療育はほどほどに!?聴覚過敏でジェットタオル拒否の息子。17歳になった今振り返る、療育のありかた

2018/02/12 更新
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息子が幼いころ通っていた療育施設では、“ジェットタオルに手をかざす訓練”が行われていました。聴覚過敏のある息子は、自宅以外のトイレに近づくことに恐怖を覚え、おしっこをしなくなってしまいました。

でも当時の私は「何とか公衆トイレのジェットタオルを使えるようになってほしい」と強く願っていました…。

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立石美津子
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『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子です。

聴覚過敏でパニックを起こしていた息子

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自閉症の人には、聴覚過敏がある場合が多いと言われています。幼い頃の息子にも過敏さがあり、掃除機、ドライヤー、洗濯機などの音を聞くとパニックを起こしていました。そのため髪の毛はタオルで拭けば乾くように、ずっと坊主刈りにしていました。
特に嫌がる音は、公衆トイレに設置してあるジェットタオル。あのブィーンと鳴る音が、恐怖のようでした。

療育施設で行われていた、大きな音に慣れる訓練

当時、ある療育施設に通っていました。その施設のトイレにはジェットタオルが設置してあり、音に慣れるための訓練をしていました。

なかには、家庭内のトイレにまでジェットタオルを設置し、親が“療育の先生”に変身し、家でも必死に訓練しているママもいました。

もちろん、訓練して使えるようになった子どももいましたが、息子の場合は、無理やりジェットタオルの下に手を持っていかれる練習を断固拒否。そのうち、療育施設の入り口に来ると身体をこわばらせるようになってしまいました。

さらに、療育中は尿意をもよおしても絶対におしっこをしてくれなくなり、ジェットタオルが設置されていない駅の公衆トイレで済ませるようになってしまいました。

「将来、この病院に入院することになりますよ!」主治医の言葉で、目が覚めた

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当時、通っていた都立梅ヶ丘病院の主治医に「ジェットタオルの音を嫌がります。生活していく上で不便で将来これでは困るので、今から練習させてなんとか慣れさせたいんです。どうしたら使えるようになりますか?」と相談しました。

すると、医師から次のように叱られてしまったのです。

「お母さん!そんなことをしていると、将来、二次障害を起こして、この病院にお子さんを入院させることになりますよ!」

「今すぐにそんな練習は止めなさい。ジェットタオルのない公衆トイレだってあるんだから、お母さんが“ジェットタオルが設置されていないトイレマップ”を作って、そこに連れて行けば済むことです。

それから、障害児なんだから堂々と身障者用トイレを使えばいいんです。そこだったら、急に誰かが入ってきてジェットタオルを使うことはないでしょ。息子さんも安心しておしっこができるはずです」

この病院には、障害特性を理解されない環境で幼児期、学童期を過ごし、思春期を迎え、深刻な二次障害を起こしている子どもが大勢入院していて、246床のベッドは常に満員でした。

「ジェットタオルが設置されていないトイレ」マップの作成

その後、通っていた療育をやめることにしました。

そして、医師に言われた通り、よく出かける地域の公衆トイレにジェットタオルがあるかどうかを調べて、次のメモをつくり、それが設置されていないトイレを使うようにしました。

これは、私が作っていたメモの一例です。
・井の頭線の駅にはジェットタオルがない
・久我山駅 綺麗なトイレだがジェットタオルがない
・東急デパート  全部設置
・デニーズ 豪徳寺店 車椅子用トイレのみ。だから一人用のトイレなので、目の前で他人が使うことはない
・ジョナサン梅ヶ丘店 複数トイレに一個設置
・渋谷駅構内トイレ  汚い古いトイレ もちろんない
・ガスト 世田谷店  複数トイレに一個設置

(上記は2005年時点の情報)

それまでは、息子は外出をする時におしっこを我慢している様子でしたが、ジェットタオルが設置されていないトイレを利用するようにすると安心できたようです。私と一緒のときは公衆トイレを使えるようになりました。

あんなに怖がっていた、ジェットタオル。いつの間にか使えるようになっていた!

次の写真は中学2年生の頃の写真です。
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息子をボーリングに連れて行ったときのこと。なんと、自らジェットタオルを使っていました!

昔はあんなに怖がっていたのに、なんの抵抗もなく、いつの間にか使えるようになっていました。幼児期に必死に特訓しなくても、時が経てば「子ども自身の力で、乗り越えられるようになるのだ」と感じました。

私が安心、安全を確保してやった結果、公衆トイレを使えるようになったり、さまざまな経験を通して大きな音への恐怖が軽減されていった結果なのかもしれません。

いつしか、トイレは息子にとって恐怖の場所ではなく、こだわりの場所になっていったようです。今や、息子が一番好きなのは公衆トイレなのです!便座のメーカーや型番をチェックするのが大好きで、トイレを見ると吸い込まれるように入っていきます。書くのもトイレのことばかり。

あんなに拒否し、怖がっていたのに、面白いですよね。
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「療育」とは、子どもにあったやり方で、できることを増やしていくこと

今の時代、“自閉症は先天的な脳機能の障害である”ことが分かってきたため、「自閉症は治る!」と考えてそのために療育をする人は少ないと思うのですが…「できるだけ皆と同じことができるようになる」のが療育の目的だと考えている人もまだまだ多いのかもしれません。

世の中は定型発達の人が生きやすいようにできています。だから、社会に馴染めるように練習していく必要はあります。けれども、それが行き過ぎるとデメリットもあると私は思うのです。

そもそも「療育」というのは、「これこれこういう風になってほしい」という大人のエゴで押しつけるものではなく、子どものためのものです。

障害のある子は、定型発達の子どもと同じやり方では学びづらいため、その子にあったやり方でできることを増やし、自分らしく生き生きと暮らせるようになるために行うものなのではないでしょうか。

なんのための療育なのか?誰のための療育なのか?「療育はほどほどに」という考え方も大切だと思います。

このコラムを書いた人の著書

立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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