こだわりキッズも納得!なぞときしながらコミュ力UP『なぜなぜ会話 ルールブック』著者に聞いた制作の裏側

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版
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挨拶の言葉や相手との距離…。日常の何気ない会話には、いくつものルールがあります。しかしASD(自閉スペクトラム症)がある子にとって、そのルールを自然に身につけるのは難しく、社会生活で困難を感じることがあるかもしれません。
『絵でわかる なぜなぜ会話ルールブック:これでわかるコミュニケーションのなぞ』(合同出版)は、ASDがある子の「具体的なデータがあると納得できる」という特性を生かし、会話のルールを研究データやイラストとともに紹介!目で見て分かりやすいつくりで、楽しく学ぶことができます。

コミュニケーションの「なぞ」を徹底解説

何気ない会話でも、その裏にはさまざまなルールが隠れています。こうしたルールに気づいたり、身につけたりすることは、ASD(自閉スペクトラム症)がある子どもたちにとって難しいもの。そんな子どもたちが、楽しく会話のルールを学ぶことができる本が出版されました。それが、『なぜなぜ会話ルールブック』です。

ASDのある子どもたちが、「興味が湧いたことはすすんで学ぶ」「具体的なデータに基づいた議論を好む」点に着目し、興味を持って読んでもらえるようなしかけがされた、「子ども向けの科学本」をイメージして書かれた書籍です。

研究データつきで納得!ASDがある子も学びやすいしかけ

この本は
・言葉以外のコミュニケーション
・会話で何をしている?
・会話の基本ルール
・会話上手のテクニック

の4ステップで会話のルールを学んでいくつくりになっています。

そしてそれぞれのページでは、コミュニケーションについて、子どもたちが納得できる理由とともに、分かりやすい解説がされています。
小学生向けに会話のなぞを解説した『なぜなぜ 会話 ルールブック』(合同出版)を紹介
項目が細かく分けられ、イラストや写真が添えられているほか、国内外の研究やデータなどを参考に、より詳しく解説されているのが特徴
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例えば、「相手との距離・向き」を取り上げたページでは、二人で話をするときの距離について、”腕一本分くらい離れるのがちょうどいい”と説明しています。

近づきすぎると、相手が不快な気持ちになったり、怖いと感じたりすることもあります。反対に、離れすぎると親しみがないように感じられたり、声が聞き取れなかったりするかもしれません。

さらに、人との距離について、「友達」と「知らない人」またその男女の違いについて研究されたデータをグラフで紹介。知らない人との距離は、50㎝前後で「近すぎる」と感じますが、友達では、50㎝以下でも「ちょうどいい」と感じられることなどが分かります。

コミュニケーションの「なぜ」を説明するために紹介されるさまざまな研究データは、子どもたちが理解しやすいよう、イラストやグラフ化されています。漢字にはかながふられ、小学生が一人で読めることも魅力です。
絵でわかる なぜなぜ会話ルールブック: これでわかるコミュニケーションのなぞ
藤野 博 (著), 綿貫 愛子 (著)
合同出版
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専門家とASD当事者、二人の著者が込めた思いは?

合同出版『なぜなぜ会話ルールブック』の著者、藤野博さんと綿貫愛子さんにインタビュー
著書に込めた思いを語る藤野さんと綿貫さん(左)
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本書を手がけたのは、コミュニケーション発達研究者の藤野博さん、そして、ASD当事者であり臨床発達心理士の綿貫愛子さん。著者の二人に、本書に込めた思いや背景をインタビューしました。

発達ナビ編集部(以下、──)どうして、小学生向けの会話ルールブックをつくろうと思われたのでしょう?

藤野: ASDのある子どもたちは、日常生活の中で自然とコミュニケーションの仕方や言葉の使い方を学ぶことに困難を抱え、その発達が遅れます。そうした子どもたちへ、社会性の発達支援をするツールをつくりたいと考えたからです。

ASDのある子どもたちは、大人が教え込もうとしても気持ちが乗りにくいことが多いようです。でも、興味が湧いたことを自分から学ぶことは得意で、ときに驚くほどの知識の吸収力を発揮することがあります。そこで、大人が子どもに教えるための教材ではなく、子どもが好んで読む本として魅力的なものを目指しました。

綿貫: 私が小学生だったころに、知っていたらよかったなと思うことがらを取り上げたいと思いました。特に「暗黙の了解」とされていることの言語化に力を入れました。

支援者の方には、ASD当事者がどういうところに違和感や分かりにくさを覚えるのかを知っていただける材料になると思います。子どもたちには、苦手意識ではなく好奇心をもって、社会参加に役立つ知識を能動的に楽しく学んでほしいという思いでつくりました。
──研究データや豆知識を入れることは、ASDがある子どもたちの興味を引きつける以外に、どんな期待がありますか?

藤野: 出典を示すことで興味が広がってくれるといいなと思いました。コミュニケーションの行動が研究テーマになると知ることで知的な刺激を得られるかもしれません。

それから、人間のコミュニケーションは、さまざまな角度から研究されるほど奥深いものであることにも気づけると思います。それが確認できれば、自分の疑問の正当性が分かり、もやもやが晴れる面もあるかな。
こだわりキッズも納得!なぞときしながらコミュ力UP『なぜなぜ会話 ルールブック』著者に聞いた制作の裏側の画像
思わず「へー」と言いたくなるような豆知識も豊富。「マニアックな豆知識が満載でASDの人たちの心をくすぐる」といった感想も
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人の心が理解できるようになり始める小学校中学年の子どもたち

──この本の読者に小学3、4年生以上のお子さんを想定されたとのことですが、それはなぜでしょう?

藤野: ASDのある子どもたちは、9歳から10歳ごろが社会的認知が発達する節目になっているという研究が根拠になっています。

通常の発達よりは遅れますが、そのころになると知的発達に遅れのないASDのある子どもたちは、言葉と推論によって人の心の理解ができるようになると言われています。そこで、言葉を通して社会的な知識を学ぶのに適した時期として小学3、4年生以上と設定したのです。
さまざまな場面における会話のルールを解説『なぜなぜ会話 ルールブック』の著者にインタビュー
学校などさまざまなシチュエーションにおける発言・会話についても紹介。全体を通して色使いや書体などにも綿貫さんの視点を取り入れ、見やすさにこだわっています
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──綿貫さんは、その学年のころの経験などで、印象に残っていることはありますか?

綿貫: 私が会話のルールを意識し始めたのも小学校中学年のころです。当時の話し相手はもっぱら家族でしたが、好奇心が強く多弁だった私は、家族にもそれぞれの関心事や時間など都合があることを考慮できずに話しかけ、母親にそのことを指摘されていました。

──具体的にどんなことを指摘されたのですか。

綿貫: 例えば、自分が話しかけたのだから、相手の言葉に対してリアクションを示すという礼儀があることや、話題を変えるときには「話は少し変わるんだけど」というような断り文句を言うべきだ、などです。

でもそのおかげで、話し方を少し工夫すれば自分が伝えたいことを相手によく伝えることができるし、相手からも面白い意見を聞くことができることがわかりました。そういった経験が私の自己肯定感を育て、主体的なコミュニケーションにつながったと思っています。

「当たり前」を解説したら、子どもから大人まで学びがいっぱいだった

──読者の方の反響はどうでしたか?

藤野: 「沈黙と無視との違い」「約束はなんのためにするのか」など、さまざまなトピックを立てて解説していますが、本書を読んでくださったみなさんから「当たり前を見直す」という観点の面白さを感じた、という感想をたくさんいただきました。

人間のコミュニケーションにおいて「当たり前」だとされることを実現するのがいかに難しいかを、AIを引き合いに出して語ってくれた感想はとりわけ面白かったです。AIの会話システムに関心のある方にも興味を持っていただけたことは嬉しい驚きでした。

綿貫: ある支援者の方は、「なぜ自分は相手の目を見て話すのかなど、当たり前とされていることを改めて考えてみて、新しい刺激をもらった気がした」と言ってくださいました。

保護者の方からは、「会話の『なぜ?』について、家族で話し合ってみたら楽しかった」という声も寄せられました。

発達障害のある大人の方たちからは、「大人になった今でも役に立つ」「小さいころにこれを知っておけばなあ」「なんで誰も説明してくれなかったんだろう」という声が聞かれました。

私だけでなく、発達障害がある大人のみなさんは、同じところで苦労してきたのだなと思いました。そして、「これからの子どもたちに役立てばいいなあ」と改めて感じましたね。

見通しを持てるようになれば十分。会話の不思議を楽しんで!

合同出版『なぜなぜ会話ルールブック』の著者、藤野博さんと綿貫愛子さんにインタビュー
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──綿貫さんが会話のルールに気づいた当時と同年代の子どもたちへ、どんな風にこの本を読んでもらいたいですか?

綿貫: 人間の世界は、不思議なことにあふれています。大変なこともありますが、楽しいこともいっぱいあります。会話などコミュニケーションも、実は面白い不思議がいっぱいあるのです。この本では、その不思議を少し紹介しています。

自分と他の人が違うことを悩んだり、それを悪く思ったりする必要は全然ありません。あなたが持っている、ユニークな言葉や興味のあること、好きなことをどうか大切にしてください。すてきなあなたを応援しています!この本があなたの楽しい生活に、少しでも役に立ったら嬉しいです。

──藤野さんからお子さんのコミュニケーションに課題を感じたり悩んだりしている保護者の方にメッセージをお願いします。

藤野: 社会で活躍しているASDの人たちの自伝などを読みますと、通常よりはゆっくりながらも社会的スキルやコミュニケーションの作法を学習することは可能なのだと分かります。社交上手まではいかないかもしれませんが、人との交わりを楽しみ、日々の生活を充実させられます。

本書を読まれた方は「あなたもやってみましょう」という記述があまりないことにお気づきかと思います。機が熟するまでに親や支援者がするべきことは、何といっても子どもたちの自尊心を支えること。ASDのある子どもたちは長い目で見守ることも大切でしょう。

人々の振舞い方について知っていること、見通しを持てることは安心感と心の余裕につながります。特に小学生のころはそれで十分だと思います。

子どもたちの興味・関心・意欲を尊重し、その子たちの発達の可能性を期待し気長に待って、ポジティブに応援していきましょう。

著者プロフィール

藤野 博(ふじの・ひろし)
東北大学大学院教育学研究科博士前期課程修了。博士(教育学)。現在、東京学芸大学教育学部教授。専門はコミュニケーション障害学、臨床発達心理学。

綿貫 愛子(わたぬき・あいこ)
臨床発達心理士。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。NPO法人リトルプロフェッサーズ副代表。NPO法人東京都自閉症協会役員。世田谷区受託事業「みつけばルーム」職員。大学生のとき、自閉症スペクトラムの判定を受ける。発達凸凹特性のある子どもの学習や余暇を支援し、啓発する活動を行っている。小学校や特別支援学校での巡回相談など心理職も務めている。
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