生理について。ナプキンの扱い方、どう教える?

生理は、思春期の女の子の体の変化でいちばん戸惑いやすいと言えるでしょう。この章では生理に関して発達障害の女の子にどんな困りごとが起こり、どうサポートするべきなのかを説明します。

生理(月経)とは

生理(月経)は「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」を指します。医学的な正式名称は月経ですが、生理という呼び方も一般的です。初めての月経のことを初経と言い、迎える年齢は平均12~13歳(小学校6年生~中学校1年生)です。

初経が起きる前触れとして、体の変化があります。急に身長が大きくなったり、胸が膨らみ始めたりしたら、いつ初経が来てもいいよう生理について説明し、生理用ショーツやナプキンを携帯させておくと安心です。

月経周期とは、月経初日から次の月経の前日までの日数を指します。25~38日が正常範囲ですが、思春期には多少のずれがあり、毎回周期がちがっていても心配する必要はありません。特に、初経を迎えてからしばらくは乱れがちなことが多く、周期が安定するには数年かかると言われています。

月経周期を把握すると、生理と関連した不調の存在を知ることに繋がります。生理に関連した不調では、月経前症候群(premenstrual syndrome)が代表的です。この症状は略してPMSと呼ばれ、月経開始の3~10日ぐらい前から始まる精神的・身体的な不調の総称です。

身体的な症状として、乳房が張る、痛む、乳首が敏感になる、頭痛、肩こり、腰痛、下痢、ニキビ、肌あれなど、不快感を伴う変化が起こります。

精神的な症状としては、イライラ、憂うつ感、不眠、眠気、過食などがあります。

このように、生理に関係して女の子の体はとてもデリケートに変わります。特に、発達障害の女の子は、特性によって独特な困りごとを感じることがあるのです。以下では、生理に関係する困りごとと、対処法を説明します。

生理特有の不快感を強く感じやすい

感覚過敏がある女の子の中には、生理中の蒸れ・かぶれ、ナプキンの肌触りに対する不快感をより敏感に感じる場合があります。

■生理用品を工夫して少しでも快適に
蒸れやかぶれに対しては、蒸れを軽減する生理用品(サニタリーショーツや布ナプキン、月経カップ、タンポンなど)を利用したり、こまめなナプキン交換を習慣化する、などで対処しましょう。かぶれが気になるときには、婦人科などで薬を処方してもらうことも可能です。

ナプキンを上手につけられない

不器用さや、順序立てた行動の苦手がある子は、ナプキンをつける手順がわからなかったり、正しくつけられなかったりという困りごとが起きます。

■視覚的なイメージに訴える
手順を知るには、周囲の大人の女性が実際につけ替えする場面を見せてあげることが一番効果があるでしょう。他にも、絵や図を使って視覚的なイメージに働きかける方法も効果的です。

■不器用さはつけ方の工夫で解決!
不器用でつけられない子どもには、比較的手順が単純な羽根なしのナプキンや、家でナプキンを2枚重ねにしておき、外でははがす手間を省く、などの方法が考えられます。

ナプキンのつけ替えを忘れがち

感覚鈍磨の特性がある子どもは、経血に気づかずナプキンをつけなかったり、蒸れやかぶれに気づかず、ナプキンをつけっぱなしにしてしまいます。

ナプキンをつけている下着の中は湿気がこもっていて雑菌が繁殖しやすく、皮膚炎や感染症につながる場合があります。

■「交換するタイミング」をルール化しよう
ナプキンを交換するタイミングをルールとして決めましょう。「1時間目、お昼休み、4時間目が終わった時に変える」など、具体的なタイミングを指定されているほうが意識しやすいでしょう。

ホルモンバランスによる体調の変化の影響を受けやすい

生理に関係する不調は生活習慣、メンタルの影響を受けやすいと言われています。発達障害(特にASD)の子どもは生活習慣が乱れやすく、ストレスも感じやすいと考えられています。そのため、月経不順や生理痛・PMSの重症化に気をつける必要があります。

■生活リズムを整える
ホルモンバランスを安定させるためには、規則正しい生活が必要です。そのため、起床・食事・入浴・就寝など、1日の中での出来事を同じ時間に行うように心がけましょう。

■月経周期を記録する
周期の乱れを判断する目安として前後およそ1週間ほどのズレが続くようでしたら、産婦人科に相談してみましょう。この時、生理周期の記録を持っていくと医師が状況を把握しやすくなります。

生理周期の記録の仕方としては、大人のサポートのもと生理開始日終了日にカレンダーにシールを貼る、生理日予測アプリを使う、などがおすすめです。

自身の月経周期を把握すると、月経周期に伴う体調の揺らぎのリズムをつかめます。体調不良が起きやすい時期に入ったら、激しい運動や夜更かしを控える、温かい食べ物を意識的にとるなど、自身の症状にあったPMSとの付き合い方を見つけていきましょう。

どうしてもつらいときは、低用量ピルという薬で症状を和らげることも可能です。気になるときは婦人科に相談してみましょう。

■体調が悪い時は無理をしない
生理に関係する体調不良は、精神状態に大きな影響を受けます。さらに、思春期の発達障害の女の子にとって、集団生活によるストレスや身体の変化に対する違和感から、より精神に負担がかかりやすい時期だと言えます。

そのため、本人がつらいと感じているときは無理強いせずに、休ませることも大切です。

発達障害の女の子にとって、思春期はなぜつらい?心に起こる困りごとにはどんなものがある?

発達障害の女の子にとって、思春期はなぜつらい?心に起こる困りごとにはどんなものがある?

思春期には、心は体と同じくらい大きく変化します。この章では、思春期に起こりうる心の変化と、発達障害の女の子が感じる困りごと、その対処法を説明します。

思春期、心の変化との付き合い方

思春期は、子どもから大人への成長段階として、自らのアイデンティティを築き上げている時期です。そのため、性格や人との関わり方にも、さまざまな変化が起こります。

その変化は、急激で、個人差があるため理解が難しく、本人も家族も戸惑ってしまいます。また、困った言動が思春期特有のものなのか、特性によるものなのかの判断がつかず、対応が難しいと感じることもあるでしょう。

この時期の環境とのかかわり方は、精神の健全な発達や、自己肯定感の向上に強く結びつきます。思春期ならではの心の問題が適切に対処され、子どもにとって成長機会となることを目指しましょう。

では、思春期の心の変化に伴って起こりうる困りごとにはどのようなものがあるのでしょうか。

反抗的、衝動的になる・強い不安を感じる

子どもは精神面での成熟が進むにつれて、自立心が芽生え、大人に対して反抗的・疑い深い態度を態度をとるようになります。「一人前に見られたい」という気持ちから、大人に対して反抗的な態度をとるようになります。また、刺激欲しさに衝動的な言動をしやすくなるのです。

また、もともとの特性であった衝動性や多動性が強化され、いきなり激情的な言動を見せるようになることがあります。

さらには、成長による心境の変化や沸き起こる衝動などの感情を発散する術や場面がないことも、この時期の発達障害の子にとっては大きな問題と言えるでしょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の子の中には、この時期特有の興味関心や反抗的な感情、将来への不安といった複雑な感情を認識・表現することが苦手な子がいます。そのため、自分の中でため込みすぎて根強いストレス感情を持ったり、無気力感を抱いたりして、問題の悪化を招きかねません。

■感情の流れを親子で整理しよう
「どんな時に怒鳴ってしまうのか」「何に対して不安を感じるのか」など、漠然とした感情の流れを整理する手伝いをしましょう。問題行動を起こしてしまう場面や漠然とした不安感情の中身を紙に書き出すことで、行動以前にできる手立てはないのかを探ったり、感情の具体化によって不安感情を和らげたりできます。

■ADHD(注意欠如多動症)の場合は薬物療法による支援も視野に
ADHDは薬の効果が出やすい症状です。合う合わないは個人差がありますが、本人の力や周りの環境調整ではどうしようもない時は、医師の指導のもと、薬物療法による支援も選択肢のひとつとなります。

■興味関心を頭ごなしに否定しない
この時期の子どもたちは、様々な事柄に興味を持ち、試してみたい衝動を持っています。大人から見ると、不釣合いであったり、滑稽に思えたりすることもあるかもしれません。

けれども、そのような多方面への興味関心はアイデンティティの確立において重要な役割を果たしています。見守ることが子どもの長い目で見た子供の成長につながるでしょう。

コミュニケーションが複雑化する

精神面での成長によって、人付き合いが複雑になり、女の子ならではのかかわり方のスタイルもできていきます。男女の役割や、仲良しグループなどの表面的には表現されない意味や役割を共有する集まりが増え、”暗黙の了解”を読み解くスキルが求められるようになります。

特に女の子は仲良しグループの意識が強く「ガールズトーク」といった、自分たちにしかわからない、かつ、話題がどんどん切り替わる話を楽しむようになるのですが、特性がある女の子は空気を読んだり、人の気持ちを考えることが苦手なため、意図せず周囲を傷つけるような発言をして孤立してしまうことがあるのです。

また、人の評価や目線に敏感になる思春期に、失敗経験や叱責を積み重ねることで自己肯定感さがり、困りごとの悪化や人付き合いへのトラウマ、二次障害に繋がることもあります。
 
■社交性が苦手なのを認め、無理させない
友達づきあいや集団行動ができなくても大丈夫、と伝えましょう。人付き合いで困った場面を上記の方法で整理してみましょう。

■専門家の力を借りる
家族だけではどうしても解決が難しいこともあるでしょう。学校のカウンセラーや医師、臨床心理士などの専門家に頼って人付き合いの方法を勉強することも一つの手段です。

女の子の性の問題に向き合う

思春期以降は、それぞれの性の特徴がはっきりし始め、異性への関心が高まる時期です。発達障害がある女の子は、性への関心や周囲の目線への無自覚さがあるために、トラブルに巻き込まれる可能性があります。本人が、自分の特性と周囲からの見え方を客観的に認識し、自らの体を守れるような仕組みを作りましょう。

以下では、発達障害がある女の子が注意すべき、性にまつわる問題と対処法を紹介します。

性的被害の標的になりやすい

アスペルガー症候群の女の子は、仲良くなることと性交渉をすることとの区別が理解できない場合があります。また、ADHD(注意欠如多動症)の女子は性的衝動に駆られやすく、性交渉の頻度が高くなり、不本意な妊娠や性感染症につながる恐れがあるといわれています。

このような問題を防ぐために、不用意な性交渉による影響を教えましょう。性交渉の意味、仲良くすることとは違うことをしっかり説明し、性交渉によって起こる性感染症や不本意な妊娠のリスクを伝えてください。

そして、性交渉を求める男性の言葉や態度、断り方、避妊についても具体的に説明できるとよいでしょう。

不用意な性交渉をしがち

相手の意図が理解できずに、言葉をそのまま信じてしまい、見知らぬ男性の誘いに乗って性的関係に持ち込まれる危険があります。また、適切な距離感がつかめず、勘違いをした異性から性的被害を受けることも考えられます。

こういった場合、なぜだめなのかを説明するよりもルールとして教えたほうが理解しやすくなります。言葉で伝えるだけでなく、文字に起こしたり、図で示すとよりイメージが付きやすい場合もあります。

例えば、男の子に触らない、話すときは腕一本分の距離をとる、知らない人と話さない、メールアドレスや名前、電話番号を安易に教えない、個人情報をネットに書き込まない、などのルールを決めたり、目安となる距離感を描いた絵を見せる、といった方法があります。

恋愛・異性関係に関するトラブルも

アスペルガー症候群の特性として、人との距離感がわからない、また、周囲から自分がどのように見えているかを認知することの苦手があります。

こういった特性が、異性との近すぎる距離感や、自分や他者の恋愛について気軽に話してしまう、同性と異性での行動の区別がつけられないといった、恋愛にまつわる人間関係のトラブルにつながる場合があるのです。

また、衝動性があるADHD(注意欠如多動症)の女の子は好きな異性に近づきすぎたり、場面を気にせず「好き」と言ってしまう、などの行動を起こしてしまうことがあります。

このようなトラブルが見られる場合、本人は性的知識の不足や概念的な物事を理解することの難しさを抱えています。そのため、周囲の大人が場面ごとにどうすべきかを、一つひとつ説明し、理解してもらう必要があります。

家庭が、子どもにとって分からないことがあるとき、トラブルが起こったときにすぐ相談できる場であるために、普段から恋愛や性のことについて話合う機会を持っておくとよいでしょう。
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