睡眠薬スボレキサント(ベルソムラ®)とは?特徴・副作用などを詳しく説明します!

2018/10/26 更新
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生きていくうえで必要不可欠である「睡眠」。睡眠不足や良質でない睡眠が続き、いわゆる睡眠負債が大きい状態になると、心身ともに調子を崩してしまうことになりかねません。発達障害やてんかんをはじめ、精神疾患のある人にとっても、睡眠がその日の調子を大きく左右するといっても過言ではありません。今回は、2014年に販売が開始された比較的新しい睡眠薬「スボレキサント(ベルソムラ®)」について、詳しく紹介します。

発達障害のキホン
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監修: 増田 史
精神科医、医学博士
慶應義塾大学 精神・神経科学教室 特任助教
滋賀医科大学 精神医学講座 客員助手
目次 スボレキサント(ベルソムラ®)とは? スボレキサント(ベルソムラ®)の特徴 スボレキサント(ベルソムラ®)の効果 スボレキサント(ベルソムラ®)と他の薬の違い スボレキサント(ベルソムラ®)の用法・用量 スボレキサント(ベルソムラ®)の副作用 服用前・服用中に注意すべきこと まとめ

スボレキサント(ベルソムラ®)とは?

スボレキサントは、2014年に販売が開始され、2015年から長期投与が可能になった、比較的新しい睡眠薬です。一般名(有効成分の名称)はスボレキサントですが、商品名としてベルソムラ®の名称も使用されます。

人間が持つ生理的なメカニズムを利用して、自然に近い眠りを導く睡眠薬で、かつ副作用や依存性も比較的少ないと考えられています。不眠症にもさまざまなタイプがありますが、スボレキサントはその幅広いタイプの不眠状態に適応されます。

しかし、スボレキサントには不安や抑うつ気分を和らげる効果は認められていません。不安や抑うつ気分を伴う不眠に対しては、それらの症状を改善させる他の薬と一緒に、スボレキサントが処方されることがあります。

スボレキサント(ベルソムラ®)の特徴

スボレキサントは以前の睡眠薬になかった作用機序の薬です。副作用や依存性が少ないという特徴があります。具体的にどのような睡眠薬なのか、詳しく見ていきます。

スボレキサントの作用機序

眠りを制御しているのは「脳」。脳の覚醒や睡眠は、脳内で放出されるオレキシンという物質によってコントロールされています。オレキシンの作用が強いと、脳が覚醒して活発に活動するようになり、逆にオレキシンの作用が弱いと、脳が覚醒状態を維持することができず、眠くなってしまいます。

覚醒物質であるオレキシンの働きを阻害すれば、睡眠を誘発できることが分かります。オレキシンは「オレキシン受容体」という部位に結合することで作用するので、スボレキサントによってオレキシン受容体をブロックしてしまうことで、オレキシンが作用できないようにします。この一連の作用が、自然な入眠に導いてくれるのです。

新薬としての特徴

これまでの睡眠薬は、睡眠中枢の働きを高めること、極端にいえば脳の働きを強制的にシャットダウンする形で入眠に導いていました。これに対しスボレキサントは、オレキシン受容体拮抗薬(拮抗薬とは、別の物質の作用を妨害する物質のこと)として覚醒中枢の働きを抑える作用があります(スボレキサントの作用機序を参照)。脳が覚醒しようとするのを抑えることで、より自然な眠りに近くなるのではないかといわれています。

また、これまでの睡眠薬は耐性ができやすく、飲む量が増えていき、依存性が高く中止するにも非常に時間がかかるというリスクがあります。しかし、スボレキサントは耐性ができにくく副作用や依存性も少ないため、長期服用や副作用があった場合ただちに中止することも可能です。

スボレキサント(ベルソムラ®)の効果

スボレキサントがどのような不眠状態に効果があるのか、どの程度の作用時間なのか、解説します。

スボレキサントの効果・効能

不眠症にもいくつかタイプがありますが、スボレキサントの効果が期待されるのは、以下の3つのタイプです。

入眠障害…布団に入ってもなかなか寝つけない、眠くならない

中途覚醒…夜中に何度も目が覚めてしまう

早朝覚醒…朝早く目が覚めてしまい、その後再び寝つけない

耐性・依存性といった副作用がほとんどない割には、入眠効果が高い睡眠薬です。一方で、二次性不眠症(うつ病や統合失調症、双極性障害などによって引き起こされる不眠症)に対する効果は確認できていません。

スボレキサントの作用時間

スボレキサントが効き始めるのは、服用から約10~15分のため、服用後はなるべく早く布団に入ることが望ましいとされています。飲んでから1.5時間ほどで血中濃度が一番高くなり、半減期(薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間)は約12時間といわれています。

実際の薬の効き目は、半減期の12時間よりは少ない6~8時間程度であるという臨床結果が出ています。6~8時間というと、成人の平均的な睡眠時間とほぼ同じ作用時間といえます。

スボレキサント(ベルソムラ®)と他の薬の違い

睡眠薬は、スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)を含めて、大きく5つに分類することができます。それぞれの特徴や強さを解説することで、スボレキサントと他の薬の違いを見ていきます。

バルビツール酸系

もっとも古い睡眠薬といわれ、手術時の麻酔薬として使われていたこともある薬です。脳の大脳皮質や脳幹に作用して、脳の覚醒を抑えることで、眠気を誘発します。

ペントバルビタールカルシウム(ラボナ®)やアモバルビタール(イソミタール®)などがありますが、効き方が強すぎる、耐性・依存性・副作用(呼吸抑制や重篤な不整脈)のリスクもあるため、現在はベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系などが主流となっています。

ベンゾジアゼピン系

バルビツール酸系睡眠薬のリスクの見直しから、「もっと安全な睡眠薬を」と開発された睡眠薬です。脳内の神経興奮に関わるベンゾジアゼピン受容体を刺激することで、脳の興奮が抑えられ眠気を誘います。

作用の持続時間によって、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型の4タイプに分類されます。多種類に及びますが、代表的なものとしてはトリアゾラム(ハルシオン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®)、フルニトラゼパム(ロヒプノール®)などがあります。不安から睡眠障害が起きている場合、抗不安効果があるエチゾラム(デパス®)、アルプラゾラム(コンスタン®)などが処方されることもあります。

非ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の筋弛緩作用(筋肉を緩めてしまう作用)を減らし、さらに改良したもので、1980年頃から使われるようになりました。

これによりベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用であったふらつきなどが改善され、安全性も高まりました。作用機序はベンゾジアゼピン系と同じですが、すべて超短時間型のため、入眠障害のみに用いられています。ゾピクロン(アモバン®)、エスゾピクロン(ルネスタ®)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー®)などがあります。

メラトニン受容体作動薬

脳内の視床下部という部位から出るメラトニンというホルモンが、脳内のメラトニン受容体に作用すると、自然な眠気を感じます。

メラトニン受容体作動薬はメラトニン受容体を刺激することで入眠に導く薬であり、自然に近い睡眠を誘発する点では、スボレキサントと似ているといえます。安全性も高く、耐性・依存性もほとんどありませんが、作用が弱いという欠点があります。現在のところ、メラトニン受容体作動薬はラメルテオン(ロゼレム®)の一薬のみです。

スボレキサント(ベルソムラ®)の用法・用量

用法

通常、成人・高齢者ともに1日1回、就寝直前に経口服用します。新生児、乳児、幼児および小児等への使用実績はなく、安全性は確立できていません。

服用して就寝した後、睡眠途中で一時的に起きて、仕事などの活動をする可能性がある場合は服用してはいけません。また、スボレキサントは食事時間によっても入眠効果に影響があるため、食事と同時、または食事直後の服用は控えましょう。

用量

スボレキサントには、10mg、15mg、20mgの3種類の錠剤があります。通常、成人は1日1回20mg、高齢者は1日1回15mgを、経口服用します。

スボレキサント(ベルソムラ®)の副作用

スボレキサントは副作用が比較的少ないといわれていますが、ゼロではありません。どんな副作用があり、出た場合はどう対処したらいいのでしょうか。

傾眠

傾眠とは、眠気でウトウトしてしまう状態のことです。スボレキサントは効果の持続時間が6~8時間のため、服用した翌朝以降に影響が出ることもあり、傾眠があるときの自動車運転、機械作業は非常に危険です。運転や危険な作業を避けることが最善策ですが、それでも傾眠が強い場合は、医師と相談のうえ、薬を変更することも検討しましょう。

悪夢

睡眠にはレム睡眠(身体は眠っていても脳が起きている状態)とノンレム睡眠(身体も脳も眠っている状態)がありますが、悪夢を見てしまうのはレム睡眠時です。悪夢の原因が睡眠薬なのか、ストレスの元となっているものなのか、医師と相談しながらしっかり見極めていくことが大切です。

頭痛

スボレキサントの持続時間によって、起き抜けに頭痛がしたり、頭がボーッとする感じが続く原因になることも。頭痛が起きた場合は、医師に相談しましょう。

服用前・服用中に注意すべきこと

スボレキサントをはじめとして、睡眠薬は脳に直接作用するため、飲み合わせや飲み方を間違えると、日常生活に大きな影響をおよぼす恐れがあります。特に、禁忌事項はしっかり守りましょう。

禁忌のケースは?

イトラコナゾール、ポリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビルとの併用は、してはいけません。これらは、CYP3A(薬の成分を分解して体外へ代謝するための物質)を阻害するので、スボレキサントの作用を著しく増強させてしまう恐れがあるためです。

妊娠中、授乳中の人の服用

妊娠または妊娠している可能性のある人は、治療上の有益性がリスクを上回ると判断される場合にのみ服用できますが、安全性は確立されていません。また、授乳中に服用する場合は授乳を中止する必要があります。

乳児・幼児の服用

低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児等に対しては、使用経験がないため安全性は確立していません。

飲酒の影響

スボレキサントもアルコールも、ともに中枢神経系に対する抑制作用があるため、重い副作用につながる場合があります。服用中は禁酒しましょう。

記憶力、運動能力への影響

副作用に傾眠とあるように、スボレキサントによる眠気は、朝だけでなく昼以降にも続いてしまうことがあります。作用時間から考えると昼まで薬が残ることはあまりないのですが、「日中までだるく、眠気が続いて、記憶力が低下したり、運動能力が下がってしまう」という例もあるようです。続くようであれば、医師に相談しましょう。

他薬との飲み合わせは?

中枢神経の働きを抑制する薬やCYP3Aを阻害する薬、逆にCYP3Aを強く誘導してしまう薬は飲み合わせに注意が必要です。そのほか、体内の雑菌や真菌を外に出す働きの強い抗菌薬などで、ベルソムラとの飲み合わせとして禁忌の薬もあります。

必ずお薬手帳などを活用して、自身はもちろん医師、薬剤師にも服用している薬を把握してもらいましょう。

まとめ

スボレキサントは、「オレキシン受容体拮抗薬」という新しい作用の薬で、これまでの睡眠薬とは違う特徴を持っています。もちろん薬ですから副作用もありますが、従来の睡眠薬と比較すると耐性・依存性が少ない睡眠薬といわれています。

とはいえ、それぞれの特徴を知ったうえで、医師や薬剤師と連携し、自身の不眠状態に合った薬を使い分けていくことが大切です。その中で、スボレキサントも選択肢の一つとして検討すると良いでしょう。
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