算数が苦手な子のつまずきを解消する指導のヒントが満載『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』著者インタビュー付

2021/06/08 更新
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算数が苦手な様子が子どもに見えたとき、どんな対応をしていますか。「なんでわからないの?」と思うと同時に、「どうしたら理解できるように教えられるのだろうか」と思ったことはないでしょうか。子どもの苦手なことに合わせて、算数を理解させる実践ワークだけでなく、子どもの学ぶ意欲を引き出す方法が書かれている本、『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』(合同出版)をご紹介します。

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「勉強に悩む子どもが勉強で苦しくならない」を考えて書かれた本

『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』の著者、澳塩渚さんは、学習支援教室「まなびルームポラリス」を主宰する公認心理師。大学在学中から、適応指導教室で不登校の子どもたちの支援をしてきました。適応指導教室というのは、さまざまな理由から学校へ行けない小中学生の子どもたちが通う場所のこと。そのときに、「勉強がわからないから学校へ行きたくない」という悩みを話してくれる子が多いことに気づき、勉強によって傷つけられ、勉強に悩む子どもたちにどのようなサポートができるかを考え始めるようになったそうです。

現在、「まなびルームポラリス」では、発達が気になる子たちのために、学習面だけでなく、自立していく力を育成することを目指しているといいます。
ワークつき 子どものつまずきからわかる 算数の教え方
澳塩 渚 (著), 平岩幹男 (監修), まうどん (イラスト)
合同出版
こうした背景から生まれた『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』、著者の澳塩さんにお話を伺いながら、この本がどのように子どもの学習意欲につながっていくのかをご紹介します。まずは、「算数の教え方」を本という形にまとめた経緯から伺いました。

「知育系のドリルはよく見かけますが、幼児期の数理解から始まる算数サポートの本がほしいとよく考えていました。数のつまずきは小学校に入学して算数が始まるまでは見つかりにくいものです。つまずきが見つかってもどのようにサポートするのかをまとめた本はあまりありません。サポート方法が分からなければ、支援につながりません。つまずきとサポートをコンパクトにまとめた使いやすい本を作れたらと考えていました」(澳塩さん)

算数の学習では、問題をたくさんこなしてできるようにする、という方法が一般的です。計算ドリルを繰り返しやったり、九九をスラスラ言えるようになるまで声を出して練習したり。でも、学習のつまずきは、どこに原因があるかを考えなくては、やみくもに詰め込んでもできるようにはなりません。

本書の「まえがき」には、このような言葉もあります。

ここで教える側が肝に銘じておかなければならないことは、子どもたちは「でたらめに誤るのではない」ということです。(まえがき p3より)

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/477261463X
でたらめに誤るのでなければ、誤る原因を探っていく必要があります。本書では、そんな誤る原因を丁寧に分析しています。
2021年6月12日(土)13時半から、本書の出版記念オンラインイベント(合同出版主催) 『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』 澳塩渚さん(公認心理師)×平岩幹男さん(医学博士)が開催されます。

大事な基礎となる「数理解」

誤る原因を探るときに、算数の学習の場合は、どのくらい「数理解」ができているかが重要なカギとなります。数理解とは、大きい小さいなどの概念の理解でもあります。

具体的には、巻頭の章「算数の前に」の中に、「数理解のステップ」があります。①大きい・小さい ② まとめる・分ける ③ 対応させる ④ 数えていくつ ⑤ 合成・分解 というステップで、子どもに数理解を進めることで、どこに理解しにくい点があるのかを確認することができます。
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P06 数理解のステップ
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この5つのステップを子どもが理解するために必要なサポートが、本の前半には細やかに書かれています。

「小学校1年生の算数の内容は、就学前に数につながる遊びなどをどのくらい経験したか、またそこから数の理解に必要な要素を自分の中で理解できたかも重要となります。そのため、就学前の数理解にもかなりページを割いて説明しています」(澳塩さん)

算数の基礎学習となる小学校4年生までに習う単元をサポート

この本の対象は、こうした数理解を始める3歳くらいから、小学校4年生くらいまでとなっていますが、ここまでが算数の基礎、ということなのでしょうか。

「小学校の算数は4年生まででたし算・ひき算・かけ算・わり算の計算方法と図形の基礎の学習が終わり、5年生以降は今まで培った知識を利用して応用する段階に入ります。そのため、小学生の学習で念入りなサポートが必要なのは4年生までと考えられます。

大きな数の仕組みや計算の手順、分数や小数の理解など、4年生でつまずきやすい単元のサポートを充実させてあります。さらに、つまずきやすい、小数点以下の計算、桁数の多い掛け算・割り算など、高学年の単元についても収録しています」(澳塩さん)


数理解はできても、こうした複雑な手順が必要になってくる計算の単元になると、途端にわからなくなってしまう、という子どももいます。教え方の工夫がさらに必要になってくるのです。そこで本書では、たくさんのワークが掲載されています。

ワークの一例として、「10 九九を理解する」を見てみましょう。九九が覚えられない、と一口に言っても、つまずきの原因を分析すると、支援のしかたも違ってくることがわかります。

■ 数字の聞き分けがむずかしい場合
■ 九九と式の対応がむずかしい場合
■ 暗唱に詰まって、最初から唱え直す場合

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/477261463X
という項目が挙げられています。このうち、最後の「■暗唱に詰まって、最初から唱え直す場合」については、こんな解決法が紹介されています。

九九の途中で詰まったり、答えが思い出せなくなったとき、例えば「6×3は18 だから?」というヒントを出しても、6×4が6×3=18 に6 をたすという発想が出てこないのは、九九の仕組みがわかっていないために起きていることがあります。
九九の増加のイメージを持ちにくいことが背景にあるので、下のように見て増えたことがわかるような九九の一覧表を使うと増加のイメージが持ちやすくなります。
(P40より)

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/477261463X
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P40 九九の一覧表 ©まうどん
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視覚から、数字が増えていく様子を理解するほうがわかりやすい子どもの場合は、このように数字の塊が積み上げられた図を見ておくことで、数が増えていくイメージをもつことができるでしょう。

このように、指導の方法はひとつではなく、その子どもに合った方法で、楽に・楽しく理解を進められる方法があるのです。本書には、その実例が図解とともにたくさん紹介されています。

指導者が「思い込み」で指導しないことの重要性

つまずきの原因を、その子の特性と結びつけて考えがちです。でも、「特性とつまずきの関係について指導者はあまりこだわらない方がいいと考えています」と澳塩さんは言います。

「先入観があると、例えばこの子は不注意の傾向があるから計算間違いも不注意によるものだろうという思い込みが生まれます。指導者がそう思い込んでしまうと、もし別のところに原因があった場合、適切なサポートができにくくなってしまいます。

まずは、その子が何に困っているのかを確認してみましょう。つまずきを見るときは、過去のテストなどを手掛かりにして、①誤りは毎回か ②過去の似た単元でもつまずきがあったか ③その単元に繋がる単元の理解はできているかを見ていくと、誤りの傾向が理解しやすくなるかと思います」(澳塩さん)


算数は積み重ねが大事な教科。根本的にわからないことがあると、その先の考え方に進むことが難しくなります。数理解ができていないのに、足し算・引き算の計算はできません。たとえば今小学校中学年だったとしても、「数理解」からおさらいすることで、どこがつまずいたポイントだったのかを見つけることができるでしょう。こうして何度でも学び直しができる、学んでわかること「楽しい」と感じることが、子どもの学習には大切なのです。

教材はできるだけ身近な実物を使うとわかりやすい

本書には、複雑な計算の解説でも、子どもにとって親しみやすい絵で、具体的な物やときには体の動きにも置き換えて、算数を学習する方法が多数登場します。

特に「数理解」の部分で、子どもには具体的なものを示して説明していきます。前述の②まとめる・分けるでは、イチゴやバナナ、プリン、のりもののように、子どもが興味をもちやすいものの絵が登場します。数量の概念を理解するための「数えていくつ」では、うさぎのぬいぐるみと、小さな椅子が描かれています。
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P19 数えていくつ
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この絵の工夫も、楽しく学習するためのポイントのひとつです。「数の理解は目で見て数えることから始まるので、見やすい(余計な刺激がない)ということは大事な点」として、見やすく大きな絵がたくさん掲載されています。

また、算数の理解を深めるための方法も、身近なものが使われています。

「サポートは、どこでも誰でも無理なくできるようにしたいので、扱いやすく手に入りやすいもの、また、家庭にあるものも取り上げました。例えば、小数の理解は飲料水のボトルを並べてみることなど、簡単な活動を通して自分の身の回りにあるものと、算数の理解が結びつくようなものも紹介しています」(澳塩さん)

さらに楽しんで算数への理解を深めるために、定着に必要な反復が楽しんで行いやすいゲームなどを用いることもよい方法。巻末にはボードゲームなどの紹介もあります。
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P30 前から何人・前から何番めの理解
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つまずきは「克服」するものではなく、自分に合った方法を見つけることで解消するもの

ところで、本書の目的は、学習のつまずきを克服することにあるのでしょうか。

「この本で紹介した方法で、計算などが前と比べてできるようになることはもちろんあると思いますし、実際にそうなった子もたくさんいます。しかし、それはつまずきを克服したというよりは、苦手なことに対して使える手札が増えたからだと考えています。サポートを通して、自分に合った方法を見つけること、他の方法を試してみようという気持ちを育てることが学習支援の目指すものの一つだと思います。

さくらんぼ算が苦手な子に、『5の補数』の方法を伝えて一緒に勉強をしていたとき、『こういう方法がほかにもある?』と尋ねてくれたことがあります。この子は、苦手なことがあっても『自分に合った方法があるはずだ』とこのときに思えるようになったのかもしれません。

努力して何度もやって乗り越えることだけが大切なことではありません。克服する前に疲れ果ててしまったら勉強どころではなくなります。なるべくつらい時間が続かないように、手札をいくつか持って選べるようにしようという気持ちになってくれるとよいと思います」(澳塩さん)


この「たくさんの手札」が示されている本が『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』なのです。

「目指しているのは『勉強と敵対しない』ということです。一度、『自分はやっても無駄』と思い込んでしまうと、なかなかそこから抜け出すことは難しくなります。
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数がわかると、生活の中で楽になることが増える=秩序が生まれる(澳塩さんTwitterより)
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理解ができるようになるためのやり方はいくつもあります。学ぶことが苦しくならない方法は必ずあります。既存の学習法にとらわれることはありません。学ぶことが少しでも楽になる方法を考えていいと思います。そのためにこの本が少しでも役立つことを願っています」(澳塩さん)

大人も一緒に、自分のこととして読んでみたい

家庭でも、学校でも、また幼稚園や保育園でも、子どもの算数の理解をサポートする方法がわかる『子どものつまずきからわかる 算数の教え方』。実は算数が苦手だったという大人も、子どもと一緒に、どこにその原因があるのかを探ってみると面白いかもしれません。学習は、本来面白いもの。そんなことを教えてくれるでしょう。

取材・文/関川香織

著者

澳塩 渚(公認心理師)
公認心理師、学習支援教室「まなびルームポラリス」主宰
大学在学中より適応指導教室にて不登校の児童生徒の学習サポートを行う。
発達に偏りのある児童の家庭教師等を経て、放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所にて、学習支援、ソーシャルスキルトレーニング等を担当。
子どもたちの言葉の力を育むことが学習やコミュニケーションの充実につながると考え、現在は静岡市にて作文読解、コミュニケーションのための学習支援教室「まなびルーム ポラリス」を主宰。
発達に偏りのある子どもたちが自分自身を適切に表現し、自立していくため力の育成を目指し、さまざまな活動を行なっている。「実践みんなの特別支援教育」で【作文の力を教室でつける活動たからばこ】を連載中。

澳塩渚さんも登壇!本書出版記念オンラインイベント開催!!

開催日時:2021年6月12日(土)/13時30分スタート、15時終了予定
主催:合同出版株式会社
出演者:澳塩渚さん(公認心理師)×平岩幹男さん(医学博士)

*オンライン参加のみです
*参加者のカメラはオフになります
*先着150名
*参加費
A チケット2000円
(本をすでにご購入の方は割引クーポンをご利用ください。クーポンコード:0612)
ワークつき 子どものつまずきからわかる 算数の教え方
澳塩 渚 (著), 平岩幹男 (監修), まうどん (イラスト)
合同出版
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