フラッシュバックやパニック...不登校も経験した当事者高校生が描く『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』。難しい思春期のサポートにも

ライター:発達ナビBOOKガイド
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発達障害があると、世界はどんな風に見えているのでしょう。『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』では、発達障害のあるなずなさんが高校時代に、幼少期からの自分の頭の中の様子を描いています。苦しい、つらいだけではなく、たくさんの感覚が渦巻く頭の中をマンガと文章で綴り、専門家である精神科医・松本喜代隆先生の解説とやさしいアドバイスが書かれた一冊です。

不登校になり、自分について考えるようになった中学生時代

『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』は、発達障害のあるなずなさんが高校時代に、幼少期からの自分の頭の中の様子を描いた一冊です。「私の場合」として、18のエピソードが紹介されています。
発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい
なずな (著), 松本喜代隆 (著)
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著者のなずなさんは、2001年生まれ。現在は、通信制高校を卒業し、体力の回復を目指しながら夢に向かって進んでいます。5歳で高機能広汎性発達障害(ADHD傾向)と診断されたなずなさんは、小学校1年生のときは通常学級に在籍しながら週1、2時間ほど通級指導教室に通い、その後、学校の判断で通級指導教室に通わなくなりました。

でも、だんだんほかの人と関係をつくることが難しくなり、中学時代に不登校となります。そして、中学1年生のとき、ある人との出会いが転機となり、自分について考えるようになったと言います。中学2年生ごろから、「私の特徴」について絵や文章にするようになったそうです。

なずなさんは、「自分の特徴」を自分で見つめることによって、誰かから示唆されたわけでもなく、自分で自分について知り、自分の対処法を見つけていきました。この本では、なずな さん自身が、自分の世界をマンガと文章で説明し、対処法を紹介しています。そこに、なずなさんの主治医である精神科医の松本喜代隆先生が、キーワードごとに一般的な解説や、対処法のヒントを挙げています。そのキーワードとは、「フラッシュバック」「パニック」「こだわり」「感覚過敏」など、発達障害のある人の困りごととしてよく耳にする言葉たちです。

たとえば、なずなさんによる「フラッシュバック」の表現はこんな風。海に一度流したはずの思いが、大きな波となって戻ってくる感じ、としています。
8ページより
8ページより
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このように、思春期であり、心身ともに成長盛りの内なる世界をオリジナルの絵で表現しています。ただ、これはあくまで、なずなさん個人の頭の中の世界。発達障害のある人すべてが、同じような映像を頭の中に描くわけではありませんし、考え方も違うでしょう。それでも、なずなさんが描く世界はとてもわかりやすく、読む人への説得力があります。マンガだけでなく、文章でも頭の中の様子は書かれています。

忙しい中に、平和であたたかく穏やかな世界を持っている

ところで、発達障害のある人の頭の中の世界というと、どうしても「パニック」「フラッシュバック」など、つらい側面に注目しがちです。その一方で、なずなさんはとても楽しい世界をもっていると言います。
30ページより
30ページより
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たとえば、自分がとてもこだわっているものを日常生活の中に見つけると、背中に電流が走るというのです。これは、「理由はわからないけれどとにかく好き」という感情の、とても強い表現なのかもしれません。
31ページより
31ページより
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発達障害のある人の頭の中にあるのは「つらい」「苦しい」の情報だけではなく、ほかの人とは違う観点からの「楽しさ」や「面白さ」、発見で満ちています。だから、とても「忙しい」のです。これは疲れるでしょう、ということもわかります。

自分なりの「工夫」を、自力で見つけ出していく姿に寄り添うと言うこと

精神科医の松本喜代隆先生によって、なずなさんの頭の中はこのように解説されています。
◎頭の中は大忙し
ひとつの部屋を思い浮かべてみます。その部屋は、たくさんのものであふれています。これらのものは、出没自由でそれぞれが気まぐれに出たり引っ込んだり、全部消えてしまうこともあります。壁や天井には、これまた出没自由な色鮮やかなポスターやイラスト、張り紙だらけです。1枚1枚にいい思い出や苦しい思い出があるので、目に入るとたくさんの記憶や感情が押し寄せてきます。
このように、頭の中は、うれしくなったり、不安になったり、悲しくなったりと、大忙しなのです。(60ページ)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4892402478
さらにキーワードごとに、どう対処したらいいかについて、松本先生からのヒントがやわらかい表現で書かれています。

たとえば、この忙しい頭の中の状態に振り回されないために、「ヒント1 楽しみにかえていけたら」「ヒント2 ささやかな作業を」という対処法が紹介されています。

ヒント1では、「次に何がやってくるかわからない状態を『イヤだイヤだ』と思うのではなくて、『ちょっと楽しみにしてまちかまえる』くらいの考え方の方が、役に立ちます」とあります。また、ヒント2では、疲れているときには誰かと一緒に何かをこねたり、手触りのいいものにふれたりするような作業がすすめられています。

こうしたヒントは、思春期の多感な思いに寄り添うもの。「こうすべし」と決めつけた言い回しではなく、「~かもしれません」「~と思います」といった言葉で書かれたヒントを読むと、なずなさん自身がどう思いどう行動するかを、周りで見守る人は尊重すべきなのだと気づかせられます。

実際、なずなさんは、自分なりの方法で忙しい頭の中に振り回され過ぎないような「工夫」を自分で見つけ出しています。たとえば、「集中力の管理、調節をすることは、なかなか難しいのですが、私なりの方法で『はじめから、少ない勉強量を決めて取り組む』を実践してみました」(51ページ)というように。

こうした工夫は、トライアンドエラーで見つけていこうと言われますが、その様子をなずなさんはこんな風に表現しています。
49ページより
49ページより
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あくまで、成長する主体は本人。周りの大人は、先回りしたアドバイスをすることよりも、見守りながら寄り添うことが大切だということを教えてくれるようです。

家族との思い出がベースになり、家族以外の人との出会いが思春期の心を成長させてくれる

頭の中は、ときには忙しくない状態になるようです。それは自分でコントロールしておだやかな状態にしているわけではないけれど、なずなさんは頭の中が静かな時間を十分に味わいます。
57ページより
57ページより
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発達障害のあるなずなさんの頭の中は、決して忙しいだけではなく、こんな静かな時間もくれるのです。この「おだやかな思い出」に浸るときに思い浮かぶのは、自然の中の光景であり、お母さんと一緒に歩いた晴れた日のイメージです。「ことばでは表せない 私の心に強く刻まれた おだやかな昔の思い出」と表現しています。つらくこわい記憶のフラッシュバックとは真逆のものとしてあるのが、こうしたおだやかな思い出なのかもしれません。

なずなさんは中学1年生のころにある女性と出会い、その人との交流が大きな転機になったと本の冒頭および「人に支えられ」の項目に書いています。その人は、頭の中がごちゃごちゃになって、息ができないくらいにおぼれそうになったなずなさんを救い出してくれたそうです。
109ページより
109ページより
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その人は医師やカウンセラー、学校の先生でもなさそうです。その人との出会いによって、なずなさんは成長しています。

思春期になると誰もが、保護者以外の人との接点が大切になっていきます。なずなさんにとって、「おだやかな思い出」で一緒にいるのはお母さん。けれど、中学生以降、大きく成長させてくれたのは家族以外の存在だったようです。

発達障害のある子どもの思春期を見守るためのヒントが詰まった本

発達障害のある人の頭の中は、大変なことばかりではないからこそ、忙しいということを教えてくれる『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんか楽しい』。あとがきで、松本先生はこのように読者へのメッセージを書かれています。
この本が、まだ小学生の子どもたちや、中学生、高校生の子どもたち、そして、家族のみなさん、学校の先生方、すべての人にとって、温かい木漏れ日がさすような、小さな救いのようなものであればいいかなと思います。(126ページ)
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この本は、なずなさんの成長の様子を、当人が描いたマンガで読める貴重な記録です。たしかに個人的な経験ですが、松本先生の解説・ヒントとともに、誰が読んでも参考になることがあふれています。子どもと大人の境目にある思春期の見守り方も教えてくれる1冊です。

文/関川香織
発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい
なずな (著), 松本喜代隆 (著)
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