薬物療法についてどこに相談すればいいの?医師や薬剤師、その他の相談先を解説!【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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薬物療法を始めるべきか、続けてよいものか、色々な悩みが出てきますよね。「副作用が心配」「使い方が合っているか」など、子どもの成長に深く関わるからこその悩みは尽きません。けれども、相談をしようにも誰にどのように聞けばいいのかもまた、悩みどころ。今回の記事では、医師、薬剤師、その他の相談先について、それぞれの役割や相談する際のポイントについて紹介します!

監修者岡田俊のアイコン
監修: 岡田俊
奈良県立医科大学精神医学講座教授
博士(医学)
特別支援学校学校医
知的障害者施設非常勤医師
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、トゥレット症などの発達障害(神経発達症)および、その併存症に対する医療、その他の多角的支援にかかわっている。
目次

薬物療法をめぐる相談方法、どうしてる?

発達障害への支援のひとつとして、薬物療法という選択が取られる場合があります。ですが、発達障害の診断を受けたからといって薬物療法を受けなければならないわけでもありませんし、薬物療法が唯一の治療というわけでもありません。

子どもが抱えている問題について、さまざまな治療的アプローチを行った上でなおも持続する問題があり、薬物療法を実施することが、その子の問題の解決を促進すると確信できて初めて薬物療法の可能性が検討されるのです。

その際、一番大切なことは、「子どもの現状をどのように見立てるか」ということです。まずはご家族で相談し、家庭での生活の様子を診療の中で伝え、医師から治療選択肢について十分な説明を受けることが大切です。

しかし、日中の様子は学校しかわからないことも多くあります。保護者の方のもとには、学校で起こった様々な出来事が報告されていると思います。いま一度、どのような場面がこの子は苦手なのか、そこでどのような反応をしたのか、周囲の子や先生はどのような対応をしたのか、先生はこの子の行動上の問題についてどのような見立てをし、日々どのような工夫をし、その効果についてどのように感じているのかなどを改めて整理してみることが大切です。

そうすると、薬物療法以前に新たな対応のヒントが見つかるかもしれませんし、この部分に薬物療法のちょっとした手助けがほしいと感じることがあるかもしれません。その情報を診察の場に持ち込んで、薬物療法の是非について検討するとよいでしょう。

学校の先生に、学校での様子や対応について詳しく聞く意味は、薬物療法の開始だけの問題ではありません。

対応上の工夫とその結果を分析的に聞いておくことによって、学校の先生の対応もより前進しますし、薬物療法により改善が得られた場合、その変化した部分を詳細に教えてもらうことができます。また、副作用が現れた場合にも、早期に連絡をいただくことができます。林間学習や修学旅行など、保健室の先生に薬の管理をお願いすることもできるでしょう。

学校の先生を対象にした調査で、通常学級でも6.4%の子どもが発達障害のために何らかの支援を要することが報告されています。その子たちのなかで実際に服薬をしている子は一部ですが、多くのクラスや学年で向精神薬を服薬してる生徒がいるのも実情です。

それ以外にも、てんかんやぜんそくなどの病気で薬の服用をしている子もいます。服薬をしている生徒を支える体制も学校には整っています。担任の先生だけでなく、保健室の先生(養護教諭)とも相談してみるのがよいでしょう。
文部科学省: 「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児 童生徒に関する調査結果について 」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf

医師・薬剤師への相談

医師の役割

薬物療法を実施する場合、医者は「薬を処方する」立場にあります。お子さんの発達障害についての医学的知識、その薬がこの子の病状に対してどのような効果や副作用を示すのか、最も知識を持っているのは医師でしょう。

以前であれば、専門的な知識を持っている医師の判断に治療決定を委ねるというのが一般的でした。しかし、今日では医師は治療決定に必要な情報を提供し、患者がその方針を決定するものに変化しています。

治療決定において重要なのは、診察場面での本人の様子以外に、子どもさんを日々見ている保護者の方や学校の先生の情報です。そのため、その子の状態を見立てる作業から意思決定まで、医師はともに考えるパートナーであると考えた方がよいでしょう。

医師にはどんなことが相談できる?

今日では、処方された薬剤についてインターネットで調べれば莫大な情報が得られます。そのなかには確かな情報もあれば、不確かな情報もあり、それらの情報のなかで適切に判断をしていくことが求められます。

医師は、医師が必要と思う情報だけを選択するのではなく、可能な限り広範な情報を提供するよう努めていますが、患者さんが本を読んだり、インターネットで調べたりして、不安になってさらに質問したいことがでてくるのは日常的なことです。

薬物療法による効果、短期的あるいは長期的な副作用、いつまで服薬を継続するのか、代替治療にはどのようなものがあるのか、といった情報もあるでしょう。

医師から得た情報、あるいはそれ以外のメディアから得た情報がどういった証拠に基づくものなのか、もしその情報が今日では正しくないと考えられているのであれば、それはどのような根拠で否定されたのか(あるいは、それを支持する根拠がないということなのか)、医師は多くのことを知っているでしょうし、すぐには答えられないとしてもその宿題に対する回答を調べてお伝えすることができるかもしれません。

大切なことは、不安なことをストレートに相談し話し合うことです。

多くの子どもは、小児科のかかりつけ医を持っているはずです。かかりつけの先生もいいアドバイスをしていただけるでしょうし、現在、継続して治療している病気があるとすれば薬の飲み合わせなどについても相談しておく必要があります。

医師と相談できることは多くあります。ほかの薬との併用や食べ合わせが気になるとき、薬を用法通り飲み忘れたとき、副作用が出たときは医師に相談しましょう。

決められた量よりも多い薬を服用してしまったというときは医師に相談することもできますし、緊急医療機関への受診が必要なケースもあります。対応に迷ったら、自治体が設置している緊急ダイヤルに相談することができますし、公益財団法人日本中毒情報センターが中毒110番を作り、情報を提供しています。
公益財団法人 日本中毒情報センター
https://www.j-poison-ic.jp/

薬剤師の役割

薬は、効果をもたらすことも副作用をもたらすこともあります。副作用のない薬はありません。専門家から適切なアドバイスを受けて、正しい使用方法を理解する必要があります。

薬剤師は薬の専門家で、薬の性質に関する豊富な知識から、患者に助言をしたり、必要に応じて医師に処方についての問い合わせをしたり提案をしたりします。

患者さんは医師から渡された処方箋を調剤薬局に持参します。調剤薬局では、調剤するに当たり、患者さんの薬のカルテを作り、これまでにかかった病気や治療中の病気、服用中の薬剤、生活習慣や現在の身長、体重から体調まで幅広く質問します。

薬剤師は、投薬内容や投与量が適切か、同じような薬が重複していないか、飲み合わせの悪い薬が出されていないか、持病のために服薬できない薬が処方されていないかをチェックします。また、薬物療法継続中には、薬物療法の効果が得られているか、副作用がないかを質問されるでしょう。

副作用が出たときの対処方法についても指導を受けることができます。総じて、薬を飲むことの副作用については知られていますが、薬を中断したときの副作用については意識しない方が多いようです。

個人の判断で服用を中断するとよくない薬もあるので、処方される段階で医師か薬剤師に確認しておくとよいですし、もし風邪などを引いて、飲み合わせが不安になったら薬剤師に相談するとよいでしょう。

薬剤師に相談する時のポイント

かかりつけ医があるのと同様に、かかりつけ薬剤師に頼むことが推奨されています。理由は、服薬情報を一カ所に蓄積し、のみ合わせで問題がおこらないように、また、過去にアレルギーが出た薬を再度服用しないように患者さんの安全を確保することです。

しかし、現実には発達障害に対する調剤は、その病院の院内薬局であり、小児科のクリニックで出された処方に対する調剤はクリニック横の調剤薬局である、などということは多いでしょう。

また、薬剤師から質問として、「いつからどんな薬を服用して、その効果はどうでしたか?」と聞かれ、記憶が曖昧であったと言うことは誰もが経験することです。

このようなときに役立つのがお薬手帳です。何をいつから飲んでおり、服用後の状態はどのようだったかを記入しておくようにします。
参考:電子版お薬手帳|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html

服薬に関する不安があるとき、どうする?

副作用が現れたら?

副作用かもしれない、と思ったら主治医や薬剤師と相談してください。緊急性を要する事態であれば、副作用かどうかの判断は後回しにして、医療機関への受診を優先し、そこで現在服用中の薬剤について伝えてください。

ありふれた副作用については、処方時に説明を受けるていると思いますが、ときにはまれな副作用がおきることもあります。お薬には、添付文書があり、取扱説明書の役割を果たしています。ネットで検索すれば見ることができるので、ぜひ確認してみてください。

また、定められたとおりに使用したとしても重い副作用が起きてしまう、ということは起こり得ることです。日本では、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などの給付を行う公的な制度(医薬品副作用被害救済制度)があります。こうした制度があることも覚えておくと良いでしょう。
医薬品副作用被害救済制度 出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/index.html
Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構HP
https://www.pmda.go.jp/

セカンドオピニオン

セカンドオピニオンは、患者が納得のいく治療方法を選ぶために、主治医以外の医師に治療方針についての意見を聞くことです。以前は、主治医の説明に納得がいかないと申し立てるようで、患者さんが遠慮されることが多くありました。

しかし、医師の側から見れば、より大きな納得と安心のもとで治療を受けていただく方がありがたいですし、実際にその治療方針について他の医師の意見も聞いてみることが有益なこともあります。

したがって、セカンドオピニオンを受けていただくことは医療機関側としても感謝されることが多いものです。セカンドオピニオンは、多くの場合には大学病院や専門医療機関で提供されています。セカンドオピニオンを受けてみたいと思ったときは、まず現在の主治医と相談してください。

まとめ

発達障害の治療法の一つとして、薬物療法があります。さまざまな治療方法を行ったうえで、なお残る問題があり、薬を使うことで症状が改善するという確信がある場合に、薬物療法が取られます。

薬物療法を行う中で重要なことは、子どもの現状を見立てることです。診断の場で医師とよい話し合いができるように、保護者は日常の様子をよく把握しておきましょう。家庭での様子だけでなく、学校での様子についても先生からこまめに聞くと、より子どもの現状を把握できます。

薬剤師は薬の専門家として、服薬の相談に乗る役割を担っています。飲み合わせや、副作用などについて不安がある場合、薬剤師にも聞くことができます。相談の際、薬剤師が服薬状況や症状の出方について、なるべく詳しく把握できるように、普段からお薬手帳を記しておくとよいでしょう。

一番大切なことは、本人にあった治療法を選択することです。医師や専門家とストレートに話し合い、納得のうえで治療を進めましょう。
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