子どもの心を傷つけない

課題に取り組んでみると、もしかしたら「見つける」は得意だけれども、「写す」は苦手という得意不得意が出てくるかもしれません。苦手意識が強ければ、できるところの課題から取り組んでもらえればいいと思います。

なお、テストができなくて傷つく子どもはいますが、コグトレができなくて傷ついたという話はあまり聞いたことがありません。コグトレはパズルやゲームのような課題なので、学習という感覚があまりしないのでしょう。子どもたちは楽しみながら取り組んでいます。
自然に認知機能を鍛えていけるのです。

勉強嫌いな少年たちが変わった瞬間

また、学習は楽しんで取り組める工夫があると、子どもの力を伸ばせるはずです。そう感じるのは、私の経験にもとづきます。

少年院では、勉強嫌いで授業などまともに聞いたことのない少年たちに多数、会いました。私は彼らに教えることをあきらめて、「じゃあ、私の代わりに授業をやってくれ」と、教師役を肩代わりさせたことがあります。

そうすることで、私の苦労を実感させようとしたのですが……意外な展開が待っていました。

なんと、授業をまともに受けようとせず、妨害すらしていた少年たちが「ぼくが教えます!」「ぼくがやります!」と率先して、教える役に就こうとしたのです。前に出て「教える」彼らの姿はとても楽しそうでした(実は、人に教えてみたい、頼りにされたいという気持ちを強くもっていたのです)。

教わる側の少年たちも、変わっていきました。自分と同じ立場の少年から出される問題に答えられないのでは面目がないのでしょう。まじめに取り組むようになりました。

図形の模写から知る、発達の目安

最後に、子どもの発達が遅れていないか、ちょっと不安という親御さんへ。
不安を抱えつつ、かといって、知能検査を受けさせるのも抵抗がある…そんなとき、発達の程度に目安をつける簡単な方法をお伝えします。

お子さんに次のような正方形、三角形、ひし形を、見本を見ながら書かせてみましょう。
困っている子どもたちの「学力以前の力」を応援したい。遊び感覚で認知機能を鍛える「コグトレ・パズル」に込めた想い――児童精神科医・宮口幸治先生の画像
Upload By 宮口幸治
正方形は4~5歳、三角形は5~6歳、ひし形は7~8歳くらいまでに描けることが目安です。これらが描ければ、さらに次のような立体図や蜂の巣も書かせてみましょう。
立方体と蜂の巣
Upload By 宮口幸治
立体図や蜂の巣は、8~9歳くらいまでに描けることが目安です。
これらの図形が、該当する年齢を超えても描けないことが明らかであれば、そのときは念のため、発達専門外来や教育センターなどで相談されることをお勧めします。
次ページ「適切なサポートで子どもの力は伸ばしていける」

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