自閉症息子の「親なきあと」をどう守る?子ども名義の口座は15歳までに?成年後見制度での思わぬトラブルも――みなさんに伝えたい備えについて

ライター:立石美津子
自閉症息子の「親なきあと」をどう守る?子ども名義の口座は15歳までに?成年後見制度での思わぬトラブルも――みなさんに伝えたい備えについてのタイトル画像

親なきあとのことを考えて、子ども名義の通帳をつくりせっせと貯金をしていても、それを我が子のために使えなくなるという話を聞きました…。

毎月の楽しみが奪われる?

ある勉強会で聞いた話です。

生まれつき障害のある女の子がいたそうです。その子の髪の毛は天然パーマでお手入れが大変だったそうです。また、本人はこのことをとても気にしている様子でした。

母親は娘が幼い頃から月一回、美容院に連れて行き、ストレートパーマをかけてやっていました。娘にとっても美容院に出かけていき、お気に入りの髪質にしてもらうことが日々の生活の中の大きな楽しみになっていました。

娘の通帳にコツコツ貯めていたけれど

母親は自分が亡くなったあとのことを考えて、娘の名義の通帳をつくり幼い頃から貯金していました。

月日が流れ、娘は20歳を迎えました。字を書けず、言葉の発達も遅れていたためさまざまな契約をしてもらうため、また財産管理をしてもらうため父親が亡くなったことをきかっけに、成年後見制度を利用して後見人を付けることにしました。

ところが、ところが思わぬ事態に陥りました。20歳になったら保護者はたとえ子どもが重い障害があっても親権を失います。

親権を失っていても、親がキャッシュカードでお金をおろすことは可能です。ところが、このご家族は家庭裁判所が決めた成年後見人(法定後見)をつけたため、成年後見人が娘の財産の管理をすることとなりました。

後見人は「月一回ストレートパーマをかけるなんて贅沢なお金を使い方だ」と考えたのでしょう。それを目的とした貯金をおろすことができなくなってしまいました。

実は成年後見人は一度付けると外すことはできません。また「この成年後見人とは金銭感覚など価値観が合わないから別の人に変えてほしい」と家庭裁判所に願い出ても、後見人を変えることはよほどのことがない限り、できません。

母親は「コツコツ娘のために貯めてきたお金を、娘のために使えないなんて」と悔やんでも後の祭りでした。

成年後見制度がよくないということではありません。この制度は親であっても、子どものお金を着服できないようにする、あくまでも当事者(=障害のある子)の財産を守るためにある制度です。だから、悪い制度ではないのです。

ただ、私見ですが、障害のある子どもの場合、成年後見人は保護者が元気なうちは付けないで、保護者がいよいよ寿命が近いなと思ったら付けるのが賢明な選択だと思います。

また、子どもが未成年者のうちにしかできない親権を使った任意後見契約『親心後見』も選択肢の一つではないかと思います。

15歳までに子ども用の口座をつくろう

子どもの金銭管理について、もうひとつみなさんに提案したいことがあります。20歳になって障害基礎年金を受け取るようになったら、振込先として本人名義の通帳が必要になります。

但し、ひとつ気を付けておかなくてはならないこと。それは、子どもが成人すると親権がなくなるので、子ども用の口座を新しくつくったり、引き出したりすることは本人でなければできなくなることです。

従って、成人するまでに、子ども名義の通帳をつくっておいた方がよいのです。成人してからももちろんつくれますが、保護者は親権を失っているので本人が銀行に行かなくてはならない等、さまざまな規定があります。また、そこで「判断能力なし」とみなされると細かく追及されてスムーズに口座開設ができないこともあるようです。

また、銀行によるのかもしれませんが、未成年であっても15歳以上であれば本人直筆の申込用紙を自宅で書かせて保護者が持っていく必要があるようです。
字が書けない場合、困ったことになります。15歳になるまでにつくっておいた方がよいでしょう。

さて、子どもが幼いうちから本人名義の通帳をつくっている家庭も多いではないでしょうか。ただ、バラバラと色んな物(お年玉とか)が入っていると、障害者基礎年金のお金や障害者雇用枠で就労した時の報酬などとごっちゃになります。

本人にとってはわかりにくくなるので、15歳になる前に1円だけでいので、少額を入金して、銀行口座を別につくっておいた方がよいと私は思っています。
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