自閉症の息子の「好き」にとことん寄り添ってくれた居場所――放課後等デイで過ごした12年間を振り返って

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息子が保育園の年長児になったとき、「来年からは小学生。下校後に過ごせる場所を探さなくては!」と考えるようになりました。小学生なら誰でも通える区立の学童クラブと、さまざまな年齢の障害児が通う放課後等デイサービスを見学し、放課後等デイサービスに通うことにしたのですが…。

タイトル写真撮影:週刊女性・渡邉智裕

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立石美津子
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小学校入学を前に、放課後の居場所探しをスタート

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)のノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

自閉症の息子は、保育園を卒園したら都立の特別支援学校に入学することが決まっていました。下校時間は14時で、それ以上に延長して滞在できる制度等はなく、その代わりに近隣の区立小学校の学童クラブを利用できることになっていました。

そこで私たちは、まずこの学童クラブを見学しました。ここは特別支援学校の生徒も通うことができますが、基本的には通常学級に在籍する子どもが多く通う学童クラブです。

低学年の子ども達が宿題をしていたり、子ども同士でトランプをしていたりと、自由で楽しそうな雰囲気…。でも、自閉症の息子は「ここで自由に過ごしていいんだよ」と言われると、見通しが立たず不安になり、かえって戸惑うだろうと感じました。それに、友達と雑談したりゲームをしたりすることも難しいのではとも思いました。

障害児が通う「放課後等デイサービス」を見学に行くと…

そこで、障害がある子だけが通う放課後等デイサービスを探すことにし、早速見学に行くことにしました。ここに来る子どもは皆、障害があるので、それぞれの特性に配慮された過ごし方をすることができます。ただ、小学生のみが通う区立の学童クラブと違って、小学生から高校生まで幅広い年齢の子どもが集まります。

私たちが見学に行ったときに目にしたのは、身長180cmくらいはある自閉症の高校生が、大きな声を発しながらピョンピョン跳ねている姿。当時6歳だった息子は、食物アレルギーで食べられるものが少ない上、舌の感覚過敏もあり、超偏食でとても小柄でした。
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「こんなに小さい息子が、体格のいい高校生たちと一緒に過ごせるのだろうか…」と、一瞬入会をためらってしまいました。

でも、やはり息子の特性に配慮された環境で過ごす方が良いだろうと考え、結局は放課後等デイサービスに通うことに。そしてつい先日、18歳で特別支援学校の高等部を卒業するまで、実に12年間をそこで過ごすことになったのです。
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放課後等デイサービスでの過ごし方

現在は放課後等デイサービスでもさまざまな特色が打ち出されており、パソコン学習や就労訓練をする施設や、個別療育をうたっている施設、医療的ケアが必要な子どもが通える施設など、選択肢も多くなりました。

息子が小学校に入学した12年前は、今ほど施設数も多くなく、支援内容は多様ではありませんでしたが、施設によって特色は少しずつ違いがありました。特別支援学校に通っていると、療育的なことは学校でやってくれます。また、学校では紐を結ぶ練習や時計を読む練習など、それなりに緊張しつつ頑張って課題をこなしていますから、私が放課後の居場所として選んだのは「思い切り遊んでくれる場所」でした。

息子が通った施設には、排泄が自立していない子も、読み書きができる子も、さまざまな子どもたちが通っていました。通学している学校も異なるので、施設に来所する時間もバラバラ。小学生は14時の開所のタイミングで来たりしていましたが、高等部に上がって下校時間が遅くなると、17時30分に来所して18時の閉所までわずかな時間しかない…ということもありました。

施設にいる間、子どもたちは買い物に行って夕食づくりをしたり、季節に合わせた行事をしたり、公園遊びをしたり、夏休みはプールに行ったり…。さまざまな楽しい活動をして過ごします。
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息子が通っていた施設は、全員が同じことだけをするのではなく、その子の興味関心に合わせて思い切り遊べる工夫もしてくれました。

例えば、息子はトイレの便器にこだわりがあり、「横浜ランドマークタワー3階は『TOTO C425』」というように、それぞれのトイレの型番を記憶しています。そこで「トイレかるた」をつくろうということになったのですが、駅や商業施設の名前を読み札に、トイレの型番を取り札にしてしまうと、息子以外はだれも参加できません。
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そこで、施設と型番が同じ紙に書かれたものをスタッフが息子につくらせてくれ、それをひとつひとつパウチしてくれました。
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これならみんなで遊ぶことができます。息子がとても楽しそうにかるたをしている様子が、写真からも伝わってきます。
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撮影:週刊女性・渡邉智裕
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あれから12年。ここで過ごした毎日を振り返って思うこと

先日、息子は特別支援学校の高等部を卒業し、12年間通った放課後等デイサービスも卒業しました。ここに通う他の子どもたちやその保護者、スタッフとも長い付き合いになり、息子だけでなく親である私にとっても心の拠り所となりました。

息子はこの施設に通うことが大好きで、学校が遅くなって閉所まで30分しか滞在できないというときでも行きたがりました。学校が休みの日は、1日ここで過ごせるので大喜び。それほど、本人にとって「なくてはならない居場所」でした。

最後の日に、スタッフが書いた12年間の記録をもらいました。1年のうち平日は約245日なので、ここに通った「245日分×12年間=2940枚」というボリュームです。

息子がここで過ごした足跡のひとつひとつが、宝物になります!
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12年前、初めてこの施設を見学に訪れて、入会することを不安に思ったあの日…。毎日通っているうちに、小さかった息子は次第に「大きいお兄さん」になっていきました。こんな長い付き合いになるとは、あの頃は思ってもいませんでした。

ここで過ごした12年間の日々は、私にもひとつの変化をもたらしてくれました。息子が楽しんで通っていたこともあり、卒業してからも私自身が離れがたく、ガイドヘルパーの資格を取りました。これまでの恩返しをする意味でも、この施設に通う子たちの支援をする仕事をしたいと思ったからです。

息子は現在、就労移行支援事業所に通っています。「小さい子のお世話をするボランティアを兼ねて、たまに遊びに行ったら?」と言ったら「ぜったーーーーーーーーーいに嫌だ!」と叫んでいました。「ここは卒業後の居場所ではない」ということを、自閉症の息子らしくキッチリカッキリ決めているようです。

私は自分にできる恩返しをしていきつつ、「大人になった!」と鼻息が荒くなっている息子のことも、引き続き見守っていきたいと思います。

著者親子のルポルタージュ

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムの著者が書いた本

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