ウエスト症候群(点頭てんかん)とは?気になる症状や治療法、予後を詳しく解説します【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
ウエスト症候群は、「生後数ヶ月で発症する可能性がある難治性てんかんの一つ」です。頭がカクンとうなずく動作を伴うことから、「点頭てんかん」とも呼ばれています。難治性と言われると思わずドキッとしてしまう方もいると思いますが、早期発見・治療をすれば、予後はだいぶ良い方向に変わっていきます。この記事では、ウエスト症候群かどうかの見分け方や、どんな症状が現れるのか、検査方法や治療法、発達に与える影響などについてわかりやすく解説します。
監修: 伊藤進
東京女子医科大学病院 小児科 准講師
東京女子医科大学病院 小児科の准講師。
てんかん専門医指導医であり、小児神経専門医、博士(医学)の資格を持っている。
ウエスト(West)症候群とは
ウエスト(West)症候群は「点頭てんかん」とも呼ばれ、多くは1歳未満(生後3ヶ月~8ヶ月がピーク)に発症します。右脳と左脳が同時に興奮状態に巻き込まれる全般発作に分類されます。精神運動発達の退行(※)をきたすてんかん症候群で、難病指定もされています。
脳波が全体として「バラバラで混とんとした」波形になるのも全般てんかんであるウエスト症候群の大きな特徴の一つで、発症率は、出生数 1,000人に対して 0.16~0.42人と言われています。
(※)習得した精神的・運動的技能ができなくなってしまうこと
脳波が全体として「バラバラで混とんとした」波形になるのも全般てんかんであるウエスト症候群の大きな特徴の一つで、発症率は、出生数 1,000人に対して 0.16~0.42人と言われています。
(※)習得した精神的・運動的技能ができなくなってしまうこと
なぜ点頭てんかんと呼ばれるのか
ウエスト症候群は「点頭てんかん」とも呼ばれていますが、「点頭」と言う言葉は「うなずく」と言う意味があり、首の屈曲がうなずくような動きに見えるためです。
原因はあるの?
ウエスト症候群の原因は、検査を行っても原因の特定が難しい潜因性のものと、何かしらの疾患などの原因が考えられる症候性のものがあります。原因と考えられる基礎疾患としては、脳形成異常、低酸素性虚血性脳症、外傷後脳損傷、脳腫瘍、代謝異常、染色体異常、先天奇形症候群、遺伝子異常などが挙げられます。
しかし、潜因性のてんかんと症候性のてんかんに共通するはっきりとした病態は、まだ見出されていないのが現実です。
しかし、潜因性のてんかんと症候性のてんかんに共通するはっきりとした病態は、まだ見出されていないのが現実です。
潜因性と症候性との違い
さて、潜因性と症候性とはなんでしょうか。潜因性は、非症候性ともいわれ、基礎疾患やその他の神経学的な兆候および症状がみられません。それに対して症候性は、生まれる前あるいは出生直後に起こった脳障害の合併症が原因となって起こるものです。
治療効果や予後も、潜因性か症候性かで大きく変わってきますが、症候性のほうが予後が悪く、レノックス・ガストー症候群というてんかんに移行していく場合もあります。
治療効果や予後も、潜因性か症候性かで大きく変わってきますが、症候性のほうが予後が悪く、レノックス・ガストー症候群というてんかんに移行していく場合もあります。
ウエスト症候群の症状は?
ウエスト症候群の様子や、どんなときに起こりやすいかなどを知っておけば、「この動きはもしかしたら?」と見逃すことなく、早期発見につながるかもしれません。前述したように、ウエスト症候群かもしれないと思ったら、なるべく早く小児科を受診しましょう。
発作の様子は?
頭をカクンと前屈させ、上下肢をビクンと振り上げる動作など、両側対称性の四肢・体幹のけいれん発作を、数秒間隔で繰り返します。繰り返し起こることを「シリーズ形成」とよびます。
どのくらいの頻度で起きる?
このウエスト症候群のシリーズ発作は0.2~2秒程度の短い発作が数秒間隔で、20~40回ほど繰り返されるのが特徴です。多い時には、100回以上繰り返されることもあります。シリーズ発作は1日に10回以上起こることもあります。
どんなときに起こりやすい?
子どもによって違いはありますが、寝起きや寝入りに起こりやすいといわれています。
できていたことができなくなる
発達とともに取得した精神的および運動的技能ができなくなる「退行」も、ウエスト症候群の特徴のひとつです。たとえば、お座りができていたのにできなくなった、単語を言えていたのに言わなくなった、など。「あれ?最近〇〇ができなくなったな」と思ったら、赤ちゃんの様子をしっかり観察してあげましょう。