50歳の自閉症息子がグループホームへ。老いた母の葛藤、不寛容な社会への働きかけが起こす変化とはーー加賀まりこ・塚地武雅出演 映画「梅切らぬバカ」が11月12日公開

2021/11/01 更新
50歳の自閉症息子がグループホームへ。老いた母の葛藤、不寛容な社会への働きかけが起こす変化とはーー加賀まりこ・塚地武雅出演 映画「梅切らぬバカ」が11月12日公開のタイトル画像

障害のある子の家族は、「親なきあと」わが子が自分らしく幸せに暮らしていけるだろうか、という悩みを心のどこかに常に抱えているのではないでしょうか。
映画『梅切らぬバカ』では、老いゆく母と、中年にさしかかった自閉症の息子の日常が描かれます。
隣に越してきた家族の「面倒な家族とは関わりたくない」という一歩引いた視線。
ようやく決意して入居したグループホームでの住民による反対運動。
でも、隣家の子どものまっすぐな視点、そして思いがけないトラブルが、地域との関係にささやかな変化を起こして…。

発達ナビ編集部さんのアイコン
発達ナビ編集部
50923 View

はみだした梅の枝を剪定する?不寛容な社会の中で、不器用でも誠実に生きる自閉症の息子と母の暮らし

梅の木を見上げる母役の加賀まりこ
Upload By 発達ナビ編集部
この作品では、冒頭から大きな梅の木が登場します。主人公の家の庭から伸びた太い枝は、道に大きくはみ出し、隣に越してきた家族はぶつかりそうになって「切ってもらわなきゃ」といまいましげにつぶやきます。

映画のタイトル「梅切らぬバカ」とは、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがもとになっています。桜は幹や枝を切ると腐食しやすく、梅は余計な枝を切らないとよい花実がつきません。樹木の選定にはそれぞれ木の特性に従って対処する必要がある、転じて、人との関わりにおいても相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事だということを意味しています。

それに加え、「路上まではみ出す梅の木があってもいいじゃないか。不寛容な世の中であっても、一人ひとりかけがえがなく、少しばかりまわりと違うからといって切り捨てていいわけじゃない」。この作品の作り手は、タイトルにそうした想いを込めているのではないでしょうか。

50歳を迎えて、親なきあとの暮らしは。グループホームへの誘い

障害者向けの就労支援の事業所で作業を行う自閉症のちゅうさん
Upload By 発達ナビ編集部
毎朝決まった時間に起き、身支度を整え、律儀にゴミを分別し、牧場の馬を眺めてから、作業所に向かう。50歳を迎える自閉症の息子・ちゅうさんの変わらない毎日に、あるとき変化が訪れます。
作業所の所長さんから「グループホームに入りませんか」という誘いがあったのです。
老いゆく母は息子の自立を決意します。

ちゅうさんと選んだカーテンや家具。2人住まいの古民家と対照的な、きれいな洋室に少しばかり心浮かれる母でしたが、そこで目にしたのは、近隣住民による反対運動でした。
障害者は地域に住み続けられないのか。親なきあと、住み慣れた地域を離れて隔離された施設に入居しなくてはいけないのか。「地価が下がる」「地域の子どもに危害が加えられる」大きなシュプレヒコールにパニックを起こす入居者の姿に、不寛容な現実を突きつけられます。

思いがけないトラブルが親子を襲ったけれど

自閉症の息子の胸で涙する母
Upload By 発達ナビ編集部
ちゅうさんと初めて離れて暮らすようになり、心にぽっかりと穴が開いたように感じる母。でも息子のためにできることを考え、地域住民との話し合いや役所に赴く施設長にも同行。関わる人たちに、まっすぐに語りかけます。

そんな奮闘の毎日の中、ある出来事が起こります。そして、小さいけれど確かな、未来に向けた変化が生まれます。ちゅうさんの表情はやわらかくなり、続いていた爪かみもいつのまにかなくなって…。

小さな希望の灯が、親子と隣人の間に灯って

隣家の家族と食卓を囲む母と息子
Upload By 発達ナビ編集部
作品は、「梅切らぬバカでいさせてよ」と語りかけます。
必要以上に関わりを持とうとしなかった隣家の父親が、母子の住む家のドアをノックします。
律儀で少しの変化もゆるせなかったちゅうさんの毎朝のルーティンにも、あるかすかな変化が生まれます。

すぐには、全部は難しいかもしれないけれど、逃げずに誠実に向き合えば、きっと少しずつ社会は変わっていく。
まずは半径50メートルからでいい。私からだけでもいい。そんな小さな希望の灯が灯るラストシーン。ぜひ皆さんにも味わっていただけたらと思います。

『梅切らぬバカ』は、シネスイッチ銀座他で2021年11月12日(金)より公開

都会の古民家で暮らす自閉症の息子と母。息子が50歳を迎えるのを前に、母は「このまま共倒れになっちゃうのかね?」とつぶやきます。障害のある人に不寛容な社会の中であっても、寄り添いながら暮らす母子の姿を温かく誠実に描いています。一人ひとりと誠実に向き合う中で、小さいけれど確かな未来への希望が生まれていく様も感じさせてくれる作品です。

監督・脚本:和島香太郎
出演:加賀まりこ、塚地武雅 渡辺いっけい、森口瑤子、齋藤汰鷹、林家正蔵、高島礼子

映画『梅切らぬバカ』監督・脚本の和島香太郎さん、自閉症の「忠さん」を好演した塚地武雅さんを取材。当事者、地域の人々、双方の視点で描いた背景や想いとは?のタイトル画像

関連記事

映画『梅切らぬバカ』監督・脚本の和島香太郎さん、自閉症の「忠さん」を好演した塚地武雅さんを取材。当事者、地域の人々、双方の視点で描いた背景や想いとは?

映画監督、発達ナビ編集長も登壇『梅切らぬバカ』イベントをレポート!映画に込めた想い、「親なきあと」子どもが地域で生きていくためのヒントものタイトル画像

関連記事

映画監督、発達ナビ編集長も登壇『梅切らぬバカ』イベントをレポート!映画に込めた想い、「親なきあと」子どもが地域で生きていくためのヒントも

障害のある子の「親なきあと」ってどうなるの?今からできる対応策から体験談まで紹介します!のタイトル画像

関連記事

障害のある子の「親なきあと」ってどうなるの?今からできる対応策から体験談まで紹介します!

発達ナビPLUSバナー
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

この記事を書いた人

発達ナビ編集部 さんが書いた記事

2歳半の娘が療育に通うと伝えたら。「劣っている子の保育は難しい」園長の言葉に、退園を決意して――【保育園トラブル】発達ナビユーザー体験談のタイトル画像

2歳半の娘が療育に通うと伝えたら。「劣っている子の保育は難しい」園長の言葉に、退園を決意して――【保育園トラブル】発達ナビユーザー体験談

【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「保育園トラブル」についてのエピソードをご紹介します。】 娘は2歳半。診断...
発達障害のこと
5490 view
2022/05/21 更新
東京パラのメダリスト直伝!「発達が気になる子どもの挑戦」をどう支える?苦手なこと、新しいことへの寄り添い方――発達ナビ編集長鼎談のタイトル画像

東京パラのメダリスト直伝!「発達が気になる子どもの挑戦」をどう支える?苦手なこと、新しいことへの寄り添い方――発達ナビ編集長鼎談

まずは何から始めたら良いの?保護者が大切にしたい心構えって?子どもの運動に関するそんな疑問に、パラリンピック競泳日本代表メダリストが答えて...
学習・運動
173 view
2022/05/17 更新
多動の長男が公園で行方不明!娘の大癇癪に気を取られていて…【2人育児のヒヤリ】ーー発達ナビユーザー体験談のタイトル画像

多動の長男が公園で行方不明!娘の大癇癪に気を取られていて…【2人育児のヒヤリ】ーー発達ナビユーザー体験談

【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「癇癪」についてのエピソードをご紹介します。】 長女が5歳、長男が2歳のと...
自分と家族のこと
1963 view
2022/05/16 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。