診断がないことが、生きづらさの原因に…?『発達障害グレーゾーン』出版記念イベントレポート

ライター:発達ナビ編集部
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扶桑社
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姫野桂さんの新刊著書『発達障害グレーゾーン』(扶桑社)。その出版を記念して、トークイベントが東京・神保町にある書店「書泉グランデ」にて開催されました。テーマは「『発達障害』っぽさを抱えて生きていく方法を語ろう」、登壇者は、著者・姫野桂さん、OMgray事務局代表・オムさん、LITALICO発達ナビ編集長。平日にもかかわらず、80人以上が来場、立ち見も出るほどの熱い会場となりました。

『発達障害グレーゾーン』刊行記念トークイベント、開催

2018年12月20日に、東京都の神保町にある書店「書泉グランデ」で行われた『発達障害グレーゾーン』刊行記念のトークイベント。著者の姫野桂さんをはじめ、発達障害グレーゾーンの当事者会・OMgray事務局代表のオムさん、発達ナビ編集長も登壇。「発達障害っぽさ」を抱えながらどう生きるのか?について、ツイッターを通して、また会場の参加者から寄せられた質問についてトーク。その様子を紹介します。

登壇した3人はまず、自分自身について紹介。それぞれが抱える生きづらさについても言及します。

『発達障害グレーゾーン』著者の姫野さんはフリーライター、専門は社会問題。「発達障害グレーゾーンの人たちのことを調べるうちに、支援が行き届かない層というのがあるということから、この本を書く機会につながりました。私自身は算数系のLD(学習障害)があります」

オムさんは軽度の発達障害特性がある人の当事者会・OMgray事務局を運営。「この本では、特別協力という形で参加しています。自分自身グレーゾーンですが、会社にはオープンにしておらず、一般雇用枠で就労しています(そのため、イベントでは仮面を着用)。この本で、日本中で悩んでいるグレーゾーンの人に、『あなた1人だけが悩んでいるんじゃないよ』と伝えたいです」

LITALICO発達ナビ編集長は、「発達障害がある人の支援をするうちに、自分自身もグレーゾーンだと分かりました。ADHD傾向と隠れ吃音があります。『発達障害グレーゾーン』でも取材していただきました。診断手帳がなくても受けられる支援についてお話ししています」

発達障害グレーゾーンの人の、生きづらさとは?どうしたら楽になる?

イベント中、リアルタイムでツイートされる質問を確認する姫野さん
イベント中、リアルタイムでツイートされる質問を確認する姫野さん
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トークイベントは、発達障害グレーゾーンの人にとっての「生きづらさ」とは、どんなところにあるの?という話題を中心に展開。会場に設営されたスクリーンにはツイッター画面が投影され、「#グレさん」がつけられたツイートをリアルタイムで刻々と表示。姫野さんがツイートを読み上げ、3人それぞれが質問に答えたり、共感したりしていきます。

職場での人間関係、仕事のしかた、コミュニケーション方法、発達障害の診断基準、苦手を克服するためのライフハック(仕事の質や効率をよくし、より生産性を上げるための工夫や取り組みのこと)など、さまざまなテーマについて語られました。

発達障害グレーゾーンとは?

まずは「発達障害グレーゾーンとは、いったいなんなのか?」というお題からスタートしました。

オムさん(以下、オム) 発達障害グレ―ゾーンの人は、発達障害と診断されていません。診断や手帳がないため、薬が処方されにくかったり、就労移行支援などの福祉サービスの支給認定を受けにくいといったことがあるんです。でも、グレーゾーンで苦しいのはそうしたことよりも、職場で仕事上のミスの理由が言えない、といったことでしょう。すぐに怠慢だと言われてしまうし、多くの場合は味方がいないことがつらいですね。グレーゾーンであることそのものが、生きづらさの原因となっています。

姫野桂さん(以下、姫野)たとえば、診断がついたとしても、会社には隠して働いている場合は、やはり社会的にグレーゾーンなんでしょうね。見た目には分かりづらいことが多いから、「怠けている」「努力不足」と思われてしまうこともあり、つらい思いをしている人たち、でもあります。

ツイート:「それ、なんとかしておいて」というようなあいまいな指示が苦手です。

姫野 早速ツイートに書き込みが。そうです、具体的に指示してほしいですよね~!

オム 口頭だと分からなくなるから、なるべくメールで指示を送ってくださいと上司にお願いするとか。チャットツールでどんどん質問するとか。多少、そのくらい分かるだろう!と怒られても、あとでトラブルになるよりずっといいと思っています。

編集長 職場では発達障害のあるなしにかかわらず、具体的で分かりやすい情報共有をしたほうがいいと思うんですよね。マニュアルなども、なるべく明文化するとか、具体的にする工夫は、結果的にみんなにとって働きやすい職場につながるでしょう。必ずしも「発達障害対策」という文脈でなくても、職場でできることがあります。

ツイート:「私、アスペ(※)なんだよね」と言って「フリ」をする人がいると、気持ちが苦しくなります。どう思いますか?

姫野 状況によるかな、と思います。悪意があったり、よく理解していないのに「アスペ」と言ったりするのはよくないですよね。

編集長 ただ、グレーゾーンというくらいで、発達障害は「ここからここまで」とハッキリしたものじゃないですよね。当事者同士間でも論争があったりするくらい。言葉狩りみたいに、「当事者以外使っちゃダメ」というようなことはしなくていいかなと思いますね。

姫野 定型発達の友人、ASD(自閉症スペクトラム障害)のある友人、私の3人で飲んだときに、私とASDのある友人との会話では、話題があちこちに飛ぶんですよね (笑)。そのときに定型発達の友人が「アスペの会話だ!」と叫んで、みんなで笑ったんです。たとえばですが、この場合は基本的には信頼関係があるから、誰もいやな思いはしていないんです。

オム 私も場合によるなと思うし、この方自身のこのときの「いやだ」という感じは大事にしていいと思うんです。一方で、グレーゾーンの人が、自分はアスペっぽいと言ったときに、「あなたは診断されていないからいいよね」と言われたら、それはつらいでしょうね。どちらの大変さが上だとかいったことではなく、お互いに、ゆるく許容し合えるといいのかな、と思いますね。

※編集部注:「アスペルガー症候群」を省略した俗語

自分が感じていることを書き出して、分析してみると楽になるかもしれない

ツイート:友だちの作り方がわかりません。発達仲間ができたこともあったけど、引っ越したらまたゼロになっちゃいました。むずかしいです。

オム 実は一人でいるのが平気な人も多いですよね。友達がいないことがつらいんじゃなくて、「友だちがいないんだ」と思われるのがいや、という場合もありますよね。友だちがいないことの何がいやなのか、友だちとのかかわり方について分析してみると意外と楽になったりしますよ。

編集長 そうですね、友だち作り自体は無理にしなくてもいいと思う。好きなことベースでいいのかも。

ツイート:友だちとのかかわり方について分析するって、どういうことですか?

オム たとえば誰かと疎遠になり、いやだという感じを抱いたとします。その「いやだという感じ」の理由を分析するということです。「その友人と仲たがいしてしまったこと」がいやなのか、あるいは「自分に友だちがいない状態」がいやなのか?もし「友だちがいない状態」がつらいなら、友だちを探す行動をとればいい。一人ですごしてもさびしく感じないなら、自分の趣味に没頭することを選んでもいい。そういう分析です。

編集長 一度、気持ちを書き出してみるといいですよね。人とのかかわりだけでなく、感情も。イライラするとか不安なとき、感情自体は自分で意識できるけど、その感情を生んでいるたくさんのできごとのどれが要因なのか考えてみるといいですよ。

ツイート:今、依存症と不安障害で受診中ですが、自分でこれはもしかしたら発達障害の二次障害かもと思っています。

編集長 私自身も、発達障害だけでなく双極性障害の診断もされています。あまりよく眠れないので、睡眠導入剤を服用していますが、3時間で目がさめちゃうこともあるし。(発達障害に伴う)二次障害はきついですね。

編集長 二次障害の症状がきっかけで調べたら発達障害が分かった、という人も少なくないですね。二次障害が出ないまでも、グレーゾーンの人は疲れすぎないようにしてほしいです。一度、二次障害の症状が出てしまうと回復に時間がかかるんですよ。予定を入れ過ぎないで、休む時間をつくるなど、心と体、大切にしてください!

オム 二次障害の場合、自分の判断で服薬をやめたりするのは非常に危険。よく医師と相談してほしいです。グレーゾーンの人は、とても疲れやすくて、睡眠が浅いことも多いから、僕は基本的に1日9時間は寝ないと足りないと思います。日中、太陽の光を浴びるとか、部屋を掃除することも大事。ほこりまみれの部屋だと眠れないんです。そういう基本的なことが大切だと思います。

姫野 そうそう、環境は大事です。私は調子悪いとき、換気するとたいてい気分がよくなります。

グレーゾーンの人は、もっと息抜きしながらでいい

イベントで取り上げた「#グレさん」がついたツイートは約20件、ツイッターをやっていない会場の参加者からもたくさんの質問が上がり、あっという間の1時間半でした。

発達障害グレーゾーンならではのライフハックも話題に上がりましたが、中でも、「自分の気持ちを分析してみると楽になる方法が分かってくるよ」というヒントは、生きづらさを感じているグレーゾーンの人たちにとって大きなヒントになるのではと感じられました。

最後に姫野さんからグレーゾーンの人に向けてのこんなメッセージでイベントは締めくくられました。

姫野 発達障害グレーゾーンの人を取材してきて思うのは、とにかくみんな、すごくまじめだということ。今日も実感しています。まじめだから苦手なことにも一生懸命立ち向かって、疲れてしまうことが多いんですよね。

実は、発達障害以外のテーマで取材していたときに、定型発達の人たちって、実はけっこう不真面目なんじゃない?と気づいたんです。大学生の間、学校も行かずにびっくりするほど遊んでいた人が、今は普通にサラリーマンしていたりとかね。そんな風に、世の中、みんなけっこういい加減。だからね、まじめなグレーゾーンの人たちも、もっと息抜きしながらいきましょうよって、言いたいです。
著書へサインをする姫野さん
著書へサインをする姫野さん
Upload By 発達ナビ編集部
トークイベント終了後、姫野さんによるサイン会が行われました。一人ずつ、言葉を交わしながらサインをする様子は、著者と読者でありながら、同じ困りごとに共感しあう仲間同士のようでもありました。

『発達障害グレーゾーン』

2018年12月27日、扶桑社より発刊。“グレーゾーンの人が、息抜きしながら、幸福になっていくためにどうしたらいい?”が詰まっている『発達障害グレーゾーン』。イベントでも話題に上がった、当事者が身をもって獲得してきたたくさんの“ライフハック”も掲載されています。
発達障害グレーゾーン
姫野 桂、OMgray事務局
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撮影/鈴木江実子 取材・文/関川香織
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