ルールは絶対!教えに忠実すぎる息子だから向き合いたい、良い悪いの伝え方

ライター:林真紀
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発達障害の息子を育てるにあたって、「好ましい行動」と、そうではない行動を分かりやすく教えてきました。息子は、それを忠実に守ります。だからこそ、息子には「好ましくない行動」に、情状酌量の余地はありません。自分だけでなく、周囲に対してもダメなものはダメ、になります。そんな息子に、私は多くのことを気づかされました。

私が息子に教えてきたこと

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発達障害の息子のソーシャルスキルの獲得にあたって、好ましい行動と好ましくない行動を分かりやすく伝えることは、とても大切です。さらに、好ましくない行動については、好ましい行動を代わりに提示してあげることが不可欠です。

例えば、「お友達を叩く」というのは「好ましくない行動」のひとつです。私は、なぜそれが好ましくない行動なのかを説明し、「叩きたくなったら、そのお友達から少し距離を取って、クールダウンの時間を設けようね」といったように「代わりの好ましい行動」を教えました。その結果、息子のソーシャルスキルの力は、かなり伸びたように思います。

けれども、息子の場合は「好ましくない行動」とインプットされた行動は絶対にやらない律儀さがあります。「好ましくない行動」については、本人の中で「ダメなものはダメ」となり、融通が利きません。ですから、何でもかんでも「好ましくない行動」としてインプットさせることは、息子にとってむしろマイナスになります。

「好ましい行動」や「好ましくない行動」を教える場合は、さじ加減の見極めが必要。

実はこの感想は、私のある失敗経験が基になっています。それは1年前。息子を近所の公園に連れていったときにさかのぼります。

お母さんの嘘つき!衝撃の言葉

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1年前、私はいつものように息子を近隣の公園に連れていきました。そのころ、息子がハマっていたのは砂場での砂遊び。造形や工作が好きな息子は、ちょっと水を加えてベトベトした砂をこねて、お城や恐竜などを時間をかけて作り上げます。こういうときの息子の集中力はなかなかのもの。そして、出来上がりもなかなかのもの。息子は時間を忘れて砂場での「作品」作りにいそしんでいました。

ところが、ここで思ってもみない事件が起きるのです。

1歳ぐらいの女の子でしょうか。まだ歩き方もヨタヨタしています。その子が、突然砂場に突進してきたと思ったら、息子の何時間もかけて作った作品を、スコップで掘り返し、あっという間に壊してしまったのです。その子のお母さんが後ろから走ってきましたが、間に合いませんでした。

「うわああああ、やめて!!やめて!!」

パニックになる息子を横目に、その子はまた息子の作品を壊していきます。私は咄嗟にその子の手を掴み、「ご、ごめんねっ!お兄ちゃん、一生懸命作ったものだからさ、壊さないであげて…!」と止めました。しかし、時すでに遅し。息子は久々に見るほどの激しい癇癪を起こしました。

「何時間かかったと思ってるんだ!!俺が一生懸命作ったのに!!なんてことするんだ!!!うわあああああ」

息子は、砂場に突っ伏して大泣きです。砂まみれになって、泣き叫びます。

ところが、かけつけた女の子のお母さんは、こう言ったのです。

「こっちはまだ赤ちゃんなのにね…。そんなに泣かなくても…」

私は一瞬ムッとしましたが、確かにおかしな光景だったのかもしれません。小さな赤ちゃんのいたずらに、大きな小学生の男の子が大泣きしている…。普通だったら「まあ赤ちゃんのしたことだしね」という感じで、おさまる話なのかもしれません。

「情状酌量」は通じない。だからこそ…

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癇癪を起こしてその場に突っ伏して泣きわめく息子に、私は思わずこう言ってしまいました。

「悔しいよね。でもさ、相手はまだ赤ちゃんだからさ…」

すると息子は、大泣きしながらこう言ったのです。

「お母さんは、人が作ったものを壊しちゃダメって言った!!!誰が何歳とか関係ない!!!お母さんは、なぜあの赤ちゃんを叱らないんだ!!」

息子がこう言うのを聞いて、私はハッとしました。そうです、息子はこれまで、私や学校の先生に教えられた「好ましい行動」と「好ましくない行動」を一生懸命インプットしてきたのです。そこに、年齢とか、状況とか、「情状酌量」をすることなど、できないのです。逆に、「情状酌量」を求めるのは、私たち大人のエゴでしかありません。息子は十分、頑張っていたのです。

私は息子の言葉に、胸がいっぱいになりました。そして今は、「自分より小さい子なんだから許してあげなければならない」というようなことを教えるべきではない、と感じました。「情状酌量」の基準まで教えてしまったら、息子はきっとパンクしてしまいます。それよりも、息子がこれまで頑張ってきたことを、認めてあげなければ、と思ったのです。

「息子くんは、あの赤ちゃんにすごーく腹が立ったんだよね。頑張って作ってたんだもんね。そう思うのは当たり前だよ。だけど息子くん、頭がカーッときたのに、あの子を蹴ったり叩いたりとか絶対しなかったよね。よく耐えたね。偉かった。私は君を誇りに思うよ

と言って、息子を抱きしめたのです。

それまで癇癪を起こしていた息子は、少し落ち着きました。そして、小さな声でこう言ったのです。

「だって、人を叩くのはダメでしょう?だから僕は叩かなかったよ。頑張ったよ」

そう。息子は息子で、一生懸命考えて行動していたのです。

この一件で、ただただ「好ましい行動」と「好ましくない行動」を教えるのではダメだと私は気づいたのです。特に、それを忠実に守ろうとする子であればなおのこと、そのさじ加減はよく考えなければなりません。

その子が、教わったルールにがんじがらめになったり、生きづらくなったりすることのないよう、よく考えて教えていかなければなりません。そして、今回のように「情状酌量」の余地があることに遭遇したときに、親として大きく試されるように思います。

そのときに教えるべきなのか、もう少し心の成長を待つべきなのか、その子の成長の度合いを見ながら、判断していく必要があると思います。
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