拡張現実(AR)で療育!?自閉症スペクトラムの人がソーシャルスキル獲得に使えるメガネがスゴイ!

ライター:林真紀
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自閉症スペクトラム障害のソーシャルスキルトレーニングにスマートグラスを用いる研究が進められています。ソーシャルスキルをゲームで、しかも拡張現実の世界の中で楽しく学ぶ。これによってどのような効果が生まれるのでしょうか?海外ニュースから詳しくご紹介します。

意外と身近?拡張現実(AR)とは

発達障害のある子どもたちの療育シーンを覗いてみると、いろいろな遊びやゲームを活用していることが分かります。わが家の息子の療育でも、半分はお勉強感覚、半分はゲーム感覚というプログラムがよく見受けられました。

課題に遊びやゲームを取り入れることによって、子どものモチベーションがアップすることはなじみのある話だと思います。

さて海外では、発達障害の子どもたちの療育において、「課題をゲーム化」することに加え、 拡張現実(AR:Augmented Reality) の技術を使ってソーシャルスキルトレーニングを行うことのできるメガネが開発されました。

拡張現実(AR)と言っても、ピンとこない方もいるかもしれません。拡張現実とは、私たちが実際に見えている世界に、さまざまな画像や映像を重ねて表示する技術などを指す言葉としてよく用いられます。

身近な例では、最近流行した「ポケモンGO」があります。スマートフォンの先に見えている現実の景色の中に、ポケモンのキャラクターなどが重なって表示され、あたかも私たちが生きている世界の中にキャラクターたちが存在しているかのように見えます。

さて、拡張現実(AR)を使ったメガネで、どうやって療育を行うのでしょうか。

スマートグラスによるソーシャルスキルトレーニング

このような拡張現実の世界を見せてくれる特殊なメガネを「スマートグラス」と言います。通常のメガネのレンズにあたる部分には透明なティスプレイがあり、現実の世界に重ねて、表示される内容を見ることができます。

このスマートグラスを、自閉症スペクトラムの子ども向けの支援に使うことを見出したのがアメリカのBrain Power社とAffectiva社です。
AUTISM SUPPORT (訳:自閉症者の支援)
https://www.affectiva.com/success-story/brain-power/
この取り組みで使われたのは"Google Glass"(グーグルグラス)と呼ばれるスマートグラスです。

グーグルグラスは検索エンジンとしても有名な Google社が開発したものの、一般向けへの販売は2年以上前に終了していました。このまま幻の機械になってしまうかと思われたグーグルグラスでしたが、この製品の開発によって療育用の機器として再び注目を集めています。

グーグルグラスによる療育は、発達障害のある子どものソーシャルスキルトレーニングに使われているようです。下の動画が、その様子になります。

Empower Me: The World's 1st Augmented Reality Glasses For Autism(訳:世界初、自閉症児のための拡張現実を用いたメガネ)

スマートグラスにはカメラも内蔵されており、メガネの先にいる人間の顔やジェスチャーなどをリアルタイムに認識することができます。
実際のソーシャルスキルトレーニングでは、次のようなことを行っているようです。

目の前にお母さんが座っています。お母さんは笑っています。それを見て、メガネの中に映し出されたアニメーションの顔を使った「表情当てクイズ」に回答します。お母さんが笑っている顔を見て、「ハッピー」のアニメーションを選ぶことができたら、目の前に「正解!」と出てきます。こうして、ゲーム感覚で、目の前の人の表情を学ぶことができます。

また、スマートグラスを使って、相手と視線を合わせる訓練もできるようです。目の前にいるお母さんや療育者の目を見た瞬間に、目の前に拍手をするアニメーションが出てきたりして、何かしらの「ご褒美」が表示されるようになっています。

スマートグラスの活用はスタンフォード大学でも

同じような取り組みはアメリカのスタンフォード大学でも行われており、そこでも同じくグーグルグラスが用いられているようです。スマオートフォンアプリとも連動し、トレーニングの成果などを分析して、次のアクションの検討に役立てることも可能です。

臨床研究も進められており、利便性と効果の両軸から、在宅での療育の可能性について日夜研究されているようです。
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Autism Glass Project press kitより
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"Autism Glass Project" (訳:自閉症児用メガネプロジェクト)
出典:http://autismglass.stanford.edu/
次ページ「「ゲーム感覚」であることの重要性」

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