睡眠薬スボレキサント(ベルソムラ®)とは?特徴・副作用などを詳しく説明します!【精神科医監修】

ライター:発達障害のキホン
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生きていくうえで必要不可欠である「睡眠」。睡眠不足や良質でない睡眠が続き、いわゆる睡眠負債が大きい状態になると、心身ともに調子を崩してしまうことになりかねません。発達障害やてんかんをはじめ、精神疾患のある人にとっても、睡眠がその日の調子を大きく左右するといっても過言ではありません。今回は、2014年に販売が開始された比較的新しい睡眠薬「スボレキサント(ベルソムラ®)」について、詳しく紹介します。

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監修: 増田史
精神科医、医学博士
滋賀医科大学 精神医学講座 助教
NPO法人ストップいじめナビ 特任研究員
精神疾患の偏見解消に向けた活動や、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症の脳機能に関する研究を行なっている。
目次

スボレキサント(ベルソムラ®)とは?

スボレキサントは、2014年に販売が開始され、2015年から長期投与が可能になった、比較的新しい睡眠薬です。一般名(有効成分の名称)はスボレキサントですが、商品名としてベルソムラ®の名称も使用されます。

人間が持つ生理的なメカニズムを利用して、自然に近い眠りを導く睡眠薬で、かつ副作用や依存性も比較的少ないと考えられています。不眠症にもさまざまなタイプがありますが、スボレキサントはその幅広いタイプの不眠状態に適応されます。

しかし、スボレキサントには不安や抑うつ気分を和らげる効果は認められていません。不安や抑うつ気分を伴う不眠に対しては、それらの症状を改善させる他の薬と一緒に、スボレキサントが処方されることがあります。

スボレキサント(ベルソムラ®)の特徴

スボレキサントは以前の睡眠薬になかった作用機序の薬です。副作用や依存性が少ないという特徴があります。具体的にどのような睡眠薬なのか、詳しく見ていきます。

スボレキサントの作用機序

眠りを制御しているのは「脳」。脳の覚醒や睡眠は、脳内で放出されるオレキシンという物質によってコントロールされています。オレキシンの作用が強いと、脳が覚醒して活発に活動するようになり、逆にオレキシンの作用が弱いと、脳が覚醒状態を維持することができず、眠くなってしまいます。

覚醒物質であるオレキシンの働きを阻害すれば、睡眠を誘発できることが分かります。オレキシンは「オレキシン受容体」という部位に結合することで作用するので、スボレキサントによってオレキシン受容体をブロックしてしまうことで、オレキシンが作用できないようにします。この一連の作用が、自然な入眠に導いてくれるのです。

新薬としての特徴

これまでの睡眠薬は、睡眠中枢の働きを高めること、極端にいえば脳の働きを強制的にシャットダウンする形で入眠に導いていました。これに対しスボレキサントは、オレキシン受容体拮抗薬(拮抗薬とは、別の物質の作用を妨害する物質のこと)として覚醒中枢の働きを抑える作用があります(スボレキサントの作用機序を参照)。脳が覚醒しようとするのを抑えることで、より自然な眠りに近くなるのではないかといわれています。

また、これまでの睡眠薬は耐性ができやすく、飲む量が増えていき、依存性が高く中止するにも非常に時間がかかるというリスクがあります。しかし、スボレキサントは耐性ができにくく副作用や依存性も少ないため、長期服用や副作用があった場合ただちに中止することも可能です。
出典:スボレキサント(ベルソムラ錠®)添付文書|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/170050_1190023F1024_1_13

スボレキサント(ベルソムラ®)の効果

スボレキサントがどのような不眠状態に効果があるのか、どの程度の作用時間なのか、解説します。

スボレキサントの効果・効能

不眠症にもいくつかタイプがありますが、スボレキサントの効果が期待されるのは、以下の3つのタイプです。

入眠障害…布団に入ってもなかなか寝つけない、眠くならない

中途覚醒…夜中に何度も目が覚めてしまう

早朝覚醒…朝早く目が覚めてしまい、その後再び寝つけない

耐性・依存性といった副作用がほとんどない割には、入眠効果が高い睡眠薬です。一方で、二次性不眠症(うつ病や統合失調症、双極性障害などによって引き起こされる不眠症)に対する効果は確認できていません。

スボレキサントの作用時間

スボレキサントが効き始めるのは、服用から約10~15分のため、服用後はなるべく早く布団に入ることが望ましいとされています。飲んでから1.5時間ほどで血中濃度が一番高くなり、半減期(薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間)は約12時間といわれています。

実際の薬の効き目は、半減期の12時間よりは少ない6~8時間程度であるという臨床結果が出ています。6~8時間というと、成人の平均的な睡眠時間とほぼ同じ作用時間といえます。
参考書籍:浦部昌夫、島田和幸、川合眞一/編集『今日の治療薬』(南江堂,2018)
https://www.amazon.co.jp/dp/4524240128
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