自閉症息子が初めて流した「別れの涙」――今まで感情を表さなかった息子の心の動きを感じた日

2020/03/03 更新
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息子は「これが好き、これが嫌だ」など「こうしたい」という意思をなかなか示しません。けれども、決められたスケジュールが変更になると不安になり、パニックを起こします。だから私は「自閉症の息子は心に思うことよりも、予定通り実行することが優先なのだ」と勝手に思っていました。しかし…

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立石美津子
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スケジュールが何よりも優先

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。
自閉症の子どもはなかなか自分の意思を表には出してくれないように感じます。少なくとも息子はそうでした。

例えば、夏休みの最終日8月31日に「明日からまた学校始まるね。行きたくなかったらお休みしてもいいんだよ」と言うと「明日から学校に行く」と淡々と答えます。でもこれは、「学校に行きたい」と思っているわけではなく、登校する予定になっているので「明日は学校に行く日だ」と言っているだけでした。ですから、本当のところどう思っているのかわからなかったのです。

起床時、かなり眠たそうなときでも、私が「もっと寝ていていいんだよ、遅刻してもいいんだよ」と言ってもサッと起きます。「眠たい」ということよりも予定実行!

これらの行動を見て「自閉症のある子には、こうしたいという欲求の感情があまりないんだ。スケジュールを厳守することが優先なんだ。予定が変わってしまう不安感の方が自分の意思よりも勝るんだ」と私は思っていました。

予防接種、予告したらパニックにならず

インフルエンザの予防接種に行ったときのことです。「痛い注射をしにいくことなんて、わざわざ事前に予告しておかないで、黙って病院に連れて行って、いきなり注射してもらった方がいいに決まっている」と思い、何も言わずに連れて行ったことがあります。

すると、本人の予定になかった注射をされて、大パニック。注射後も待合室の窓やドアに頭突きし、暴れ馬のようになりました。痛みでこうなったのではなく予定外のことをされてパニックを起こしました。

こんなことがあってからはカレンダーに注射する日の〇をつけ、何日も前から予告するようにしました。すると痛さで一瞬大騒ぎはするものの、パニックにまで至ることはなくなりました。
幼いころの息子
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そんな経験があったので、私は「自閉症児にはこうしたいという感情はない。スケジュールがなによりも大事」と解釈するようになっていました。

放課後等デイのスタッフの送別会で

ある時、私の考えが間違っていることに気が付きました。息子が通所していた放課後等デイサービスの出来事です。5年間子どもたちの面倒を見てくれた、スタッフが退職することになりました。
信頼している支援員とのツーショット
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退職するのは、息子を銭湯に一緒に連れて行ってくれ、公衆浴場のマナーを教えてくれるなどした、息子がかなりなついていた職員でした。
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最後の出勤日、お別れ会があったようです。その日、連絡帳を開いてみたらこんな風に書いてありました。

「今日、お別れパーティーをやりました。おやつを食べたあと一人ずつ挨拶をさせました。ふと見ると、立石君の目から涙が出ていました。本人もびっくりしたのか『目から水が出てきた!』と驚いていました。その様子に思わず感動して僕も泣いてしまいました。他のスタッフも感動していました。すぐに報告したくて書かせていただきました。
本当に、優しい子ですよね。ますます好きになりました。」


私も驚きました。パニックで泣き叫ぶことはあっても、お別れが悲しくて泣く様子はそれまで見たことがなかったからです。

息子が5歳のとき、卵巣嚢腫の手術のため私が5日間入院した時も私と離れて泣くことは一切ありませんでした。(多分、私が退院する日が息子のスケジュールに入っていたので、泣かなかったのだと思います)

連絡帳に書かれていたことで、「表面には表れにくいけれど、自閉症のある子にも悲しい、嬉しいなどの感情はしっかりある」「スケジュールが最優先なわけではない」のだと気づきました。なかなか、その心がどこにあるのか、掴みどころのない息子ですが、きっと色んなことを感じて日々過ごしているのだと思いました。
成長した息子
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このコラムをかいた著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムをかいた人の著書

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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