授業参観でただ一人間違える自閉症息子の姿を見て――エジソンの母のように「息子の一番の理解者」でありたいと思った理由

ライター:立石美津子
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興味の対象があちこちに行き落ち着きのなかった子が、好奇心旺盛な長所を活かし将来、ベンチャー企業の社長になった、舌が過敏で偏食の激しかった子が、味に敏感なことを活かし料理人になった、という話を耳にすることがあります。有名な発明家のエジソンも学校が合わず母親が教え、立派な発明家になったといいます。

息子が中学生のころ、授業参観での光景を見て、私はエジソンの母のように息子に合った教え方をしてやりたいなと感じたことを思い出しました――。

エジソンの伝記を読んで

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルの立石美津子です。

息子が幼かった頃、私は自閉症の息子が「エジソンのようになるかも…」と思ったことがありました。
エジソンが生きた時代には“発達障害”という概念はありませんでしたが、エジソンの伝記を読むと、幼い頃、決して褒められるような子どもではなかったとありました。

小学校時代の有名なエピソードに次のようなものがあります。

算数で粘土を使って“1+1 = 2 ”を教えた担任教師に、エジソンは「1+1 の答えは 1 である」と言いました。粘土と粘土をくっつけたら 1 になるというのです。幼いエジソンを担任の先生は叱り飛ばしました。

母親は息子の発想力を理解しない学校に怒り、彼を退学させ、家で勉強を教えることにしました。
その後、エジソンは私たち人類の生活を変える、電球の実用化を果たしました。

授業参観で――奇数・偶数の学習

中学の頃、息子が在籍していた特別支援学級の授業参観のときのことです。参観したのは数学の授業でした。内容は小学校で習う算数の単元、『割れる数、割れない数(偶数・奇数)』でした。

先生が黒板に磁石を4個貼り「皆さん~これは割れますか?割れませんか?」と質問しました。「割れます~!」と子ども達から元気な回答。私は後ろで見ながら「正解の確率は50%、きっとまぐれでしょ」と思っていました。

次に先生は磁石を6個貼り「皆さん~これは割れますか?割れませんか?」と質問しました。「割れます~!」と子ども達から元気な回答。

「まぐれではないぞ」と思い直しました。息子は小学校の特別支援学級から中学の特別支援学級へ進級しましたが、クラスの中には小学校時代、6年間通常学級で学んできている子もいました。そうした子どもたちにとってはすでに習っている単元でもあり、正解できるのでした。

でも、息子は足し算も引き算も曖昧な状態なので、皆に合わせて口パク状態でした。

指名されてしまった!

息子以外にも口パクで適当に他の生徒の真似をして答えている子どももいました。参観日だったので先生も張り切っていたのでしょう、今度は一人ずつ指名しました。

磁石を5個貼り
先生「A君~これは割れますか?割れませんか?」
A君「割れません」
A君は正解しました。

いよいよ息子の番になりました。先生は磁石を1個貼り「立石君、これは割れませんか?割れますか?」息子は「割れます」と答えました。

先生は怪訝な顔をしました。
磁石
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でも私にはわかりました。きっと磁石でもトンカチで割れば割れるから割れると答えたのだと…。そしてそのとき、エジソンが2つの粘土の塊をくっつけたら1つになると答えた場面が重なりました。
磁石を金づちで打つ様子
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先生は今度は磁石を3個貼り、「割れますか?割れませんか?」と息子に質問しました。すると、「割れます!」と答えました。
3つの磁石
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息子はきっと「2個と1個に割れる」と思ったのに違いありません。

自閉症スペクトラムの子は曖昧な表現がわかりません。「お風呂のお湯を見てきて」と言われ、溢れたお湯をただ見てくるだけ、「お風呂に行ってお湯を見てきて。溢れていたら止めてきて」と言わなくては通じないことも多いです。

数学の授業でも磁石など抽象的な物に置き換えないで飴の絵を描いて、「友達と同じ数に分けることができますか?」と質問してもらえたら理解できたのではないかと思います。
次ページ「先生を責められない」

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