息子の「もう言わないで」は成長の証だった!パニックを防ぐための事前予告が、いつしか逆効果に…!?

ライター:林真紀
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発達障害のある子は想定外のハプニングを嫌うことが多いと思います。パニックになることを防ぐために、「事前予告」は欠かせません。けれども、ある日を境に私は息子に予告するのをやめることにしました。というのも別のマイナス要因のほうが大きくなってしまったため。しかし、それは息子の成長の証でもあったのです。

「事前予告」によって得た自信

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発達障害のある子どもを育てるうえで、「事前予告」の大切さは何度となく言われてきました。普段と違うことをする場合は、まず「事前予告」。見通しを立てることによって、想定外の出来事でパニックになるという最悪の事態は防ぐことができます。

わが家の息子は自閉症スペクトラム障害とADHDがあると3歳のときに診断されました。言葉がまだしっかりと理解できない幼少期は、絵カードをつくって見せることで見通しを持たせるようにしていました。言語能力がついてきたら、言葉で予定を事細かに説明したものです。おかげで、息子は普段と違う状況であっても、パニックを起こすことがなくなりました。

パニックを起こさずに過ごせることを積み重ねたことによって、息子は着実に自信をつけていきました。やがて、突然予定と違うことが生じても、息子はそれほど動揺することなく、取り組むことができるようになってきました。「事前予告」を積み重ねていくうちに、息子も成長したのです。

しかし、その成長は、思わぬ余波をもたらすことに…。「事前予告」をすることがかえって息子のQOL(Quality of Life)を落としてしまう傾向が見え始め、私は愕然としたのです。

成長と共に鍛えられていく「想像力」で思わぬ方向に…

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今思えば、幼少期というのはまだまだ知っている世界が狭く、人間関係も表面的で、何かに対する想像力もかなり限られたものだったのかもしれません。想像力が限られているからこそ、想定外の出来事が起きたときに、パニックになってしまったということも考えられます。

息子はさまざまな経験をし、何かに取り組む自信をつけていくと共に、その積み重ねた経験によって先のことを想像する力もついてきました。やがて、自らの想像力が生み出す「不安」に翻弄されるようになります。これは、私にとって予想もしてない「副産物」でした。

息子がパニックを起こさないように事前予告をすると、息子は「うんうん、分かった、頑張るよ」と言うのですが、次第に想像力が暴走し、不安で身動きができなくなっていくのです。

「もしかしたらこうなるかもしれない」
「こうなったらどうしたらいい?」
「やっぱ無理かも」
「怖い」

さまざまな想像に絡めとられ、うまくいかないイメージばかりが頭に浮かぶようになってしまいました。

息子の自信をつけるために必要不可欠だった「事前予告」だったのに、今度は彼の生活が不安でぐちゃぐちゃになってしまいました。こんなにQOLを落としてまで「事前予告」をする必要があるのか…。私は本来の目的から結果がかけ離れてしまったことに迷いが生まれてきました。

息子の申し出、そして先生から言われた「成長の証」

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そんなある日、息子が私にこんなことを言ってきたのです。

「前々から言われると不安になっちゃうから、何があるとかもう言わないで。いきなりだったとしても、僕はちゃんとできるから」

息子の言葉を聞いて、私は療育の先生に「事前予告」をやめることを相談してみました。そのとき、療育の先生がこう言ったのです。

先のことに対する想像力がついたんですよ。これは、成長の証なんですよね。想定外の出来事でパニックになることを防ぐために事前予告をしてきたけど、それはもう起きないってこと、本人も分かっているはずです。だからこそ、もう言わないでって言ったんじゃないでしょうか。これからは伝えなくていいと思います」

私はこれを聞いて、通り一遍な"発達障害のある子どもへの接し方"ではなく、息子の成長をしっかりと見ながら、息子に合った接し方を考えていかなければならないのだと思い知らされました。発達障害の特性が一人ひとり全く違うのと同じように、成長の仕方も、それに応じて取るべき対処法も、きっと一人ひとり違うのです。

「事前予告」にこだわっていた私の気持ちが、この時、一気に緩んだのでした。そしてまた、息子は着実に成長しているのだと、嬉しく思ったのでした。
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