがある場合、靴の中に足をサポートするための特別な中敷きを入れることがあります。
・頸椎不安定性
だいたい3歳時と6歳時(就学前)に頚椎のX線検査を行うよう推奨されています。
異常が認められれば整形外科でフォローが行われます。
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など、さまざまな心臓の疾患が合併している可能性があります。新生児期の診察で確認されると、直ちに治療、管理が開始される場合もありますが、経過観察するだけで良い場合もありますので、主治医とよく相談しましょう。
・消化器疾患
十二指腸閉鎖などの消化器官の機能の低下や、肛門がうまく作られず、ふさがった状態で生まれてくる鎖肛などの疾患がある場合があります。治療はすぐに開始され、ほとんどが日常生活を送るのに支障がない状態に管理されます。また、腹筋の弱さや、消化器機能の低下などにより、便秘になりやすいこともあります。特に乳幼児期には服薬などにより排便コントロールが必要な場合もあります。
・血液疾患、甲状腺など
一過性骨髄増殖症などによる白血球等の数値異常や甲状腺機能のほか、血液検査で確認できる疾患の早期発見、治療のために、6ヶ月時、1歳時、以降問題なければ1年ごとに血液検査を受けることが望ましいと考えられています。
・視力・眼疾患
乳幼児期から白内障などの眼疾患の確認のほか、屈折率の測定を行います。乳幼児でも屈折率を測定しやすい機器などのある小児専門の眼科もあります。就学までは1、3、5歳時の眼科受診が推奨されています。
・聴力・耳鼻科疾患
中耳炎、難聴、閉塞性無呼吸などに注意が必要です。新生児期にスクリーニングのための聴力検査を実施し、以降、状態によっては半年から1年ごとにフォローがあります。一般的な聴力検査で測定が難しい場合には、脳波測定による聴力検査を行うこともあります。
・歯科
歯の萌出が認められたら、主治医のすすめる歯科などで定期的にフォローが必要です。離乳食の進め方、食べ方の指導などが受けられる歯科もあります。
・泌尿器
男児は、精巣の停留の有無の確認が必要です。また、尿を溜める能力や、排尿に関する機能の問題についても、気になることがあったら相談してみてください。
・整形
外反扁平足などがある場合、靴の中に足をサポートするための特別な中敷きを入れることがあります。
・頸椎不安定性
だいたい3歳時と6歳時(就学前)に頚椎のX線検査を行うよう推奨されています。
異常が認められれば整形外科でフォローが行われます。