自閉症息子に「思いやりの嘘」をどう教える…!?親子でシミュレーションしてみたら

ライター:丸山さとこ
自閉症息子に「思いやりの嘘」をどう教える…!?親子でシミュレーションしてみたらのタイトル画像

子どもに対して、「嘘をついてはいけません」と教える人は多いのではないかと思います。けれど、”思いやりの嘘”についてはどうでしょうか・・・?

以前、私はスクールカウンセラーさんとの面談の中で、息子に対して「嘘は全て悪いものとして教えるように」というアドバイスを受けたことがあります。「発達障害のある子は嘘の使い分けができないから」という理由でした。

確かに一理ある!と思いながらも悩んだ私がとった方法とは…。

”思いやりの嘘”はいい嘘?

「子どもに対して、嘘は悪いことだと教えますか?」と聞かれれば、大半の人はYESと答えるのではないかと思います。そんな風に基本的には“良くないもの”とされている嘘ですが、例外的に“思いやりの嘘は良いもの”とされていることは多いようです。
「発達障害の子はねー。」
Upload By 丸山さとこ
そんな“思いやりの嘘”ですが、「思いやりの嘘も結局は嘘。コウ君に対しては嘘は全て悪いものと教えた方がよい。」と、スクールカウンセラーさんから言われたことがあります。発達障害児は嘘の使い分けができないからしない方が良いという理由でした。

実際、発達障害児にはケースバイケースでルールを使い分けることが難しい子もいるだろうと思います。コウにもそういうところはあり、その人の言うことはもっともだと思いました。
本を読むコウ
Upload By 丸山さとこ
ただ、「その通り」と思う一方で、子ども向けの書籍には“思いやりの嘘”を良いものとする記載が多いことも気にかかりました。「じゃあ、この本にかかれていることは間違っているの?」という疑問が出ても困りますし、クラスメイトなどに対して「思いやりでも嘘は嘘なんだよ」と注意すればトラブルにもなります。

しばらく悩んだ末、

・人を傷つけるような内容のことは、言わなくてすむのであれば言わない。
・言う必要がある時は思いやりの言葉を添える。


という方法を教えることにしました。

シミュレーションしてみよう!

本当のことが言えず困っているコウ
Upload By 丸山さとこ
“友達にもらった手作りクッキーが美味しくない”という状況を想定して、コウと一緒にシミュレーションしました。

まずは味という”結果”ではなく「どうやって作ったの?」「1人で作るなんてすごいね!僕もお母さんと作ったことあるんだけど、今度一緒に作らない?」などと”過程”について話します。
「まずは過程について話そう。」と話す母
Upload By 丸山さとこ
それであれば、過程について褒めたり感心したりすることだってできるかもしれません。味という出来栄えについて触れていないので、味について嘘をいう必要もありません。

味について聞かれたら、正直に「僕には少し硬いかな」などと答えつつ、「でも、1人で作ったなんてすごいね。」「作ったものをもらえてうれしい。」などの“本心から外れていないこと”を答えて思いやりを伝える方法を提案してみたところ、コウは気に入ってくれたようです。
「それ、すっごくいいね!」と同意するコウ
Upload By 丸山さとこ
これはもともと、嘘の帳尻合わせが下手な私が自分のために考えた「思ってもないことは言わない。嘘はつかない。」という方法です。この話し方なら、後になって「この人にはこれを言ったかな?言わなかったかな?」と悩まずにすみます。
「嘘は、自分や他人を困らせる。だから嘘をついてはいけない。」と、コウには改めて話しました。嘘がバレれば信用もなくすし、そもそもたいていの嘘は「やってはいけないことをしてしまった」か「やらなくてはいけないことをやっていなかった」ことによってつくことが大半ですので、嘘はバレなくてもいずれは困ったことになるものなのです。

そう説明すると、コウも「それはそうだな。」と納得していました。

そのうえで、「自分や他人を助ける嘘ならいいと思うけれど、嘘は知らないところで大きくなることもある。思いやりの嘘は簡単に扱えるものではないと思うよ。」ということも話しました。

そもそも、嘘はなぜいけないことなの?

「こうなったら、どうする?」
Upload By 丸山さとこ
「その時は大丈夫だと思った嘘によって後で苦しむ可能性はある。だから嘘はいけないということになっているんだよ。嘘はバレた時だけじゃなくてバレなかった時に困ることもあるんだよ。」と話すと「え!そうなの!?」目を丸くするコウです。

「うーん。例えばね、おいしかったよって嘘をついて、『じゃぁ、また作ってくるね!』と言われたらどうする?」と聞くと、「あー…それは困るなー…」と頭を抱えました。

「美味しくないクッキーをもらっても困るけれど、その時になって『実はおいしくなかったんだ』とも言えないでしょう。」と聞くと、「それは困る。思いやりであっても嘘はつかない方が僕に合っていそうだ。」と答えるコウ。納得がいったようです。


そのような訳で、これからのコウは「思いやりの嘘があると分かったうえで、自分はそれを使わないようにしよう。」という方針でいくことになりました。

“思いやりの嘘”をどのように扱うのか、ご家庭の数だけ答えがあるのだろうなぁと思う、“嘘”の話でした。
ぐるぐる回る衛星息子、どう止める?凹まず楽しく「気持ちの切り替え」ができる意外な方法のタイトル画像

ぐるぐる回る衛星息子、どう止める?凹まず楽しく「気持ちの切り替え」ができる意外な方法

子どもはなぜ平気で嘘をつくの?6歳の息子が嘘で得ていたもののタイトル画像

子どもはなぜ平気で嘘をつくの?6歳の息子が嘘で得ていたもの

自閉症長男、初めての嘘…の結末はいかにのタイトル画像

自閉症長男、初めての嘘…の結末はいかに

療育支援探しバナー

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。