ウエスト症候群の動きかも? と思ったら親がすること

「子どもが頭をカクンとさせるんだけど、なんだろう?」、「この動きはもしかしたらウエスト症候群?」生後数ヶ月の赤ちゃんの小さな動き、気になってもそれがなんなのか、迷いますよね。こんなふうに迷ったとき、保護者はいったいどうすればいいのでしょうか。

少しでも「この動きは?」と思ったらかかりつけの小児科へ

「たぶんこの動きはなんでもないな」などと判断したり、放っておいたりしないで、まずはかかりつけの小児科に行きましょう。そして、動きのほかにも「首がすわっていたのに、最近すわりにくくなってきた気がする」、「お座りができていたのに、できなくなった」など、少しでも気になることはすべて伝えることが大切です。

保護者が伝えたことすべてが、ウエスト症候群かそうではないかの、大切な判断材料にもなるのです。

発作時の動画を撮る

親が見たことや気になったことを伝えることももちろん大切ですが、どうしても偏ったものになったりあいまいなものになってしまう場合も多いので、客観的に見ることができる「動画」を撮って持っていくことをおすすめします。

その場合、「寝入るときに撮った」、「寝起きに撮った」など、そのときの状況を伝えることも忘れないようにしましょう。

すぐ救急車を呼ぶ必要はない

「この動作はウエスト症候群かな?」と思ったら、抱きしめたり大声で名前を呼んだりせず、まず落ち着いて様子を見ましょう。

てんかんかな?と思ったら動揺したり焦ってしまいがちですが、全身のけいれんが長く続くことがなければ、救急車を呼んですぐ病院へ搬送!という必要はありません。もちろん早期発見が大切なてんかんですが、一度起きたからすぐに命にかかわる、脳へ甚大な影響があるというものではありません。とにかく、しっかりと様子を観察しましょう。

モロー反射との見分け方はある?

モロー反射とは、赤ちゃんの原始反射のひとつで、大きな音を聞いたときなどにビックリして起こる動作です。指を広げて腕を伸ばし、何かに抱きつくような動きが特徴です。

一見すると、ウエスト症候群とモロー反射の動きはとても似ているので、判断するのは難しいのです。

モロー反射の特徴としては、音などのきっかけによりビクッとなったり、寝ている時にビクッとなったりします。それに対して、ウエスト症候群の発作は、寝起きや寝入り前の目が覚めている時に起こることが多く、発作時も無表情でビクッとするだけでなく、頭をカクンと前に倒すという特徴があります。

ウエスト症候群を診断するための検査

「ウエスト症候群の可能性がある」と言われ、診断されるまでには、いったいどんな検査をするのでしょうか。まだ生後間もない小さな赤ちゃんを検査するとなると、不安になってしまうかもしれませんが、検査内容や具体的な方法を知ることで不安も軽減されると思います。

脳波

ウエスト症候群は脳波に高振幅の徐波と棘波・鋭波(点頭てんかん特有の異常脳波でヒプサリズミアという)が不規則に出現し、全体的にバラバラと混とんとした状態になるのが特徴で、脳波は最も大きな判断材料と言えます。

「こんなに小さいのに、脳波なんてとれるの?」と心配になるかもしれませんが、人体への影響が少ない「トリクロリールシロップ」などの睡眠導入剤を使って、眠らせた状態でとることができます。

頭部画像検査

ウエスト症候群が、脳形成異常や脳室周囲白質軟化症(側脳室周囲白質に局所的な虚血性壊死による多発性軟化病巣ができる疾患、早産児や低体重児に多くみられる)が原因となっている場合もあるため、頭部CTやMRIの検査を行い、基礎疾患がないかをくわしく調べます。

原因がはっきりすれば、有効なアプローチ方法を見つけられる可能性が高くなるのです。

ウエスト症候群の治療法は

ウエスト症候群は難治性のてんかんです。ウエスト症候群だと診断されると、不安が先に立ちますが、有効な治療法はいくつかあります。決して心配しすぎず、赤ちゃんのためにも早期治療に取り組んでほしいと思います。治療法にはどんなものがあるのか、どんな効果があるのかなど詳しく解説していきます。

ビタミンB6や従来の抗てんかん薬の投与

ウエスト症候群の治療法として、まずはビタミンB6やバルプロ酸などの抗てんかん薬を1~2週間程度投与して様子をみることもあります。それでも効果がみられない場合は、すぐにACTH療法に移行します。

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)による短期集中治療

ウエスト症候群の最も有効な治療法として、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)投与があげられます。日本では、作用時間の長い人工合成ACTH製剤であるコートロシンZが使われて、太もも(左右交互)に注射投与します。

一般的には、最初の2週間程度は毎日投与(この過程で発作が消失または激減する効果が表れ始める)し、効果があれば徐々に投与回数を減らしていき、効果がなければ3~4週間程度まで毎日投与を延長し、その後に投与回数を減らしていきます。基本的には入院が必要な治療です。

副作用として、ムーンフェイス、高血圧、電解質異常、易感染性などがありますが、それも含めて量や投与方法などをコントロールしながら治療を進めます。

日本てんかん学会では、ACTHについて下記のようなガイドラインを作成しています。
1.West症候群の治療に最も有効なのは、ACTHである。
2.ACTHの最適投与量、投与方法、期間については十分なエビデンスがないが、副作用を軽減するために、可能な限り少量、短期間の投与が推奨される。
3.ACTHは、West 症候群発症後出来るだけ早く使用すべきである。非症候性 West症候群については、1か月以内が望ましい。
4.ACTH治療中は、副作用をモニターし治療する。重篤な副作用が出現した場合は、ACTHを中止する。
5.他の療法をACTH治療前に行う場合は、2 週間以内に効果判定を行い、無効であればACTH療法を行うのが望ましい。
出典:https://square.umin.ac.jp/jes/pdf/uest-guide.pdf

ビガバトリンの服用

ACTH療法が有効でなかった場合、第二選択としてビガバトリンを使用します。1989年に英国で抗てんかん薬として最初に承認され、英国ではウエスト症候群の第一選択薬のひとつに位置づけられていますが、日本では視野狭窄の副作用があるため、遅れること2016年3月に承認されました。

ACTHより効果が弱いとされていますが、ACTHに反応しない、あるいはACTHでいったん発作が消失したものの再発してしまったという場合でも有効な可能性があります。また、結節性硬化症をともなうウエスト症候群にも高い効果を発揮します。
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結節性硬化症とは?症状や原因、診断基準、治療法、医療費の助成などの支援まで詳しく紹介!

食事療法

上記の投薬・服薬の治療法のほかにも、ケトン食という食事療法があります。脂肪が多く、炭水化物(糖質)が少ない食事で、脂肪、たんぱく質、糖質・炭水化物の比率を一定になるように毎食計算します。まだ乳幼児のため、特殊専用ミルクも併用しながら医師と栄養師の管理のもとで実施します。

1921年から使われていますが1995年以降にはアメリカで急速に普及し、ケトン食療法に関する研究報告は飛躍的に増加しています。ウエスト症候群をはじめ、さまざまなタイプのてんかんに有効である可能性があり、発作頻度が半分以下になるという報告も多くあります。
次ページ「ウエスト症候群の予後は」

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