女の子の発達障害、思春期に起こる身体と心の変化とは?【専門家監修】
思春期は子どもから大人に移ろう時期。心身の変化に戸惑いを感じやすく、本人だけでなく、周囲の大人も戸惑い、不安な気持ちを抱くことが多くあります。思春期に起こる身体の変化は第二次性徴と言い、困りごとにも性差が出てきます。発達障害のある女の子にとって、特性による困りごとに加え、年齢ならでは、性別ならではの困りごとにも向きあい始める段階になります。
この記事では「思春期に起こる変化って?」「女の子の発達障害ならではの困りごとは?」といった、性や生理、交友関係の変化への対応などまでお伝えします。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
思春期は、子どもから大人への変化を遂げる期間
始まる時期には性差があり、女子は9歳、男子は11歳くらいです。二次性徴が始まった年齢から18歳頃までの期間を一般的には思春期と呼んでいます。思春期に入ると、脳から生殖器に性ホルモンを分泌するような指令が届き、男性なら精巣、女性なら卵巣からホルモンが全身に分泌され、身体に様々な変化が起こり始めるのです。二次性徴とは、このように思春期の身体に起こる性的な変化の総称です。
第一次性徴とは、性別を決定する要素、つまり生まれてすぐわかる男女の性器にみられる特徴(精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣)のことを指し、第二次性徴は、性器以外の身体の各部分において男女の違いが現れる変化を指しています。
女性の第二次性徴の例として、乳房の発達、丸みを帯びた体つきになる、初経(初めての月経)などがあります。これらの体の変化がいきなり自分の身に起こることで、子どもたちは「これは自分の体ではない」と違和感を感じることもあるかもしれません。
特に、発達障害や知的障害(知的発達症)がある子どもの中には、突然の変化が苦手な子や、感覚過敏のため月経に生理的な嫌悪感を抱く子、それらの違和感をうまく表現できずに大きなストレスを感じてしまう子もいるでしょう。
つまり、思春期は子どもにとって身心に大きな変化と、それに伴う悩み事が生じる時期なのです。
次の章では、発達障害の女の子にとって思春期がどのような時期なのかを説明していきます。
女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い
女の子には「隠れ発達障害」が多い?
性差の背景には、発達障害で課題とされる「社交的な言動」は女性のほうが得意であること、女性のADHD(注意欠如多動症)は不注意の特性が強く、ほかの多動・衝動性が目立ちにくいことが多いという理由があります。なぜかというと、周囲への攻撃や発散といった形で特性が現れる多動・衝動性と違い、不注意は「わすれんぼうな子」「ボーっとしている子」と本人の性格だと解釈されるため、問題なりにくいと考えられています。
女の子の発達障害は、思春期に見つかることが多い
さらに、この時期は自意識が芽生える時期でもあるため、それまで自分の特性に自覚がない子でも、自らの特性が気になり、悩むようになることもあるでしょう。
思春期という、自意識を育みながら成長する時期に他者との違いによって責められ、傷つく経験を重ねたり、特性に合った支援を受けられなかったりすると、症状の悪化や二次障害に繋がってしまいます。
次の章からは、思春期に起こる具体的な変化と、発達障害の女の子ならではの注意点や対処方法を説明していきます。
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思春期の女の子に起こる体の変化とは
では、具体的にはどのような変化が起こるのでしょうか。
具体的な変化
・乳房が膨らむ
・丸みを帯びた体つきになる
・陰毛、わき毛が生える
・初経が起こる(後述)
・外性器・内性器(子宮・卵巣・腟・外陰部)が発達する
これからは、体の成長に伴う発達障害の女の子ならではの困りごとと、その対処法を紹介します。
体の変化自体にストレスを感じる
また、身体つきの変化に伴い、日常で行うべき事柄が増えることも精神的負担になりえます。たとえば、ブラジャーを着ける、生理ナプキンを取り替える、などです。これらのことを事前によく知らずに変化を迎えた場合、対応が遅れ、拒否感や苦手意識に繋がることもあります。
さらに、感覚過敏が原因でブラジャーのワイヤーで締めつけられる感覚を不快に感じる、不器用さゆえにホックを上手に閉められない、などの困りごとも考えられるでしょう。
■事前準備で見通し不安を解決!
見通し不安がある子には、前もってこれから起こる変化の内容を伝えておきましょう。特性がある子どもたちは、いきなり変化する身体への違和感や、異常なのではないかという不安を感じています。
親しい立場にある大人の女性が、体の変化は自然の流れであること、順調な成長の証であることを伝えておきましょう。さらに「胸が膨らむ」「おりものがでる」「初経は茶・黒っぽい血が少しパンツにつく」など、変化の内容を具体的に説明できると、よりイメージを持ちやすくなります。
■子どもの感覚にあった下着を選ぶ
ワイヤー入りのブラジャーに違和感を感じる場合、ワイヤレスのブラジャーやカップつきキャミソールを試してみましょう。比較的締めつけ感が少ないため、ストレスを減らすことが期待できます。
不器用でホックが上手に扱えない場合は、シームレスタイプのブラジャーがおすすめです。また、母親や姉妹など、身近にいる女性が実際に着けるところを見せたり、いっしょに練習したりすることも効果的です。
羞恥心が理解しにくいために、トラブルが起きることも
発達障害がある子どもの中には、自分の言動や容姿が周囲にどのような印象を与えるのか想像をすることが苦手、または興味がない子どもがいます。
本人の悪気はなくても、周囲から「距離感が近すぎる」「はしたない」と感じられる言動をしてしまうことがあります。その結果、同性から距離を取られる、勘違いした異性による性的被害に遭う、などの問題に繋がってしまう可能性があるのです。
■「マナー」「エチケット」はルール作りで明快に!
発達障害の子は認知に特性があるため、「公共のマナー・エチケットを守りなさい」などの抽象的な注意は理解が難しいでしょう。
なぜその行動をしてはいけないのか(周りの人を嫌な思いさせたり、誤解させたりした結果、自分がトラブルに巻き込まれることがあるから、など)を説明すると同時に、してはいけない行動と、対応する行動案を合わせて示してあげましょう。
行動単位で提案されることで、判断の難しさが軽減されます。ルールの例として、次のような項目が考えられます。
・男の人に触らない…男の人と話すときは腕1本分の距離を取る。
・人前で着替えない…どうしても服を脱ぎたいときはトイレか保健室、更衣室を使う。
・人前で性器、胸を触らない…どうしてもかゆみ、違和感などで触りたいときはトイレに入る。
・人前で性的な発言をしない… 発言したいときは、おっぱい→胸などの言い換えを利用する。
子どもたちは、一つひとつ教えられるうちにパターンとして整理できるようになっていきます。根気はいりますが、ぜひ、具体的な言葉で示すことを続けてみてください。
「距離をとって」と言われても、どれくらいなのかわからないのかな?と感じたときは
生理について。ナプキンの扱い方、どう教える?
生理(月経)とは
初経が起きる前触れとして、体の変化があります。急に身長が大きくなったり、胸が膨らみ始めたりしたら、いつ初経が来てもいいよう生理について説明し、生理用ショーツやナプキンを携帯させておくと安心です。
月経周期とは、月経初日から次の月経の前日までの日数を指します。25~38日が正常範囲ですが、思春期には多少のずれがあり、毎回周期がちがっていても心配する必要はありません。特に、初経を迎えてからしばらくは乱れがちなことが多く、周期が安定するには数年かかると言われています。
月経周期を把握すると、生理と関連した不調の存在を知ることに繋がります。生理に関連した不調では、月経前症候群(premenstrual syndrome)が代表的です。この症状は略してPMSと呼ばれ、月経開始の3~10日ぐらい前から始まる精神的・身体的な不調の総称です。
身体的な症状として、乳房が張る、痛む、乳首が敏感になる、頭痛、肩こり、腰痛、下痢、ニキビ、肌あれなど、不快感を伴う変化が起こります。
精神的な症状としては、イライラ、憂うつ感、不眠、眠気、過食などがあります。
このように、生理に関係して女の子の体はとてもデリケートに変わります。特に、発達障害の女の子は、特性によって独特な困りごとを感じることがあるのです。以下では、生理に関係する困りごとと、対処法を説明します。
生理特有の不快感を強く感じやすい
■生理用品を工夫して少しでも快適に
蒸れやかぶれに対しては、蒸れを軽減する生理用品(サニタリーショーツや布ナプキン、月経カップ、タンポンなど)を利用したり、こまめなナプキン交換を習慣化する、などで対処しましょう。かぶれが気になるときには、婦人科などで薬を処方してもらうことも可能です。
ナプキンを上手につけられない
■視覚的なイメージに訴える
手順を知るには、周囲の大人の女性が実際につけ替えする場面を見せてあげることが一番効果があるでしょう。他にも、絵や図を使って視覚的なイメージに働きかける方法も効果的です。
■不器用さはつけ方の工夫で解決!
不器用でつけられない子どもには、比較的手順が単純な羽根なしのナプキンや、家でナプキンを2枚重ねにしておき、外でははがす手間を省く、などの方法が考えられます。
ナプキンのつけ替えを忘れがち
ナプキンをつけている下着の中は湿気がこもっていて雑菌が繁殖しやすく、皮膚炎や感染症につながる場合があります。
■「交換するタイミング」をルール化しよう
ナプキンを交換するタイミングをルールとして決めましょう。「1時間目、お昼休み、4時間目が終わった時に変える」など、具体的なタイミングを指定されているほうが意識しやすいでしょう。
ホルモンバランスによる体調の変化の影響を受けやすい
■生活リズムを整える
ホルモンバランスを安定させるためには、規則正しい生活が必要です。そのため、起床・食事・入浴・就寝など、1日の中での出来事を同じ時間に行うように心がけましょう。
■月経周期を記録する
周期の乱れを判断する目安として前後およそ1週間ほどのズレが続くようでしたら、産婦人科に相談してみましょう。この時、生理周期の記録を持っていくと医師が状況を把握しやすくなります。
生理周期の記録の仕方としては、大人のサポートのもと生理開始日終了日にカレンダーにシールを貼る、生理日予測アプリを使う、などがおすすめです。
自身の月経周期を把握すると、月経周期に伴う体調の揺らぎのリズムをつかめます。体調不良が起きやすい時期に入ったら、激しい運動や夜更かしを控える、温かい食べ物を意識的にとるなど、自身の症状にあったPMSとの付き合い方を見つけていきましょう。
どうしてもつらいときは、低用量ピルという薬で症状を和らげることも可能です。気になるときは婦人科に相談してみましょう。
■体調が悪い時は無理をしない
生理に関係する体調不良は、精神状態に大きな影響を受けます。さらに、思春期の発達障害の女の子にとって、集団生活によるストレスや身体の変化に対する違和感から、より精神に負担がかかりやすい時期だと言えます。
そのため、本人がつらいと感じているときは無理強いせずに、休ませることも大切です。
発達障害の女の子にとって、思春期はなぜつらい?心に起こる困りごとにはどんなものがある?
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思春期、心の変化との付き合い方
その変化は、急激で、個人差があるため理解が難しく、本人も家族も戸惑ってしまいます。また、困った言動が思春期特有のものなのか、特性によるものなのかの判断がつかず、対応が難しいと感じることもあるでしょう。
この時期の環境とのかかわり方は、精神の健全な発達や、自己肯定感の向上に強く結びつきます。思春期ならではの心の問題が適切に対処され、子どもにとって成長機会となることを目指しましょう。
では、思春期の心の変化に伴って起こりうる困りごとにはどのようなものがあるのでしょうか。
反抗的、衝動的になる・強い不安を感じる
また、もともとの特性であった衝動性や多動性が強化され、いきなり激情的な言動を見せるようになることがあります。
さらには、成長による心境の変化や沸き起こる衝動などの感情を発散する術や場面がないことも、この時期の発達障害の子にとっては大きな問題と言えるでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の子の中には、この時期特有の興味関心や反抗的な感情、将来への不安といった複雑な感情を認識・表現することが苦手な子がいます。そのため、自分の中でため込みすぎて根強いストレス感情を持ったり、無気力感を抱いたりして、問題の悪化を招きかねません。
■感情の流れを親子で整理しよう
「どんな時に怒鳴ってしまうのか」「何に対して不安を感じるのか」など、漠然とした感情の流れを整理する手伝いをしましょう。問題行動を起こしてしまう場面や漠然とした不安感情の中身を紙に書き出すことで、行動以前にできる手立てはないのかを探ったり、感情の具体化によって不安感情を和らげたりできます。
■ADHD(注意欠如多動症)の場合は薬物療法による支援も視野に
ADHDは薬の効果が出やすい症状です。合う合わないは個人差がありますが、本人の力や周りの環境調整ではどうしようもない時は、医師の指導のもと、薬物療法による支援も選択肢のひとつとなります。
■興味関心を頭ごなしに否定しない
この時期の子どもたちは、様々な事柄に興味を持ち、試してみたい衝動を持っています。大人から見ると、不釣合いであったり、滑稽に思えたりすることもあるかもしれません。
けれども、そのような多方面への興味関心はアイデンティティの確立において重要な役割を果たしています。見守ることが子どもの長い目で見た子供の成長につながるでしょう。
コミュニケーションが複雑化する
特に女の子は仲良しグループの意識が強く「ガールズトーク」といった、自分たちにしかわからない、かつ、話題がどんどん切り替わる話を楽しむようになるのですが、特性がある女の子は空気を読んだり、人の気持ちを考えることが苦手なため、意図せず周囲を傷つけるような発言をして孤立してしまうことがあるのです。
また、人の評価や目線に敏感になる思春期に、失敗経験や叱責を積み重ねることで自己肯定感さがり、困りごとの悪化や人付き合いへのトラウマ、二次障害に繋がることもあります。
■社交性が苦手なのを認め、無理させない
友達づきあいや集団行動ができなくても大丈夫、と伝えましょう。人付き合いで困った場面を上記の方法で整理してみましょう。
■専門家の力を借りる
家族だけではどうしても解決が難しいこともあるでしょう。学校のカウンセラーや医師、臨床心理士などの専門家に頼って人付き合いの方法を勉強することも一つの手段です。
女の子の性の問題に向き合う
以下では、発達障害がある女の子が注意すべき、性にまつわる問題と対処法を紹介します。
性的被害の標的になりやすい
このような問題を防ぐために、不用意な性交渉による影響を教えましょう。性交渉の意味、仲良くすることとは違うことをしっかり説明し、性交渉によって起こる性感染症や不本意な妊娠のリスクを伝えてください。
そして、性交渉を求める男性の言葉や態度、断り方、避妊についても具体的に説明できるとよいでしょう。
不用意な性交渉をしがち
こういった場合、なぜだめなのかを説明するよりもルールとして教えたほうが理解しやすくなります。言葉で伝えるだけでなく、文字に起こしたり、図で示すとよりイメージが付きやすい場合もあります。
例えば、男の子に触らない、話すときは腕一本分の距離をとる、知らない人と話さない、メールアドレスや名前、電話番号を安易に教えない、個人情報をネットに書き込まない、などのルールを決めたり、目安となる距離感を描いた絵を見せる、といった方法があります。
恋愛・異性関係に関するトラブルも
こういった特性が、異性との近すぎる距離感や、自分や他者の恋愛について気軽に話してしまう、同性と異性での行動の区別がつけられないといった、恋愛にまつわる人間関係のトラブルにつながる場合があるのです。
また、衝動性があるADHD(注意欠如多動症)の女の子は好きな異性に近づきすぎたり、場面を気にせず「好き」と言ってしまう、などの行動を起こしてしまうことがあります。
このようなトラブルが見られる場合、本人は性的知識の不足や概念的な物事を理解することの難しさを抱えています。そのため、周囲の大人が場面ごとにどうすべきかを、一つひとつ説明し、理解してもらう必要があります。
家庭が、子どもにとって分からないことがあるとき、トラブルが起こったときにすぐ相談できる場であるために、普段から恋愛や性のことについて話合う機会を持っておくとよいでしょう。
まとめ
お子さんに次々と起こる変化に向き合うことは根気が必要です。ですが、不安定な時期だからこそ、お子さんの特性についてより深く理解し、一緒に困りごとを解決していくチャンスでもあります。
家族で話し合いながら、あまり悲観的になりすぎずに、一つひとつ乗り越えていきましょう。
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