「ジェットタオルが設置されていないトイレ」マップの作成

その後、通っていた療育をやめることにしました。

そして、医師に言われた通り、よく出かける地域の公衆トイレにジェットタオルがあるかどうかを調べて、次のメモをつくり、それが設置されていないトイレを使うようにしました。

これは、私が作っていたメモの一例です。
・井の頭線の駅にはジェットタオルがない
・久我山駅 綺麗なトイレだがジェットタオルがない
・東急デパート  全部設置
・デニーズ 豪徳寺店 車椅子用トイレのみ。だから一人用のトイレなので、目の前で他人が使うことはない
・ジョナサン梅ヶ丘店 複数トイレに一個設置
・渋谷駅構内トイレ  汚い古いトイレ もちろんない
・ガスト 世田谷店  複数トイレに一個設置

(上記は2005年時点の情報)

それまでは、息子は外出をする時におしっこを我慢している様子でしたが、ジェットタオルが設置されていないトイレを利用するようにすると安心できたようです。私と一緒のときは公衆トイレを使えるようになりました。

あんなに怖がっていた、ジェットタオル。いつの間にか使えるようになっていた!

中学2年生くらいの息子をボーリングに連れて行ったときのこと。なんと、自らジェットタオルを使っていました!

昔はあんなに怖がっていたのに、なんの抵抗もなく、いつの間にか使えるようになっていました。幼児期に必死に特訓しなくても、時が経てば「子ども自身の力で、乗り越えられるようになるのだ」と感じました。

私が安心、安全を確保してやった結果、公衆トイレを使えるようになったり、さまざまな経験を通して大きな音への恐怖が軽減されていった結果なのかもしれません。

いつしか、トイレは息子にとって恐怖の場所ではなく、こだわりの場所になっていったようです。今や、息子が一番好きなのは公衆トイレなのです!便座のメーカーや型番をチェックするのが大好きで、トイレを見ると吸い込まれるように入っていきます。書くのもトイレのことばかり。

あんなに拒否し、怖がっていたのに、面白いですよね。

「療育」とは、子どもにあったやり方で、できることを増やしていくこと

今の時代、“自閉症は先天的な脳機能の障害である”ことが分かってきたため、「自閉症は治る!」と考えてそのために療育をする人は少ないと思うのですが…「できるだけ皆と同じことができるようになる」のが療育の目的だと考えている人もまだまだ多いのかもしれません。

世の中は定型発達の人が生きやすいようにできています。だから、社会に馴染めるように練習していく必要はあります。けれども、それが行き過ぎるとデメリットもあると私は思うのです。

そもそも「療育」というのは、「これこれこういう風になってほしい」という大人のエゴで押しつけるものではなく、子どものためのものです。

障害のある子は、定型発達の子どもと同じやり方では学びづらいため、その子にあったやり方でできることを増やし、自分らしく生き生きと暮らせるようになるために行うものなのではないでしょうか。

なんのための療育なのか?誰のための療育なのか?「療育はほどほどに」という考え方も大切だと思います。

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