「親子だけの関係」から脱却する思春期…戸惑いながらも大切にしたい新しい距離感とはーー精神科医・田中康雄先生
ライター:田中 康雄
乳児期から学童期(0~12歳ごろ)というのは、親が子どもの発達に寄り添ったかかわり方を模索する時期でした。それが思春期(12~17歳ごろ)になると子どもがSNSやオンラインゲームにはまり始めた、部屋にこもりがちになった、そもそも口をきいてくれないので何を考えているのかわからない…。そんな思春期特有の変化に戸惑う親御さんは多いもの。
ここでは、思春期の子、あるいはこれから思春期を迎える子の親に向けて、子どもとの「距離感」についてお話ししたいと思います。
執筆: 田中康雄
北海道大学名誉教授
医療法人社団倭会 こころとそだちのクリニック むすびめ 院長
発達障害の特性を持つ子どもとその家族、関係者と、つながり合い、支え合い、認め合うことを大切にした治療・支援で多くの人から支持されている。
医療法人社団倭会 こころとそだちのクリニック むすびめ 院長
親子関係が「上下の関係」から「水平の関係」へ
まだ小学生のうちは、子どもに言うことをきかせる、というような「上下の関係」でできていたことが、子どもが思春期になると、徐々に逆転したり、「水平の関係」に近くなったりします。しかし、今までのように「なんで親の言うことを聞かないんだ!」という上下の関係から強く出ると、ますます親子関係がぎくしゃくとしてしまう……。とても難しい時期です。
ですから、思春期には親は子どもに対して過度に支配的にはならないように、踏み込みすぎて衝突してしまわないように、といった〝距離感〞が必要になってきます。
ですから、思春期には親は子どもに対して過度に支配的にはならないように、踏み込みすぎて衝突してしまわないように、といった〝距離感〞が必要になってきます。
親に求められる距離感は「斜め後ろからのかかわり」
思春期には、多くの子が「自分は周囲にどう見られているか、どう評価されているか」ということを強く意識するようになります。同時に、親には精神的に援助を求めない、八つ当たりしても助けてもらおうとは思いたくないのも思春期です。親から離れ、自身と向き合い、あがき、もがき続ける段階と言えるでしょう。
そこで「いかに、子どものことをうまく目の片隅に入れながら撤退していけるか。それもどこか斜め後ろからの関係で」というのが、大きなポイントになってくるのです。
「斜め後ろからのかかわり」とは、親がなんとかする、というかかわりからは脱していきながらも、いかに子どもの悩みに距離をもって冷静に対応できるか、というものです。塩梅が難しいですが、この時期に欠かせない視点です。
そこで「いかに、子どものことをうまく目の片隅に入れながら撤退していけるか。それもどこか斜め後ろからの関係で」というのが、大きなポイントになってくるのです。
「斜め後ろからのかかわり」とは、親がなんとかする、というかかわりからは脱していきながらも、いかに子どもの悩みに距離をもって冷静に対応できるか、というものです。塩梅が難しいですが、この時期に欠かせない視点です。
思春期は「親子だけの関係」から脱却する時期
これまでは子どもにとって親が重要な他者でしたが、その親子だけの関係から脱却するには「次の関係」が作られる必要があり、それが思春期なんだと僕は考えています。親と距離を取ってできた「穴」を埋めるためにも、友達や信頼できる人とつながることが大切なのです。ともかく一度親から離れないと、新しい関係に飛び込んでいけないということではないでしょうか。
親も新しい関係も、両方とも同時にかかわり同時に進行させるような「二股」の関係は難しいのです。
友達や信頼できる誰かがいることで、親と離れられるのです。これが、思春期においてとても重要な課題となります。
親も新しい関係も、両方とも同時にかかわり同時に進行させるような「二股」の関係は難しいのです。
友達や信頼できる誰かがいることで、親と離れられるのです。これが、思春期においてとても重要な課題となります。