大人の癇癪(かんしゃく)とは?感情のコントロールができない…発達障害との関連は?【専門家監修】
癇癪(かんしゃく)は、医学的な診断名ではありませんが、一般的には怒りの気持ちを抑えたり、怒りからくる突発的な行動をコントロールしたりすることができない状態を指します。イライラしたら止まらない、家族にだけイライラする、キレる、人や物に激しく当たる、攻撃的な言動をとる、仕事や勉強が手につかないなどの行動がみられることがあります。ここでは、怒りとの付き合い方や、強い怒り(癇癪)の対処法「アンガーマネジメント」、癇癪の原因、関係する病気や障害、相談先についてご紹介します。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
大人の癇癪とは?
この記事で分かること
- 大人の癇癪(かんしゃく)の原因と、ついカッとなってしまう怒りの感情のメカニズム
- 自分でできる怒りのコントロール方法「アンガーマネジメント」の具体的なテクニック
- 大人の癇癪と発達障害(ASD・ADHD)の関連性、その特性が与える影響について
- 悩みを抱え込まないための専門機関への相談先と、癇癪を起こす人の周りの人の関わり方
癇癪って?
ここでは大人の癇癪について、詳しく見ていきたいと思います。
ネガティブな感情をコントロールできないのはなぜ?
専門的には、ぐっと気持ちを抑えることを「情動調整」、「本当は怒りたいのだけれど、やわらかく言おうとする」ことを「行動制御」ともいいます。
しかし、感情のコントロールがうまくできないと、冷静に判断をすることができず、怒りの感情にまかせて体が衝動的に動いてしまうことがあります。
また、逆にストレスをため込みすぎると身体症状が生じたり、抑うつなどの二次的な問題が起こったりすることもあります。
怒りが起こるきっかけはさまざまで、例えば、人とのかかわりの中で相手から投げられた言葉や態度、また物事に対するうまくいかなさなどがあります。いずれにせよそれらのきっかけは、冷静に考えたらささいなものであり、それほど怒るようなことでもない場合が大抵です。
癇癪を起こしてしまう原因は、その場にある刺激や出来事、相手の態度だけではなく、もっと別のところにも問題があるとも考えられます。この点については後の章でご紹介します。
そもそも、怒りとは何か?
また、感情表出や共有によって、周りの人との関係を作ってゆくことができます。例えば、「楽しい」気持ちによって出てきた笑顔が周りの人とのかかわりを生み出して、友好的なコミュニケーションを引き出すということは、誰しも経験があることなのではないかと思います。
このように生命を維持したり、人とのかかわりをつくるのに感情は役に立っています。
では、まず「怒り」について詳しく考えていきましょう。
ひと言で「怒り」といっても、認知の介在しない怒りと認知の介在する怒りがあります。
認知の介在しない怒りは、目の前にある対象に対して瞬間的に起こる怒りの感情です。いやなことをされて瞬間的に怒鳴るなどがこれに当たります。この怒りは脳の大脳辺縁体が働いて起こります。
認知の介在する怒りは、目の前にある対象に対しての場合と、目の前にない過去の出来事に対して怒りの感情が湧いてくる場合もあります。きっかけとなる他者の態度に対して、「私の悪口を言っている」「あのときは馬鹿にしていたのだ」などと考えたことが引き金となって怒りの感情になるのです。これは前頭葉、大脳皮質の反応による感情です。
コントロールされた怒りの感情の表出は、そのきっかけがあったときに、多くは以下のプロセスをとります。
1.きっかけとなる出来事が起こる
2.怒りの感情が起こる
3.感情を調整する
4.行動・表現する
癇癪を起こしてしまう人は、上記のプロセスを経る中で「過剰に反応してしまう」「感情を調整することができない」「行動の調整をすることができない」などの状況に陥っていると言えます。
では、そのような困った状況で、私たちは怒りをどのように抑えていけばよいのでしょうか。
癇癪を自分でコントロールしたい…怒りを抑えるには?
また対処法は、その怒りに認知が介在しているかどうか、今目の前に対象がいるかによっても変わってきます。
ここでは怒りが起こったときに、どのような対処法が有効かをご紹介します。
生理的なアプローチ
誰でも疲れていたり、眠れないときにはイライラしたり、ちょっとしたことでカッとなってしまいがちです。
そんなときはまず、よく寝る、体を緩めるなどして体調を整えてみましょう。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、アメリカで開発された怒りを予防し制御するための心理プログラムです。プログラムの開発当初は、軽犯罪者に対する矯正プログラムとして確立されていましたが、今では企業や教育現場などにも取り入れられています。
怒りの感情と上手に向き合うことで「あのとき、あんなふうに怒らなければよかった」と後悔することが少なくなるでしょう。
アンガ―マネジメントはトレーニングですので、すぐには怒りを抑えることができなくても、意識をして何度も行動に移すことで効果が現れてきます。
諸説あるものの、怒りが頭にのぼるピークは6秒ほどといわれています。短時間で怒りをやり過ごす例として、5つの方法を挙げます。
1.怒りを数値化する
2.その場から離れる
3.深呼吸をする
4.意味づけを行う
5.いまに意識を集中させる
1.怒りを数値化する
怒りは目に見えないものです。だからこそ、振り回されてしまいます。怒りを数値化することによって、感情を客観的に評価することができ、怒り任せの行動を防ぐことができます。
ここでは10点満点中、0~10までの数字を思い浮かべます。
0 まったく怒りを感じていない状態
1~3 イラッとするが、すぐに忘れてしまえる程度の軽い怒り
4~6 時間がたっても心がざわつくような怒り
7~9 頭に血が上るような怒り
10 絶対にゆるせないと思うくらいの激しい怒り
戸田久美/著『アンガ―マネジメント 怒らない伝え方』2015年/刊/かんき出版
2.その場から離れる
目の前に怒りの対象がいる場合で、自分が感情をコントロールできなくなったときに有効です。怒りの気持ちがおこった環境を変えることにより、攻撃的な気持ちをリセットすることができます。
怒りを感じたときに相手がいる場合には、「ちょっとお手洗いにいくので席をはずしますね」などと一言断ってから場を離れるようにしましょう。
3.深呼吸をする
怒りを感じたら深呼吸をするという対処法はよく聞きますが、生理学的にも効果が証明されています。深呼吸をすることによって、副交感神経という心をリラックスさせる自律神経のはたらきが高まります。
怒りが湧いてきたら、鼻から大きく息を吸い、いったん呼吸を止めます。そして、口からゆっくりと息を吐きます。これを2~3回行っていきます。「4秒吸って、8秒吐く」など吐くことに時間をかけると効果的です。
4.意味づけを行う
問題のある状況に意味を見出すこと、またその状況に対してポジティブな解釈をすることです。
例えば就職活動の面接に来た場合を例として考えてみましょう。
面接官から非常に難しい質問をされたとします。その状況を「意地悪な面接で嫌だなあ」と思うかもしれません。しかし「面接官も好きで意地悪をやっているのではない。業務の一環なんだ」ととらえることもできます。
そして面接官がした質問の捉え方によって、私たちの反応は変わってきます。おそらく前者では恐怖を感じる、自信をなくしてそのあとの質問にもうまく答えられないかもしれないですが、後者では、質問に何とか対応しようと冷静さが保てるかもしれません。
このように、状況や相手の言葉や態度を見る視点を変えることを心理学では「認知的再評価」といいます。
5.いまに意識を集中させる
怒りを感じたシーンではないにもかかわらず、頭の中で認知的に意味づけをしてしまうことで、怒りの感情が増幅したり、何度も繰り返されてしまって持続してしまうような場合があります。この方法は怒りが頭に湧き起こってきたときにも有効ですが、他の方法と異なるのは、以下のように怒りの対象が目の前に存在しないときに生じる怒りにも効果が見られることです。
・怒りが長く続いているとき
・過去に起こった怒りにとらわれているとき
・よくない未来を想像しがちなとき
目の前にあるものを観察したり、目を閉じて聞こえてくる音を心の中で描写します。例えば「紙がこすれるカサカサという音がする」「足音がする」「電気がチリチリと鳴る音がする」などです。
これはマインドフルネスという瞑想プログラムでも用いられている方法で、今ここに意識をもってくることで、とらわれている感情から解放されることが目的とされます。
イライラ予防に効果あり!ADHDな私の「ネガティブイメトレ」法とは
大人にもおススメ!すぐキレる6歳の息子が考えたイライラ対処法
大人の癇癪と発達障害(自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如多動症)など)との関係は?
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、決められた手順やスケジュールに強くこだわり、新しい人や状況、臨機応変な対応などが苦手な傾向があります。そのため、予想外の事態に直面すると不安にかられたり、癇癪を起こしてしまうことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の診断・検査の内容は?【専門家監修】
ASD(自閉スペクトラム症)とは?専門機関や診断基準を解説【専門家監修】
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴は?0歳から学齢期、成人期までの年齢別に紹介【専門家監修】
ADHD(注意欠如多動症)
また、ADHD(注意欠如多動症)の二次障害として、素行障害や反抗挑戦性障害を引き起こすことがあります。幼少期、就学期のころに、周囲から叱責や注意を多く受け、自分の行動が理解されないことから自尊心が下がることなどにより、こうした二次障害につながると、反抗的な態度を取ることとなります。
幼い頃は反抗的な態度をとるにとどまっていても、年齢があがってくると徐々に攻撃性がエスカレートし、また周囲からの理解が得られず、攻撃性がさらに高まり、暴力行為や非行問題に走ってしまうことがあります。このような負の連鎖をDBDマーチともいいます。
【専門家監修】ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?「不注意」「多動・衝動性」「混合」それぞれの特徴を解説
素行障害(素行症)とは?症状や原因、発達障害との関連は?【専門家監修】
「大人のADHD」普段は何に困ってる?二児の母である私の場合
幼少時の養育環境によるもの
というのも気持ちのコントロールは、他者とのあいだにある多様なやりとりによって、その方法を学ぶという要素が強いからです。
人は相手との愛着的関係の中で、「気持ちをなだめてもらう」「気持ちをコントロールしてうまくいく」という経験を経て学習していくものです。しかし、虐待や育児放棄といった、養育環境の中で適切なやりとりが行われなかった場合、過剰に感情を表出したり、あるいは抑制したりしてしまう子どももいます。そしてそれが大人になっても続いていくことがあります。
人に危害を加えてしまうことがある、また対人関係が上手くいかないなどの具体的な悩みごとがあり、自覚できることがある場合、カウンセラーなどの専門家に相談してみることをおすすめします。
癇癪は治療できる?どこに相談すればいい?
精神科やカウンセリングに行く前に相談に乗ってくれる機関があります。以下の相談機関では、こころの問題を含めた病気や生活の悩み事の相談に乗ってくれます。
病院の受診が必要かどうかわからないときや、ご家族や知人の方が相談したいときには気軽に利用してみましょう。電話で相談、受診先を案内してもらったり、場合によっては面接の予約をしての相談となることもあります。これらは各都道府県と政令指定都市に1か所以上設置されています。公的機関であるので相談料金は無料です。
・保健所
・精神保健福祉センター
以下のリンクからお近くの相談機関を調べることができます。
癇癪の治療を受けたいと思ったら
カウンセリング・認知行動療法
病院に併設されていることもありますが、多くの場合は自由診療であるので、診療以外の費用がかかります。
怒りについては、気持ちや行動などの調整を妨げる原因によって、アプローチの方法は異なります。また、ひと言でカウンセリングといっても、心理療法の立場によってさまざまなアプローチがあります。
また、発達障害が併存する場合は、その特性に合わせてスケジュール変更の可能性があることを示す、気持ちを切り替えるための余暇グッズを用いる、選択肢を与えるなど環境整備や適切な対応をすることによって、感情をコントロールし、低減することができます。
そのようなことを行ったとしても強い癇癪が続いてしまうような場合、医療機関を受診してみるのもよいでしょう。
医療機関の受診
医療機関では、主に症状そのものの緩和のためのアプローチが行われます。主に投薬と生活指導が基本です。例えば、不安という症状に対しては抗不安薬を、不眠症状には睡眠導入剤や抗不安薬など症状を緩和するための薬剤を処方されます。
医療機関では【症状を聞く】→【診断を下す】→【投薬をする】という一連の流れで患者の病状を改善していきます。
医療機関を受診する際に役に立つツールとしては以下のようなものがあります。
◇メモを用意する
自分が困っていることや、確認したいことについて事前に整理をしておきます。例えば、最近の体調、気持ち、仕事や学校のこと、家庭のことなどです。このように事前に自分の身に起きていることを整理したメモは、診察の場面で言いたいことをきちんと伝えるお助けツールになります。
しかし苦しいという悩みはあるものの、実際に言葉にできないこともあるでしょう。そのようなときには、以下のような質問リストを参考にすることで、聞きたいことをリストアップしてみることをおすすめします。これは統合失調症の患者さん向けに作られた一例ですが、精神科を受診するすべての人が参考にして役立てることができます。
癇癪を起こす人の周りにいる方へ
周りの人たちはどのような心構えで本人と関わればよいのでしょうか。
本人の苦しさを知る
癇癪を起してしまう人は、爆発的な怒りをどうにかしたいと思っている一方で、気持ちをコントロールできず当たり散らしてしまう現状に対して葛藤を抱いています。癇癪は自分では「怒りを抑えられない」という状態のために、自分でも怒りの原因や対処法が分かっていないことが多く悩んでいます。
また二つ目の問題として、癇癪による二次的な問題があります。すぐに感情的になってしまうために人とうまく付き合えず、家族や恋人、友人との間の人間関係や、職場や学校における適応に問題を抱えている人もいます。
そうした本人の気持ちを理解したうえで、解決したいという本人の支えとなる方法がないかを一緒にさがしてみるとよいでしょう。
大変なときには距離を置く
明らかに自分に非があった場合を除いて、本人の怒りのサンドバックになる必要はありません。大事なのは、本人が冷静なときなどに事前に「周りにいる自分にも苦しさがある」ことを伝えた上で、「自分の身を守るためにもその場を離れることがある」などと伝えておくことです。
職場などの場合には「距離を置く」という選択をすることが難しい場合もありますが、事前に説明したうえで耐え難い怒りの場から物理的に離れることも試してみてください。
また、あまりに癇癪が激しく、精神的につらいときや危害を受けているときには、ためらわず専門機関などに相談することも検討しましょう。
まとめ
わたしたちを怒らせるものの一つは「譲ることのできない価値観」です。
しかし「こうあるべき」という価値観が大きすぎると、現実を受け入れにくくなってしまいます。自分がどのような「こうあるべき」という価値観を、どの程度望んでいるのか、それをお互いに伝え合うことができれば、職場や家庭での人間関係も良好になるかもしれませんね。
子どもの癇癪(かんしゃく)とは?癇癪を起こす原因や発達障害との関連は?しんどいときの対応方法、相談先まとめ【専門家監修】
「もうやだ!」物に当たる、暴言を吐く…ADHD息子の癇癪に母もイライラ。本人が編み出した怒りモードを鎮める呪文とは?
発達障害の娘とイヤイヤ期の3歳児育児ーーイライラMAXな私の気持ちの切り替え法
【専門家監修】機能不全家族、アダルト・チルドレンにとは?原因、特徴、相談先や家族の立て直し方をご紹介
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)とは?【医師監修】
すぐに周りに怒ってしまい、時には姉にも怒ってしまう。こんな自分が本当に嫌になってしまいます。どうしたらいいか本当にわからず、アンガーマネジメントや深呼吸で治ればいいのですが、とても不安なのと自分の発言や行動に対して姉に本当に申し訳なく思います。現在精神科にも通っていますが、PTSDの専門医で発達障害の専門医ではありません。やはり医師を変えた方がいいのかとも思います。もしくは保健所に行くのがいいのかも悩んでいます。どこにも相談ができなくて悩んでいます。