自閉症息子の激しすぎるこだわりは、禁止では解決しないから――大人になった今、たどり着いた答えとは

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自閉症のある子にはこだわりがあります。でも、それが“こだわり”ではなく単なる“わがまま”だった場合、「人生、何でも自分の思い通りにはならない」ことを親は教えていかなくてはなりませんし、こだわりの場合は、単にやめなさいと禁止するだけでは解決しません。
息子にもこだわりがあります。でもそれがわがままなのか、こだわりなのか、幼い頃は特に見分けるのが難しいことがありました。

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立石美津子
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息子の行動は、こだわり?それともわがまま?

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

療育仲間のママ友達とのお喋りで、躾についてのある悩みについて話すことがありました。それは、わが子の行動が自閉症の特性である「こだわり」なのか、単なる「わがまま」なのかわかりにくい、ということです。

自閉症のある子は想像力の障害があるので、変化に対して強い不安感を持ちます。このことにより同じものに固執して安心を求め、パターン化して“こだわり”として表れるのだといわれています。

例えば、同じ道順に固執したり、急な予定変更に対してパニックを起こしたりするといったことです。

人生をスタートしてまだ間もない幼児期は「この世は安心、安全な場所である。親はそれを与えてくれる」という体験をさせることが大切なので、こだわりから来る行動については、可能な限り親はこれに応じてやらなくてはならないと思っています。親も忍耐が必要です。

例えば、同じ道順を通らないと大騒ぎする場合、どんなに急いでいても同じ道順で行ってやる。それで遅刻する場合は早めに家を出る。(時計が読めて出発時刻にこだわっている場合は家の時計の針を進めておく工夫も必要)などです。
息子にもたくさんのこだわりがありました。

・(僕は)同じ道順しか歩きません
・(僕は)井の頭線に乗るときは3000系の各駅停車しか乗りません
・(僕は)電車で同じ席にしか座りません。誰かが座っていると、「替わってほしい」と暴れます
・(僕は)タクシーを使う場合は特定の会社の車にしか乗りません
・(僕は)同じデザインの靴しか履きません
・(僕は)スーパーの納豆がきちんと並んでいないと許せません
・(僕は)5種類の食べものしか食べません。“超”がつく偏食です
・(僕は)急な予定変更は受けつけません
・(僕は)夕飯は6時59分に食べ始める決まりです。そのときNHKニュースがついていないと怒ります
・(僕は)時間延長や時間短縮は認めません

これらには私が折れて応じていました。

息子のわがまま

けれども、まだ幼い子どもはわがままを言うことがあります。

例えば息子は、外出の度に、デパートの玩具売り場に行き、プラレール(電車)を欲しがって地べた泣きをしました。でも、これはこだわりではなくわがまま。「誕生日やクリスマスでもないのに…出かける度に買うことは出来ません」と毅然として貫きました。ここで買ってしまうと、「騒ぐと買ってくれる」という悪い学習をしてしまうからです。

でも、「玩具を欲しがる」というわがままを禁止したときは、パニックほどの破壊力はなく、“普通に大泣きする”という感じでした。

泣き方が微妙に違い、こだわりなのかわがままなのか見分けることができるようになっていました。私も自閉症児の親として子育て経験を積み、見分ける直感のようなものを次第に身に付けていったのだと思います。

パズルでのこだわり

幼少期、ある教材の世界地図パズルがお気に入りでした。
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本人の頭のなかでは、たとえば100ピースあったら、1番から100番まではめていく順番がキッチリカッキリと決まっているようでした。

ですから、途中のものが見当たらないと次に進めず、いちいちパニックを起こしました。

あるとき、南アフリカ共和国の1ピースがなくなりました。案の定、パズルをひっくり返して暴れました。パズルの一片がなくなっただけなのに、自傷し手がつけられない状態になりました。

「一つないくらいでワーワー言うんじゃないの!それを飛ばして次に進めばいいじゃない!」と叱りたくなりましたが、そこはグッとこらえて「これは、こだわりなのだ」と自分に言い聞かせました。
パズルのピースはバラ売りしていません。しかたがないので、新しいパズルを買うときは、全く同じものを3セット買い置きしていました。こうしておくことで予備があるので、南アフリカ共和国がなくなっても、全く同じ南アフリカ共和国があと2片あるので安心でした。

お金は3倍かかりますが「これで息子と私のストレスが減るんだったら、そのほうがましだ」と思ったからです。

息子自身も経験を積んで…

息子が高等部の頃、買い物体験をさせるため、放課後等デイサービスの帰りにコンビニで夕飯後のデザートのお菓子を買わせていました。
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ある日、「お金なかった」と言って、何も買ってきませんでした。お金を渡すのを私が忘れていたからです。レジでお財布を開けて相当焦ったと思います。でも、目の下に涙の跡もありません。パニックを起こした気配もありません。昔だったらとんでもないことになっていたでしょう。

子どもたちが幼い頃から、こだわりやわがままについてよく話していたママ友達も、同じような経験をしていたようです。
「放課後等デイサービスでお弁当を買いに行ったときのこと。息子の欲しい弁当が売り切れになりパニクるやろうなと思いましたが、ちゃんと、他ので対応出来ていましたと、後で報告されたときは、凄い‼と思い、息子を褒めました。幼稚園の時なら、ありえへん (笑)」

幼い頃は甘えさせていい

定型発達の人も自己中心的な子ども時代、わがままだった子ども時代から、人生経験を積むなかで、折り合いをつけ、自分の感情をコントロールすることが出来るようになります。

障害の有無にかかわらず、幼い頃、親や周りの大人が安心安全を与えてやると「この世はそんなに怖くはない」と体験し、嫌なことでも乗り越えられるようになると、私は感じています。

さて、息子はもうすぐ20歳。今までの人生の中で「わがままではなく、こだわりがあっても思い通り事は進まないんだな」ということをゆっくりですが学んでいっているように思います。

「『お母さんを騙すために、これは僕の“わがまま”だけど、“こだわりの振り”をしよう』」となってくれたらいいな」なんて妄想しています。でも、こんなことが出来るようになったら、息子ではなくなってしまう気もして、「それも悲しいな」と思う身勝手な私でした。

このコラムの著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

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