親族は後見人になれるのか

保護者が亡くなったあとに「お店を開店するから、お金を貸して」と後見人である兄弟が障害のある子の財産を使う例があるそうです。

また、兄弟姉妹がそんなことはしない人で、障害のある子の財産を守る人であろう人で「親なきあとの後見人になってほしい」と思ったとしても…

資産の金額は自治体により多少前後するようですが、当人(=障害のある人)の資産が500万円以上あったら親族は後見人になれず、弁護士、社会福祉士、司法書士、行政書士などの第三者が選ばれることになっています(地方に行くほど後見人の確保が難しいため1,000万円くらいといわれています。なお、資産とは金銭債権で不動産などは含みません)。
※また、成年後見人への報酬も必要となりますが、資産額が大きいと、報酬も高くなります。
成年後見人等の報酬額のめやす | 東京家庭裁判所
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf?fbclid=IwAR1EQsews-zJhXZ6lt4NpwYOU4AjPwnrDhWYUdhVB8xRSWlefHLvv6-3sq8
さて、後見人の決定権は家庭裁判所にあります。親族を後見人にすることを望んでいても、それが却下されたとします。でも、そのときになって「兄弟姉妹が後見人になれないのならば、後見人を付けるのはやっぱりやめときます」と申請を取り消すことができません。

「この人は、娘のことを親身になって考えてくれないから」を理由に外したり、「後見人を変えてほしい」と申請したりすることはできないのです。

どうすればよいのか

息子は将来自動車を買ったり、海外旅行したり、結婚して家を買ったりする機会はおそらくないでしょう。ですから子どもの通帳にせっせと貯金しておく必要はありません。

それから、保護者が元気なうちは、早々と後見人をつけずに子どものための一番の使い道を知っている保護者の口座に貯めておき使ったり、子ども用口座を管理できるキャッシュカードを保護者が我が子のために使ったりするのが賢明だと思います。

さて、保護者が死んだら遺言がなくても自動的に親が持っているお金は法定相続人である子ども達に相続されます。

遺言を書いて障害のある子に多く相続させようと考えていても、他の兄弟が障害のある子のお金を使ってしまうかもしれません。

ですから、保護者が平均寿命に近づいたとき成年後見人を付けたり、お金を手にして一気に使ったり、騙されたりしないように、家族信託や生命保険信託というお金を他者に管理してもらう方法を利用してもよいと思います。

さまざまな制度があるので保護者も勉強が必要ですね。

【本文の監修者】
鹿内幸四朗(しかない・こうしろう)
一般社団法人日本相続知財センター本部専務理事
※このコラムは著者の経験をもとに執筆し、その内容を鹿内氏に監修いただきました。

監修者の著書

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鹿内幸四朗
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