「何かが違う」と発達相談に通い続け...発達障害と診断された息子。本人はどう受け止めた?

ライター:寺島ヒロ
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我が家のでこぼこ兄妹は同じ療育センターで検査を受け、2人ともASD傾向があることがわかりました。兄妹は6歳離れているので、タケルが検査を受けたときと、いっちゃんの場合ではかなり状況が違っていました。今回は兄・タケルが発達障害を疑われ、検査を受けるまでを、本人への告知のことも交えて書いてみたいと思います。

幼いころから「なんか変?」だったタケル

そわそわと体を動かしたり、いつでも自分の好きなものの話をしてしまうタケル
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他にも、先生の言ったことにあいまいなことがあると、迷ってしまって動けなくなったり、泣き始めると止まらなくなって2~3時間も声をあげて泣き続けたりと、自閉症のある子どもに特有の様子が見て取れました。
その反面、文字の読み書きは人より早く覚え、複雑なパズルゲームをこなし、人の体の臓器や働きについての解説は「ハカセ」と呼ばれるほど。会話も他の子どもとの間に成り立っているかは怪しいですが、一応先生方の指示は意味を汲み取れており、返答も明朗でした。なので、私はかなり前から「この子には高機能自閉症の傾向があるな…でも、こんなにしっかり喋れるのだから、障害というわけではないのかな?」と思っていました。
私は学生時代に心理学の授業を取っていたので、発達障害についても少しは知識があったのです。でも、当時はアスペルガー症候群とも言われていた「喋れる自閉症」の事を、私はまだ知りませんでした。
特別な配慮が必要なのでは?とは思っても、何をすればいいのかわからなかった私
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実は、私の実家の一族には多くの教育従事者がいます。何度か養護に詳しい親戚らに意見を聴いてみたこともあるのですが、私の息子のような子どもは本では読んだことはあるが珍しく、実際にはほとんど見たことがないとのこと。
 
「そんなに珍しいのなら学校も、自治体も頼りにならない。私が上手く育てていかなければ!」
 
とは思ったものの、具体的に何をすればいいのかはわかりません。手掛かりを求めて、年に3回、市が主催する発達相談に度々足を運びました。
相談員のスタッフの方は優しく接してはくださいましたが、発達障害や自閉症については、当時はほとんどご存知ない様子でした。心理や精神の専門家というわけではなく自分の子育ての経験を元にアドバイスをするという形が主だったらしく、「しっかり喋っているから頭の障害ではない」「お母さんが社交的になって友達をつくってあげて」と言われるばかり。
何度も通って、こんなに普通と違って手がかかる部分があるんですよと訴えていると、やがて「そんなに子どもの世話が嫌なのか、こんないい子を障害者にしたいのか!」と怒られるようになってしまいました…。

そんな日々を180度転換させる出来事が…!

タケルの「特性」がはっきり分かったのは2007年、タケルが8歳のころです。懲りずに行った子どもの発達相談ででした。
子どもたちが自由に遊んでいる様子を観察しているスタッフがいて「今までと違う!」と感じた私
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そのときの相談で、ジャージ姿の支援スタッフの方に、息子の生育環境やこれまでの経緯、自閉症に特徴的ないくつかの行動があることなどをお話しました。その間、息子は他の支援スタッフの方と絵本やボールで遊んでいましたが、遊びながら行動をチェックされていたみたいです。
 
その後、医師と息子本人の面談を経て、「この場では診断はできないんですが、印象として申し上げるとアスペルガー症候群に大変近いですね。詳しく調べてみた方がいいと思いますが、どうでしょうか。県の発達療育センターであればここで今すぐ予約という形にできるんですが」ということになりました。

急・展・開!

市井の病院ではなかなか予約が取れないことを知っていたので、即申し込み!
次の週末にはもう受診できることになりました。

いよいよ受診!でも何て言って連れ出そう?

さて、ようやく療育センターの予約を取ったものの、困ったのは息子になんと説明するかです。
発達相談の方は、会場となった保健所が近所だったこともあり「タケルの成長を保健所に行って見てもらおうね」で済ませていましたが、行ったことにない場所に、車に乗って1時間半もかけて行くのですから、さすがに説明なしは無理があります。
 
いや、それ以前に何があるかわからないところに行くなんて、そんな恐ろしいことをタケルが認めるわけがありません。断固として拒否されてしまうでしょう。
そこで、急遽「告知」をすることにしました。障害かどうかこの時点ではわかっていないので告知というのも変なのですが、適当な理由をつくって療育センターに連れ出したとしても、読み書きは大人並みにできる息子のこと、院内の表示やもらうプリントから何が起こっているのか正確に察知してしまうでしょう。私たち親が信頼を損なうだけです。
センターで診察してもらおうと言うと、意外と軽く承諾してくれたタケル
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思った以上にすんなり受け入れてくれて一安心。
 
実際の療育センターでの聞き取り調査や検査にも、飽きることなく頑張って取り組んでくれました。

今、当時のことを振り返って…タケルに聞いてみた

その後、数度の診察や検査を経て、タケルは「アスペルガー症候群にごく近い状態(※現在はASDに統合)」と診断されました。
センターでテストを受けているときから発達障害の検査だということは気づいていたというタケル
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さらに… 
 
「診断結果は予想通りだったね。感想?いや別に。体重50キロの人が改めて計って体重50キロですねって言われたようなもんじゃない?」
 
と、さらっと言うのでした。

タケルの場合、「障害者」になる悩みとか葛藤はあまり感じていなかったようです。本人とって障害はすでにあるもので、診断がつかなければ消えてなくなるというものではない。診断がつけば福祉の対象にしてもらえて学校生活も配慮されるのだから、診断はついた方がいい。何を悩むことがあろうか?ということなんですね。ASDらしい原理主義的ロジカルシンキングだと思います。
しかし、このようにストレートに向き合うことができたのも、タケルの周囲に障害をネガティブに捉える人が少なく、タケル本人を可愛がってくれる人が多くいたからでしょう。
微妙な温度差はありながらも、タケルを大切に思う人たちが周囲を取り巻いています
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発達障害のことを本人にどう伝えるかは、お子さんの置かれた状況や障害の特性、そしてお子さん本人の性格によって大きく変わるため、一概に言うことはできません。ですが、どういう状況であれ、その子本人を認め、困りごとがあれば一緒に改善しようとしてくれる人が周囲にいれば、きっとなんとかなるんじゃないかなあと思います。
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