発達が気になる小学生の子育てで迷ったら――『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』監修者、鳥取大学大学院教授・井上先生インタビュー

2020/02/04 更新
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発達障害、あるいはグレーゾーンの子どもを育てる保護者や支援者に向けてのヒントが散りばめられている書籍『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』。困りごとに対しての複数の対処法、先輩保護者のコラムなどを豊富なイラストとともに掲載した本書を監修した鳥取大学大学院教授で臨床心理士の井上雅彦先生に、本の活用方法や本に込めた思い、また発達障害やグレーゾーンの子どもを育てている保護者の方へのメッセージなどをインタビューしました。

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保護者の声から生まれた『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』

発達が気になる子どもの保護者や支援者のためのポータルサイト「発達ナビ」には、保護者の方からたくさんの悩みや不安の声も寄せられます。

「これから始まる小学校での生活、ちゃんとやっていけるのだろうか」「学校から呼び出しばかり。高学年になってもこのままなのだろうか」「個性は大切にしてほしいけれど、集団生活にもなじめるように折り合いをつけていってほしい。

そんな悩みに応えるために生まれたのが、『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』です。
発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方
井上 雅彦 (監修)
すばる舎
発達ナビで募集したアンケートには、ユーザー670人以上の声が寄せられました。
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本書では保護者の皆さんから寄せられた悩みをもとに、「家庭習慣の悩み」「日常生活の悩み」「学校生活の悩み」「対人関係の悩み」「学習・運動の悩み」の5つに分類し、カテゴリーごとのさまざまな困りごとと、それに対する3つの対処法を掲載しています。

また、「うちではこうしました!」のコラムでは実際に発達障害やグレーゾーンの子どもを育てている家庭でうまくいった実践例も紹介。困りごとに対してたくさんの解決法があることがわかります。

「もちろん、そのすべてを実践してもうまくいかないこともあるでしょう。でもいろいろな方法を試し、成功と失敗を繰り返しながら、自分の子どもを理解することが大切です」

そう話すのは、本書を監修した鳥取大学大学院教授で臨床心理士の井上雅彦先生。今回は井上先生にお話を伺いました。

発達障害の子どもやグレーゾーンの子どもが抱えがちな困りごとの対処法を紹介

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編集部(以下、――):まずは、この『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』はどんな方に届けたいという思いで監修されたのでしょうか?

井上先生:一番は保護者の方々ですね。「発達ナビ」を見ている、発達障害やグレーゾーンのお子さんを育てていらっしゃる保護者の方が手にとって、毎日子どもと向き合ううえでのヒントにしていただけたらと考えました。また、保護者の方だけではなく、小学校の先生や放課後等デイサービスなどで子どもや保護者を支援する立場の方にも読んでいただけたら嬉しいです。保護者はこんな不安を抱えているんだなとか、お家ではこんなことをしようとしているのかなどの理解にも役立ててもらえればと思っています。

――:この本のタイトルは『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』となっています。「グレーゾーン」という言葉をよく聞くようになりましたが、改めてどのような子どもたちのことをいうのかを教えていただけますか?

井上先生:発達障害は診断の基準というものが明確に定められています。その診断の一部には該当するけれど、診断基準は満たさないという子どもたちを一般的に「グレーゾーン」と読んでいます。

――:グレーゾーンの子どもやその保護者はどのような不安や困りごとを持っているのでしょうか?

井上先生:一番は、診断のある子やその保護者は支援を受けることができますが、グレーゾーンは診断があるわけではないので、一部の特性があったとしても、支援を求めにくく、すべてを保護者の方が抱えてしまいがちになります。診断がないからといって、決して診断がある子どもよりも悩みが少ないというわけではないんです。そこにはまた違ったストレスや不安があります。

――:そんなグレーゾーンのお子さんを育てるうえでもたくさんのヒントが書かれているのが『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』なんですね。

井上先生:はい。診断がある子どもとグレーゾーンの子どもとで、困りごとに対する解決方法が違うかといえば決してそんなことはありません。いろいろな対処法を掲載していますので、自分の子どもに合ったやり方を本書で探したり、参考にしたりしながら、発達障害と診断されている子はもちろん、グレーゾーンや発達がちょっと気になるという子の子育てにうまく役立ててもらえれば嬉しいです。

完璧な親はいない。子育てのヒントを探して

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――:タイトルに「小学生の育て方」と入っていますが、やはり「小学校の壁」は発達障害やグレーゾーンの子どもや保護者にとって高いものなのでしょうか?

井上先生:まず、6年間ってすごく長い期間ですよね。1年生と6年生では体の成長も心の発達もまったく違います。高学年からは思春期に入りますし、それぞれの時期で違った悩みを抱える保護者が多いのではないでしょうか。
また、幼稚園や保育園との大きな違いは学習が入ってくること、集団行動がより求められることなどです。そのなかで友人との人間関係を築く必要もあります。そんな小学校生活のなかで親子がよく直面する問題と対処法を紹介したのが本書です。

――:それでは本書の活用方法を教えていただけますか?

井上先生:就学前のお子さんをお持ちの保護者の方は、漠然とした不安を抱えている方が多いと思います。本書を読むことで、こんな困りごとが出てくるんだなと見通しがつくと、少しは安心できるんじゃないかと思います。
また、今まさに小学生の子育てをしていて、いろいろな困りごとに直面しているという保護者の方は、本書を読むことで1つの悩みや困りごとにはいろいろな原因があって、対処法も本当にたくさんあるということが分かっていただけるはずです。「うちの子はどんなことが原因でつまずいているんだろう」と考えられるようになれれば良いのかなと思っています。

――:1つの悩みや困りごとに3つの解決法が載っているので、本当に対処法は多彩なのだなと感じました。

井上先生:そうですね。でも3つのどれかをやれば、あるいはすべてをやっても、必ず問題が解決するというわけではありません。実際に小学生の子育てをしている家庭での実践例を載せたコラムも併せて参考にしながら、子どもに合った方法を見つけていただければと思います。そのためには、いろいろなことを試して、数多くの失敗を重ねることも大事です。

――:本書の特徴はどんなところでしょうか?

井上先生:もともとは「発達ナビ」に集まった保護者の方の悩みや声からできた本なので、発達障害の特性から入るのではなく、「家庭習慣の悩み」「日常生活の悩み」「学校生活の悩み」…など、悩みの種類別になっています。ですので発達障害の知識のあるなしに関わらず、誰が読んでもとても分かりやすいはずです。本の冒頭部分から読まなくても、今感じている悩みに関する項目から読んでいただくこともできます。
また、イラストを多く挿入したのも特徴のひとつです。イラストで図化されることで、対応方法も理解しやすいつくりになっているんです。

――:読むごとにさまざまな気付きがありそうですね。

井上先生:いろいろな気付きがあるとは思いますが、すべてを完璧にできる保護者はいません。本書を参考にしながら、それぞれに合った子どもとの向き合い方を見つけて、親御さんも少し肩の力を抜いて子どもと向き合うことができるようになればいいんじゃないかなと思います。

子どもにも保護者にも大切な「スモールステップ」

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――:本のなかにも「スモールステップ」という言葉がたくさん出てきますが、発達障害やグレーゾーンの子どもたちにとって、「スモールステップ」はやはり大切なものなのでしょうか?

井上先生:子どもたちにとっても小さな成功体験を重ねていくことは大切です。ですが、それと同じくらい保護者にとっても重要な意味があります。失敗が多くなってクラスや集団のなかでついつい自分の子どもを他の子どもと比べてしまう…というときにも、自分の子どもの昨日よりも今日の一歩、つまりスモールステップを評価することで、だんだんと他人と比べるという呪縛から保護者が解放されることがあるんです。最終的には苦手なことがあっても良いと考えられるとさらに楽になると思います。

――:なるほど。子どもにはもちろん、保護者の皆さんにとっても「スモールステップ」は大切なものなのですね。

井上先生:そうですね。すべてのことを、ほかの子どもたちと足並み揃えてできるようにならなくてはいけない…ではなく、苦手なことがあっても、得意なことを伸ばしてあげればいいと考えられるようになることはとても大事なことだと思います。

――:得意なことを伸ばしたり、あるいは得意なことを見つけるために保護者ができるサポートはありますか?

井上先生:保護者が価値を見出せない子どもの好きや得意は見捨てられてしまうことが多いんです。たとえば、「恐竜の名前をたくさん知っていても、それは仕事に結びつかないでしょ」…という具合に。ゲームやアニメのキャラクターだったら尚更です。でも、それが本人の気持ちの安定に役立っていたり、派生して別の興味に繋がるかもしれません。中学や高校になっても自分の進路をすんなり決められるわけではありません、小学生ならなおのこと、気の赴くままに「好き」を探求させてあげても良いと思います。たとえ、それが保護者の皆さんから見て、あまり価値のないことだと感じたとしても。

――:きっと「好き」を探求することを見守るというのは、言葉にするほど簡単なことではないのでしょうね。

井上先生:今この瞬間を生きる子どもに対して、保護者の皆さんは将来のことを考えてしまいますからね。でも、一般的に天才少年、天才少女と呼ばれていた子どもが必ずしもそのまま大人になるわけではないように、子ども時代の「良い状態」が永遠に続くわけではありません。その反対も同じです。私たち大人は将来のためにあれをやらせなければ、これができた方がいい…と考えてしまいがちですが、「今」は将来のためにあるわけではないんですよね。あまり将来のことばかり考えすぎずに、小学生なら今の小学校生活を楽しむということに注力した方が良いと思います。

――:最後に発達障害やグレーゾーンの子どもを育てる保護者の皆さんにメッセージをいただけますか?

井上先生:保護者の皆さんが「苦手なことがあっても良い」「すべてのことをほかの子どもたちと同じようにできるようにならなくても良い」…というふうに考え方を変えることは、簡単ではないと思います。その考えに至るには、いろいろなことを試し、成功も失敗も重ねることが必要です。そのために大切な、自分の子どもを理解することや、その子に合ったさまざまなことを試すということに、この『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』を役立てていただければなと思います。そして、何より少しでも子育てが楽になったと感じてもらえるのが一番嬉しいことですね。

6年間の小学校生活、親子に寄り添い伴走する一冊

本を手に持つ井上先生
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『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』を監修した井上先生にお話を聞いた今回のインタビュー。本書の特長や活用方法などをたっぷりとお聞きしました。

先生のお話のなかで見えてきたのは、発達障害やグレーゾーンの子育てをするうえで大切なのが自分の子どもを理解すること、そして困りごとにはさまざまな原因があり、また対処法も多彩であるということ。

『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』は、6年間にわたる小学校生活のさまざまな場面で子どもや保護者の悩みや困りごとに寄り添ってくれる1冊です。

発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方

発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方
井上 雅彦 (監修)
すばる舎
撮影/鈴木江実子
取材・文/秋定美帆
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