受け入れてくれる人もいると知った息子、「またみんなに会いたい!」

不登校の息子の心を溶かしたのは、逃げても隠れても名前を呼び続けてくれた友達の存在の画像
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つい先日、息子と一緒に近所の公園横を通りかかったときのこと。その日は短縮授業だったのか、普段より早い時間から、子どもたちの姿で公園は賑わっていた。

「あ、ハルくん。ハルくんだよね?」
清掃班が一緒だったことがある、という上級生の女の子が声をかけてくれた。それを皮切りに
「ほんとだ、ハルくんだ!」「え?ハルくん?」「わ!ハルくん!」
と、その場にいた子たちが口々に息子の名前を呼びながら、どんどん集まってきた。中にはいつも一緒に下校していた、仲良しのクラスメイトの顔も。

「ハルくん、今はどこの学校に通ってるの?」
クラス外の子は、息子が別の学校に転校したのかと思っていたらしい。
「家で勉強してる。ドリルとか、ゲーム機の学習ソフトを使って」
息子が答えると、
「ねぇねぇ、勉強するなら学校に来てよ!」
と、さっきのクラスメイトの男の子が後方から手を振った。

「ずっとハルくんに会いたかったんだ!学校にはいつ戻ってくるの?」
「うーん、分かんない」
その場にいた児童さんたちの質問に答える形で、息子はしばらく会話を続けた。用事がある私たちはその場を一旦離れなくてはならなかったのだけれど、彼らが息子を好いてくれていること、息子も彼らを慕わしく感じていることは伝わってきた。しかし、「学校にはいつ戻ってくるの?」という質問があったし、帰りはこの道を通りたくないかな…と私は思っていた。

しかし息子は
「帰りもここを通っていい?またみんなに会いたい!」
と願うではないか。みんなの好意的な様子が嬉しかったに違いない。

「うん、もちろん。じゃあ、急いで用事を済ませてこようか」

そして復路に公園近くまで来ると、彼らが別の公園へと移動している様子が見えた。
「のん(私の呼び名)、あのさ、一旦帰ったら、みんなのところへ行ってもいい?」
「いいよ。一旦帰らなくてもいいよ。みんながまた別の場所に行っちゃう前に、行っといで!」
私が背中をポンと叩くと、息子は勢いがついたように走りだした。
「行ってきまーす!!」

向こうの公園の入口で、
「ハルくん!」「やったぁ、ハルくんだ!」
と歓迎してくれる児童さんたちと、
「ねぇ、仲間に入れてよ!」
と声を弾ませる息子の姿が見えた。

昼間の居場所の違いを断絶の理由にしなくてもいい

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繰り返すが、息子はいじめなどの理由で不登校になったわけではない。

「誰かが悪いことをしていても、それをしたいという人が多いと、みんなそっちに味方してたり、あっさり考えを変える人がたくさんいるのが嫌」
「男子と女子が仲良くしているだけでラブラブだとか言って、囃し立てるのが理解できないし、バカバカしい」
「頭のいい人や運動ができる人が羨ましいからって、自分よりそれができない人をバカにして、勝った気になる人を見るのが悲しい」

というような、いわゆる「小学生あるある」が苦痛だった部分はあるようだが、どうしても会いたくない誰かがいたという訴えはなかった。むしろ、顔を合わせて話したり、遊びたい相手だっていただろう。だから、学校にはいかないと決断したその胸の内は、実のところ複雑だったのかもしれない。

不登校という選択をする児童や生徒と一口に言っても、タイプはさまざまあるだろう。人間関係を築くことが苦手な子もいれば、単に同世代の子どもたちの雰囲気になじめないという子もいる。息子はそのどちらでもない。

精神状態が悪化したときは、「学校にはいつ来るの?」という問いに答えられない自分が、彼らと断絶されているような感覚もあっただろう。「でもそれは親愛の情があるからこその疑問である」ということを思い出させてくれたのは、逃げようが隠れようが息子の名前を呼び続けてくれたSくんのおかげだと、私は思っている。彼の根気強い働きかけがあったからこそ、息子は人と関わる自信を取り戻せたのだろう。

学童期はどうしても、友達というと同じ学校で過ごす仲間に偏ってしまう。だからといって、同じ学校で過ごしていなければ友達でいられないわけではない。今、昼間の居場所の違いが断絶にならない関係を、息子たちは築いている。学校に行かない息子を受け入れたうえで仲良くしてくれるSくん含む仲間たちに深く感謝しつつ、彼らの柔軟さに私は感心しきりだ。

あの日、公園へと駆けていった息子は、みんなと「ごく普通に」遊んできたそうだ。ベランダ越しにSくんと呼びかけ合う習慣も続いている。まだ小学3年生。友達の顔ぶれも入れ替わっていくかもしれない。例えそうだとしても、これからも息子が自分なりの人との関わり合いを見つけていってほしいと願う。
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「発達障害は理解されなくて当たり前」じゃない!?不登校を続ける息子の学校からの提案で、気づいたこと

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