模範解答をかけない自閉症息子、就労を目指し懸命に取り組むけれど。母の感じる難しさと切なさと…

ライター:立石美津子
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新型コロナウイルス感染予防のため自粛生活していた時の話です。自宅で就労移行支援事業所からの課題に毎日取り組んでいました。

就職に向け、ワークに取り組む息子

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルの立石美津子です。

息子は特別支援学校高等部を卒業後、就労移行支援事業所に通所しています。先日、息子が事業所で使っているテキストを見る機会がありました。そして、息子が書いた解答が目に留まりました。
【問題】
ゴミを集めてくれる人がいなかったら、どうなるでしょう。

【息子の解答】
道路にゴミがたくさん出てしまって、集積所の看板が出るからです。

【問題】
道路工事をしてくれる人がいなかったら、どうなるでしょう。

【息子の解答】
工事中の場合は、通行止の看板が出たり、道路工事中の看板が出たりします。
【問題】
お弁当を作ってくれる人がいなかったら、どうなるでしょう。

【息子の解答】
お弁当をたくさん運び、配達をして販売する人がいて、売ったりしています。
おそらく、求められている答えは次のようなものなのでしょう。

「ゴミを収集してくれる人がいなかったら、ゴミが溜まり私達の生活が成り立たなくなります」
「道路工事をする人がいなかったら、(通行できる道路がないために)車で移動できなくなったり、(安全でないために)時間がかかったりして困ります」


テキストの中央にも太字で「仕事の中にはきつくて大変と思う仕事もあるかもしれません。でも、そういう仕事が色々な人の役に立っていることを忘れてはいけません」と印刷されていますが、そこには目が行かないのか、理解できないのかわかっていません。

そもそも、こんな模範解答が書けたら、もはや知的障害のある自閉症ではなくなると思います。

息子の答えは、ある意味正解だと感じた

私は息子の答えに「そうね。そうだよね!その解答、正解だよね」と感心しました。

「ゴミを集めてくれる人がいなかったら、ゴミが溜まり、看板だけになるよね!」
「道路工事する人がいなかったら、通行止め・工事中の看板だけになるよね!」

と思いました。

あれ、でも…!?

でも…よくよくテキストを見てみると…

息子の解答はイラストを解説しているだけでした。
そこにイラストの人がいないとどうなるかの事実を書いているだけでした。
中学の長文読解のテストのときは、
【問題】
「何故、『よほど恐ろしかったと見えた』のでしょう」

【息子の解答】
「よほど恐ろしかったと見えた」

【問題】
「なぜ泣いていたのでしょう」

【息子の解答】
「泣いていたから」

問題をそのまま写して全部×になっていました。
今回はイラストを解説しているだけなので、×になるでしょうか?

このテキストは知的障害がある自閉症の人向けではなく、障害があり、就労訓練をしている人すべてに向けたテキストです。曖昧な言い方がわからない自閉症の人にはとても難しいと感じました。
次ページ「同じような例は身近にもあるけれど」

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