家では多弁、でも8年間も外では話さなかったクラスメート。数年後、「場面緘黙症」と気付いて

ライター:ひらたともみ
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家では多弁なのに幼稚園や小学校ではひとことも喋らなかった、息子の友達Hくん。後に、「場面緘黙症」という症状があることを知りました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
幼稚園でHくんに叩かれているリクくん
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幼稚園の先生にHくんのことを相談するひらたさん
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家では多弁?どうして外では無言なの…?

次男リクの幼稚園の友達の中に、「ひとことも話さない」という子がいました。
返事もしないし、笑い声ひとつあげない。
イエスとノーは、Hくんが首をふるか縦にうなずくかで周囲が判断していました。

話すというコミュニケーションができないこともあり、言葉で「嫌だ」と伝えられず、叩く・押すなどしてしまうことがあったHくん。
ある日、リクが転倒しておでこを縫うケガをしてしまいました。
病院で治療を受けたため、園がHくんの家庭に報告。
その日の夜に、Hくんとお母さんが謝罪にやってきました。
お母さんと一緒に誤りに来たHくんだが、謝ることができない
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Hくんはやはり無言のままです。
お母さんは必死に、Hくんに謝るよう促しましたが、最後までひとことも言葉がでません。
お母さんによると、家では多弁で、弟ともよく怒鳴りあうほどの兄弟ケンカをするそう。
その日もリクに謝る練習を何十回もしてきたらしく、お母さんもどうして外でひとことも話さないのか不思議で仕方がない。
こんな病気があるのだろうか…と、涙ながらに話していました。


私も、そんな病気や障害など、全く知らなかったため、ただただ不思議で仕方ありませんでした。
そしてその後、リクからまた驚きの話を聞きました。
リクくんより、Hくんの声を誰も学校で聞いたことがないと聞き驚く
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「誰もHくんの声を聞いたことがない」というまま、リクはHくんと同じ小学校に入学しました。
Hくんは相変わらず無言のままでしたが、週に一度程度、言葉の教室に通っていると風の噂で聞き、好転することを陰ながらも祈っていました。
小学校に入学してからも、無言のHくん
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小学校の6年間も、無言のHくん。そして卒業式に…!

小学校の卒業式でHくんのことを考えるひらたさん
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元気に返事をするHくん
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Hくんの返事に涙する先生や保護者たち
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この話はずいぶん前の話です。
世間が子どもの発達障害に目を向け、学校や公共の場でも、理解に努めようと踏み出したころだったと思います。

家で多弁なHくんがどうして学校で言葉が出てこないのか…。緊張なのか、シャイなのか…。どうして?いつまで?…と、家族はとても心配したと思います。
後に、「場面緘黙症」という症状があることを知るのですが、この症状に悩んでいる人たちが世の中にたくさんいることも分かりました。

この後Hくんは中学校に上がるのですが、なんと、よくしゃべる子になっていました。卒業式に初めて言葉を発したわけですが、それは私たちが考える以上のHくんの努力が詰まった返事だったと思います。

私がHくんの場面緘黙症を「不思議」に思っていたように、まだ私の知らない障害や症状のある当事者の方を、知らず知らずのうちに傷つけていることがあるのかもしれないと、場面緘黙症を知ったときに深くそう思いました。

執筆/ひらたともみ

専門家コメント(臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)

お子さんの友人Hくんの場面緘黙症についてのコラムをありがとうございます。家庭では話せていても、外では話せない。友達と放課後等に話すことはできても、学校では話せない。状態像はさまざまですが、特定の場面(特に、学校の授業など話すことが期待される場面)で話せない状態を呈する方に対して、場面緘黙症と診断されることがあります。生まれつきの障害や脳の損傷等ではなく、また、言葉の知識がないわけでも、話すことが楽しくないからでもないとされています。社交不安症の1つともいわれています。Hくんは小学校の卒業式で声を発することができましたが、そうした大事な行事でも声を出すことができない場合もあります。高校進学など環境がガラリと変わり、これまでの自分を誰も知らない環境に行くことをきっかけに話せるようになった方もいれば、なかなか大人になっても外で話すのが難しい方もいます。
場面緘黙の状態があると、「おとなしい子」やあるいは(「話して」と言っても話さないために)「反抗的な子」等、性格によるものと誤解されることが多いです。場面緘黙症は「話して」と強要しても話せるようにはならず、話そうにも話せない本人が傷つく可能性があるため、周囲の理解も欲しいところです。場面緘黙症を持つお子さんへの対応については、相談機関(スクールカウンセラーや教育相談)や医療機関でご相談ください。適切な介入・サポートがなされるとよいでしょう。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
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