ビバンセとはどんな薬?ADHDのある子どもに処方される薬ビバンセの効果や副作用などを詳しく解説!

2019/12/17 更新
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ビバンセは、6〜18歳の小児に承認された新しいADHD治療薬です。これまでの治療薬とどう違うのでしょう。今回の記事では、ビバンセの仕組み、効果や副作用、期待される位置づけについて解説します。

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監修: 岡田俊
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 知的・発達 障害研究部部長、博士(医学)

ビバンセとは

ビバンセとは、リスデキサンフェタミンを成分とする薬の販売名で、不注意、多動-衝動性を改善させる効果があります。6~18歳の小児を対象に、2019年3月に販売承認され、2019年12月3日より販売が開始されました。

6歳未満の子どもへの安全性は確認されていません。また、現時点では、本邦における成人期の適応は取得されていません。これまでにADHDの治療薬として、中枢神経刺激薬のコンサータ、非中枢神経刺激薬のストラテラとインチュニブが販売されています。ビバンセはコンサータと同じ中枢神経刺激薬に属します

かつてコンサータと同じ成分の「リタリン」について、不適切な流通や乱用者の存在が問題になりました。そのため、コンサータについては流通規制が行われています。具体的には、資格のある医師しか処方できず、調剤できる薬局も限られています。2019年12月よりコンサータの流通規制が強化され、患者さんの登録も開始されています。

ビバンセについても同様の流通規制が敷かれており、加えてビバンセは体内で「d-アンフェタミン」に変わることから、覚せい剤取締法に規定する覚せい剤原料にされ、覚せい剤取締法による規制も加わっています。添付文書では「使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は,他のADHD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用されるよう必要な措置を講じること」という記載もあります。

このようにみていくと、ずいぶんと敷居の高い薬だと感じられるでしょう。日本の現状では、そのとおりです。ただ欧米では第一選択で使用されている薬剤です。

最も大切なのは、正しい診断のもと適切な処方がなされ、医師の処方に従って正しく服薬すること、そして服用後の経過を正しくモニタリングすることです。これらの前提のうえで、この薬剤について詳しくみていきましょう。

ビバンセがADHDを改善する仕組み

ビバンセは体内に吸収された後、血液中でアンフェタミンに変化します。このアンフェタミンがADHD症状を改善するのです。

ADHDのある人は、脳内で神経に情報を伝える働きを担う神経伝達物質の作用が十分ではないと考えられています。特に、喜び、快楽に関連したドーパミンと、恐怖、驚き、興奮に関連したノルアドレナリンです。ビバンセは、神経と神経の間(シナプス間隙)における神経伝達物質のドーパミンとノルアドレナリンの働きを高める作用があるのです。

詳しい仕組みをみてみましょう。
アンフェタミンの作用機序
アンフェタミンの作用
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神経伝達物質のドーパミン、ノルアドレナリンが神経の末端から放出されると、次の神経細胞にある受容体で受け取り、それが信号となって神経伝達が行われます。このメカニズムは、神経と神経の細胞の間にある狭い空間(シナプス間隙)の神経伝達物質の濃度に依存します。

神経伝達物質は、トランスポーターと呼ばれる再取り込み口から神経細胞に回収され、再利用されます。

ADHDのある人では、何らかの理由で神経伝達物質の作用が少なくなっていると考えられています。アンフェタミンは、神経伝達物質を取り囲んでいるシナプス小胞に直接作用して、神経末端からの神経伝達物質の遊離を促進するとともに、トランスポーターにおける再取り込みを阻害することで、神経と神経の間(シナプス間隙)にある神経伝達物質の量を増やし、神経伝達を高めると考えられています。

ビバンセとアンフェタミンの違い

ビバンセは、消化管から吸収された後、血液のなかで代謝されて、アンフェタミンになるというお話をしました。それなら、アンフェタミンを最初から服用したらいいのではないか、とお考えになるでしょう。実際に、欧米ではアンフェタミンの製剤が販売されています。

しかし、ビバンセはそれ自身が薬効を持たず、代謝されてアンフェタミンになる、そのことによってアンフェタミンよりも安全性を高めている薬剤なのです。このような薬剤をプロドラッグといいます。

プロドラッグ

プロドラッグとは、そのままでは体にはまったく影響を及ぼさず、体内に入って代謝されることでその効果を発揮する薬のことです。

代謝を利用するため、血液中で急激に濃度が上がらず長時間効果が続くように設計されています。

プロドラッグであるビバンセをもし意図的に吸入などの方法で接種したとしても何の効果も及ぼさないため、乱用のリスクが低いのです。また血液中の濃度も緩やかに変動しますから、多幸感が生じにくいのです。

依存、乱用のリスクは、急激に血中濃度が上がり、急速に下がっていくときに高まります。したがって、プロドラッグであるビバンセの血中濃度の変化の緩やかさは、アンフェタミンが有している依存、乱用リスクを低めていると考えられています。

依存、乱用リスクを軽減するために、もっとも重要なことは、その薬剤を本当に必要としている患者さんが定められた用量を服用するという適正使用です。医師は、患者さんや家族、学校等の情報から正しく診断する必要がありますし、患者さんは決まった用法・用量を守って服用しなければなりません。

ビバンセには流通規制があり、登録されている医師のみが処方でき、登録薬局のみで調剤することになっています。患者さんをシステムに登録し、同じ患者さんが複数の医療機関でビバンセを受け取ることがないよう制度化されているのです。

ビバンセの用法・用量

ビバンセはカプセルの薬で、20mg、30mgの2種類が用意されています。通常は、30mgから服用を始め、70mgを上限として必要に応じて増量していきます。増量の必要があるかどうかは診察のうえで医師が判断するため、自分で増量して服用することはやめましょう。

ビバンセには併用が禁止されている薬があることから、医師の診察では服用している薬を忘れずに報告してください。

併用禁止薬

●モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
 セレギリン塩酸塩(エフピー)
 ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)

※モノアミンとは、ドーパミンやノルアドレナリンをはじめとする神経伝達物質の総称のことです。ビバンセは、ドーパミンやノルアドレナリンの作用に深く関係していることから、併用すると神経の外に神経伝達物質が増えてしまい、命に関わるほどの高血圧をもたらす可能性があります。

併用には注意すべき薬

他にもビバンセを服用するにあたっては、併用に注意しなければならない薬があります。自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。

●尿のpHをアルカリ化する薬剤
 炭酸水素ナトリウム等

※ビバンセの有効成分d-アンフェタミンは腎臓から排出されるため、腎臓で排出される分が少なくなってしまい、作用が強くなりすぎてしまう恐れがあります。

●尿のpHを酸性化する薬剤
 アスコルビン酸等

※尿のpHをアルカリ化する薬剤とは反対に、有効成分を過剰に腎臓から排出してしまうため、作用が弱くなりすぎてしまうことがあります。

●セロトニン作用薬
 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
 セロトニン・ノアルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
 三環系抗うつ薬等

※ビバンセを併用することで、セロトニン作用薬の効果が強まり、セロトニン症候群を発症することがあります。

●メチルフェニデート塩酸塩
 コンサータ
 リタリン

※ビバンセと同じ仕組みではたらく薬剤のため、作用が増強する恐れがあります。

ビバンセの有効性

ビバンセが、ADHDに対して有効であることは国内、海外においても確立しています。また、海外のデータからは、ビバンセの効果は他のADHD治療薬よりも強力であることが報告されています。

国内の6歳~18歳の小児162人を対象として、53週間にわたってビバンセを服用したグループと見た目の違わないカプセル(プラセボ)を服用したグループとを比較し、薬の効果と安全性を調べる試験が行われました。

その結果、服用後1週間からビバンセのグループではプラセボを服用したグループに比べてADHDの症状が有意に改善したことが認められました。さらに53週後まで効果が減弱しないことも報告されています。

ビバンセの期待される位置づけ

ADHDの治療薬は、大きく分けて中枢刺激薬と非中枢刺激薬のふたつに分けられます。

アメリカのADHD治療のガイドラインでは、コンサータやビバンセをはじめとした中枢神経刺激薬が第一選択で、非中枢刺激薬よりも優先されます。しかし、国内のガイドラインでは、中枢刺激薬と非中枢刺激薬を同列に第一選択としています。

そもそも薬剤は、治療効果の強さだけでなく、症状の強さはどれほどか、どういった時間に困難がみられるか、早急に症状を改善しないといけないのか、過去にADHD治療薬を服用した際の副作用はどうか、治療費用の負担はどうなのか、身体的な状況から見て服薬に伴うリスクはどう見積もられるか、他の精神疾患を合併しているか、可能な通院頻度はどの程度か、患者の希望はどうかなど、さまざまな観点から、医師と患者(あるいは家族)とともに相談して決定していくものです。

ビバンセは、効果が明確で、また、海外では第一選択に位置づけられるなど、強力な治療選択肢の一つです。しかし、ビバンセがプロドラッグであり依存リスクが軽減されているとはいっても、体内でアンフェタミンへ変化する物質であるということになりますと、患者さん側の思いとしても慎重になるでしょうし、患者さんが不安を感じる薬剤については医師も慎重になりがちです。

日本では、海外に比べて厳格な流通規制を敷いていますし、添付文書にも「使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は,他のADHD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用されるよう必要な措置を講じること」と書かれています。

これらの理由から、当面はビバンセの使用は、アメリカなどとは異なり他のADHD治療薬が効果不十分な場合に限定されることになると思われます。

ビバンセの副作用

ビバンセの安全性を確かめる試験では172例中、154例(89.5%)で有害事象が認められました。有害事象は、その試験に参加している間に生じる有害な事象、ということで、必ずしも薬剤との因果関係があるわけではありません。特に注意が必要なのは、頻度の高い副作用、プラセボに比べて有意に高い頻度で認められる副作用です。

代表的な副作用は、食欲減退 136 例(79.1%),不眠 78 例(45.3%),体重減少 44 例(25.6%),頭痛 31 例(18.0%),悪心 19 例 (11.0% )でした。

成長期のお子さんですので、一番頻度も高く、ご心配になるのは、食欲減退、それに伴う体重減少でしょう。特に、薬剤が作用している昼の食欲が下がりますので、朝食や夕食、あるいは薬が切れてきた時間の間食などで補う必要があることもあります。

重大な副作用

以下に挙げる副作用は、安全性を確かめる国内外のいずれの試験でもあらわれていないため頻度は不明ですが、可能性として考えられるので注意が必要です。

・ショック,アナフィラキシー
・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)
・心筋症(頻度不明)
・依存性(頻度不明)

ADHD薬の一覧表

ADHDの処方薬といっても、仕組みや効き方はそれぞれ違います。
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まとめ

ADHDの治療薬として新たに承認されたビバンセについてご紹介しました。

治療効果は明確な薬剤であるため、これまでの治療薬で効果が不十分であった場合の選択肢となります。
アメリカと日本では、本剤の位置づけはかなり異なっています。また、日本では厳格な流通規制も敷かれています。ビバンセはプロドラッグであり、依存リスクが軽減されていますが、だから問題がないというのも間違いですし、他方でアンフェタミンだからと治療選択肢から完全に排除してしまうのも行き過ぎです。正しく知ったうえで、適切な治療を選択することが求められます。

日本は海外に比べると、ADHD治療薬の選択肢は少ないものの、代表的な治療薬がそろったことから幅広い治療のニーズに応えることのできる環境は整いました。

治療薬の選択を巡って、主治医と十分な意見交換をして治療を決定していくことが大切です。その際には薬物療法以外の対処についても検討し、必要に応じて両者を併用していくことが重要です。

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