女の子の発達障害、思春期に起こる身体と心の変化とは?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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思春期は子どもから大人に移ろう時期。心身の変化に戸惑いを感じやすく、本人だけでなく、周囲の大人も戸惑い、不安な気持ちを抱くことが多くあります。思春期に起こる身体の変化は第二次性徴と言い、困りごとにも性差が出てきます。発達障害のある女の子にとって、特性による困りごとに加え、年齢ならでは、性別ならではの困りごとにも向きあい始める段階になります。

この記事では「思春期に起こる変化って?」「女の子の発達障害ならではの困りごとは?」といった、性や生理、交友関係の変化への対応などまでお伝えします。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

思春期は、子どもから大人への変化を遂げる期間

思春期とは、子どもが大人へと移行する時期のことです。この時期には第二次性徴という体の変化が生じたり、異性への関心が育まれたりします。

始まる時期には性差があり、女子は9歳、男子は11歳くらいです。二次性徴が始まった年齢から18歳頃までの期間を一般的には思春期と呼んでいます。思春期に入ると、脳から生殖器に性ホルモンを分泌するような指令が届き、男性なら精巣、女性なら卵巣からホルモンが全身に分泌され、身体に様々な変化が起こり始めるのです。二次性徴とは、このように思春期の身体に起こる性的な変化の総称です。

第一次性徴とは、性別を決定する要素、つまり生まれてすぐわかる男女の性器にみられる特徴(精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣)のことを指し、第二次性徴は、性器以外の身体の各部分において男女の違いが現れる変化を指しています。

女性の第二次性徴の例として、乳房の発達、丸みを帯びた体つきになる、初経(初めての月経)などがあります。これらの体の変化がいきなり自分の身に起こることで、子どもたちは「これは自分の体ではない」と違和感を感じることもあるかもしれません。

特に、発達障害や知的障害(知的発達症)がある子どもの中には、突然の変化が苦手な子や、感覚過敏のため月経に生理的な嫌悪感を抱く子、それらの違和感をうまく表現できずに大きなストレスを感じてしまう子もいるでしょう。

つまり、思春期は子どもにとって身心に大きな変化と、それに伴う悩み事が生じる時期なのです。

次の章では、発達障害の女の子にとって思春期がどのような時期なのかを説明していきます。
参考:野口忠/著『栄養・生化学辞典』(朝倉書店)2011年
https://www.amazon.co.jp/dp/4254431120
参考:女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHP
https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_1.pdf

女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い

女の子には「隠れ発達障害」が多い?

発達障害とは、認識や行動に特性があり、社会生活に支障をきたす状態にあることを言います。女の子は、男の子と比べて特性による困り感を抱えながらも発達障害と診断されない「グレーゾーン」の子が多いとされます。特性の出方には性差があり、相対的に、目立った問題行動が少ない傾向がある女の子の発達障害は気づかれにくいのです。

性差の背景には、発達障害で課題とされる「社交的な言動」は女性のほうが得意であること、女性のADHD(注意欠如多動症)は不注意の特性が強く、ほかの多動・衝動性が目立ちにくいことが多いという理由があります。なぜかというと、周囲への攻撃や発散といった形で特性が現れる多動・衝動性と違い、不注意は「わすれんぼうな子」「ボーっとしている子」と本人の性格だと解釈されるため、問題なりにくいと考えられています。

女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い

このように、発達障害があることを見過ごされていた女の子でも、思春期に入るとその特性が目立つ場面が増えます。成長とともに変化する人間関係についていけなくなったり、周りとの違いが明らかになったりするのです。例えば、女の子同士の仲良しグループや、男女の役割分担など、暗黙の了解が必要なコミュニケーションなどで混乱してしまうことがあります。

さらに、この時期は自意識が芽生える時期でもあるため、それまで自分の特性に自覚がない子でも、自らの特性が気になり、悩むようになることもあるでしょう。

思春期という、自意識を育みながら成長する時期に他者との違いによって責められ、傷つく経験を重ねたり、特性に合った支援を受けられなかったりすると、症状の悪化や二次障害に繋がってしまいます。

次の章からは、思春期に起こる具体的な変化と、発達障害の女の子ならではの注意点や対処方法を説明していきます。
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思春期の女の子に起こる体の変化とは

思春期に入ると、脳が生殖器にホルモンを出すよう指令を出し、生殖器が分泌した女性ホルモンが全身を巡ることで、女性らしい体への変化(第二次性徴)が起こります。

では、具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか。

具体的な変化

具体的には、以下のような変化が起こります。変化が起こる順番や、その程度は人それぞれです。

・乳房が膨らむ
・丸みを帯びた体つきになる
・陰毛、わき毛が生える
・初経が起こる(後述)
・外性器・内性器(子宮・卵巣・腟・外陰部)が発達する
女性アスリート指導者のためのハンドブック「発育・発達について」│国立スポーツ科学センターHP
https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_1.pdf
このような変化を受け、女の子の身体は大人に近づいていきます。皮下脂肪の増加によって疲れやすく眠くなりやすくなる、生理に伴う体調不良など、変化と共に訪れる不調や困りごとがあります。

これからは、体の成長に伴う発達障害の女の子ならではの困りごとと、その対処法を紹介します。

体の変化自体にストレスを感じる

思春期は”第二の誕生”と呼ばれるくらい、体に大きな変化が訪れます。この変化は、大人になる過程での自然な出来事ですが、大きな変化に戸惑いを覚える子どもたちも少なくないようです。特に、特性がある女の子は急な変化が苦手なため、強いストレスを感じることがあります。

また、身体つきの変化に伴い、日常で行うべき事柄が増えることも精神的負担になりえます。たとえば、ブラジャーを着ける、生理ナプキンを取り替える、などです。これらのことを事前によく知らずに変化を迎えた場合、対応が遅れ、拒否感や苦手意識に繋がることもあります。

さらに、感覚過敏が原因でブラジャーのワイヤーで締めつけられる感覚を不快に感じる、不器用さゆえにホックを上手に閉められない、などの困りごとも考えられるでしょう。

■事前準備で見通し不安を解決!
見通し不安がある子には、前もってこれから起こる変化の内容を伝えておきましょう。特性がある子どもたちは、いきなり変化する身体への違和感や、異常なのではないかという不安を感じています。

親しい立場にある大人の女性が、体の変化は自然の流れであること、順調な成長の証であることを伝えておきましょう。さらに「胸が膨らむ」「おりものがでる」「初経は茶・黒っぽい血が少しパンツにつく」など、変化の内容を具体的に説明できると、よりイメージを持ちやすくなります。

■子どもの感覚にあった下着を選ぶ
ワイヤー入りのブラジャーに違和感を感じる場合、ワイヤレスのブラジャーやカップつきキャミソールを試してみましょう。比較的締めつけ感が少ないため、ストレスを減らすことが期待できます。

不器用でホックが上手に扱えない場合は、シームレスタイプのブラジャーがおすすめです。また、母親や姉妹など、身近にいる女性が実際に着けるところを見せたり、いっしょに練習したりすることも効果的です。

羞恥心が理解しにくいために、トラブルが起きることも

思春期は、自意識が芽生え、周囲の目を気にするようになる時期です。自分という存在を他者の視点から考えるようになるため、想像力や社会性が育まれる時期とも言えます。

発達障害がある子どもの中には、自分の言動や容姿が周囲にどのような印象を与えるのか想像をすることが苦手、または興味がない子どもがいます。

本人の悪気はなくても、周囲から「距離感が近すぎる」「はしたない」と感じられる言動をしてしまうことがあります。その結果、同性から距離を取られる、勘違いした異性による性的被害に遭う、などの問題に繋がってしまう可能性があるのです。

■「マナー」「エチケット」はルール作りで明快に!
発達障害の子は認知に特性があるため、「公共のマナー・エチケットを守りなさい」などの抽象的な注意は理解が難しいでしょう。

なぜその行動をしてはいけないのか(周りの人を嫌な思いさせたり、誤解させたりした結果、自分がトラブルに巻き込まれることがあるから、など)を説明すると同時に、してはいけない行動と、対応する行動案を合わせて示してあげましょう。

行動単位で提案されることで、判断の難しさが軽減されます。ルールの例として、次のような項目が考えられます。
・男の人に触らない…男の人と話すときは腕1本分の距離を取る。
・人前で着替えない…どうしても服を脱ぎたいときはトイレか保健室、更衣室を使う。
・人前で性器、胸を触らない…どうしてもかゆみ、違和感などで触りたいときはトイレに入る。
・人前で性的な発言をしない… 発言したいときは、おっぱい→胸などの言い換えを利用する。


子どもたちは、一つひとつ教えられるうちにパターンとして整理できるようになっていきます。根気はいりますが、ぜひ、具体的な言葉で示すことを続けてみてください。
興味から、異性を一方的にさわろうとする
異性との距離感が近すぎるのタイトル画像

「距離をとって」と言われても、どれくらいなのかわからないのかな?と感じたときは

次ページ「生理について。ナプキンの扱い方、どう教える?」

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