癇癪で要求を通してたわが子が変わった!?関わり方のヒントが漫画で分かる『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』著者・たなかれもんさんインタビュー付

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版
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『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』は、著者のたなかれもんさんと長女・小学校2年生のサンちゃんが、「うさぎ先生」からライフスキルトレーニング(LST)を受けて成長していく家族物語です。自転車に乗りたがらず駄々をこねるサンちゃんが、すんなり自転車に乗るようになった理由は? 自分から言葉を発するようになったきっかけは? マンガを楽しみながら、ライフスキルトレーニングについてよく分かる本を、著者インタビューとともにご紹介します。

癇癪を起こせば要求が通る…と思っていたサンちゃんは、LSTでどう変わる!?

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サンちゃんの紹介
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『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』は、2019年発刊のたなかれもんさんの前著『つま先立ちのサンちゃん』で困りごとをたくさん抱えていたサンちゃんが、実際に受けたライフスキルトレーニング(以下LST)によって、特にコミュニケーションに関して成長していく様子をマンガで描いています。
LSTの先生は、たれ耳うさぎの姿で「うさぎ先生」として登場する医師の平岩幹男先生です。平岩先生はこの本の監修者であり、マンガの中だけでなく、コラムでもLSTについての分かりやすい解説をしています。
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p036より
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ライフスキルトレーニングとは、生きていくための技術の練習

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p046より
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あらためて、ライフスキルトレーニングとは何でしょうか。「うさぎ先生のかいせつ」(p46)によれば、
LST(Life Skills Training)とは、現在から将来にわたって、子どもが生活するために必要なスキルを身に付けるために、日常生活の中で、あるいは園・学校や発達支援サービスにおいて行うトレーニングのことです。(p46 「うさぎ先生のかいせつ―ライフスキルトレーニングのポイント」より)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4772614788
また、SST(Social Skills Training:社会生活訓練)との違いについてはこう記されています。
LSTはSSTに加えて、国語や算数などの学力(文字や数字の理解と使用など)や、歩く・走るなどの粗大運動、箸を使う・ひもを結ぶなどの微細運動まで、運動機能の向上も目指しています。これらは発達障害を抱えていてもいなくても大人になる過程で習得していきたいスキルです。(p46 「うさぎ先生のかいせつ―ライフスキルトレーニングのポイント」より)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4772614788
言葉通り、生きる(life)ためのさまざまな技術(skills)を練習すること(training)がLSTです。

この本では、LSTの方法と、実際にLSTを受けたサンちゃん親子の成長の様子を紹介しています。LSTについては、次のようなことが紹介されています。

・ハイタッチ、ごほうび、要求返しでほめる
・「お手伝い」と「見立て」、「イライラ」を「ほめる」へ
・1語から4語へ、絵と音のマッチング、問題行動をやめさせる
・「答える」練習、楽しく練習、絵と音と文字のマッチング
・ひらがなトレーニング、ひらがな並べ、お絵かきと言葉のトレーニング
・質問と答え3往復、テンポよく
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p040より
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この流れに沿って、LSTの方法、注意事項、実際にサンちゃんがトライしてみての様子が、分かりやすく楽しく描かれています。読んでいると、うちでもやってみよう!という気分になります。もちろん、すべてスムーズに進むわけではなく、うまくいかないこともたくさんあります。うまくいかないところは、再度うさぎ先生からアドバイスをもらうことでうまくいくこともあります。

サンちゃんの成長だけでなく、育てる側が気をつけたい、親の健康も描く

中盤の12話「クラッカーははじけた」で、母であるれもんさん自身が倒れてしまいます。サンちゃんの療育をしっかりやろう、仕事も家事も…と頑張り過ぎた結果、れもんさん自身の脳内がクラッカーのようにはじけてダウンしてしまいます。こうして約1年間、LSTをお休みすることになります。

1年間のお休みの間、れもんさんがどうやって心身の健康を取り戻していったかについても描かれています。子どもが成長するときに大事な親の健康についても考えさせられる話です。その後、元気を取り戻し、もう一度LSTにチャレンジしたい気持ちになったれもんさんに、テレビの中からうさぎ先生が話しかけてくれます。

LSTは、子どものためのトレーニングですが、こうして親にも寄り添ってくれるうさぎ先生がいてくれたからこそ、続けていけるのです。

たなかれもんさんに聞く『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』が誕生するまで

ここからは、著者のたなかれもんさんに、この本にまつわるエピソードを伺っていきます。

サンちゃんの成長していく姿について

発達ナビ編集部(以下――) まずはサンちゃんのことから教えてください。2歳1ヶ月で自閉スペクトラム症と診断されたと書かれていますが、主にどのような特性がありますか?

たなかれもんさん(以下れもん):サンちゃんは、「折れ線型自閉症」と呼ばれる過程を経ていて、言葉や「はーい」と返事をすることや、大人の動きをまねることなどを、一度は覚えたのですが、1歳半ごろから表に出さなくなっていました。物を1列にきれいに並べたり、その場でくるくる回ったり、つま先立ちで歩くようになったのも、そのころからだったと思います。とにかく食べ物に対する執着が強い子でした。

この本で描いたサンちゃんは6歳ごろで、今は8歳になりました。サンちゃんは、今も相変わらずつま先立ちで生活していますが、最近はかかとを地面にぺったりくっつけている時間も増えてきました。食べ物に対する気持ちの強さは健在です。自発的な言葉も増えてきていますが、エコラリアも多く、とにかく大好きな食べ物に関する言葉が多いです。
※エコラリア…オウム返しのこと。聞いた言葉をすぐに繰り返して言う「即時エコラリア」と、時間が経過してから、以前聞いた言葉を発する「遅延エコラリア」がある。(p70より)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4772614788
――ほんの少しつま先立ちは卒業なんですね。ところで、この本に登場するLSTの方法は、とても簡単に家庭で始められるものばかりでした。実際にLSTを受けられて、いかがでしたか?

れもん:平岩先生からのさまざまなアドバイスは、本当に簡単なことからできて、家庭ですぐに始められるものでした。もうすぐ6歳だった当時のサンちゃんが、成長する姿にもたしかに感激しましたが、同時に「もっと早く知りたかった…」とも強く思いました。

サンちゃんが2歳で自閉スペクトラム症と診断されたとき、わたしは何をしたらよいのか分からなくて、たくさん悩みました。もしも今、わたしのように悩んだり迷ったりしている方がいらしたら、ぜひ平岩先生からのアドバイスとわが家の経験をお届けしたい!そう思ったのが、この本を書いたきっかけです。今回改めて平岩先生に全面的にご協力いただき、わが家の2年間をマンガ化することができました。

――たしかにすぐに家庭でも実践できそうな方法がたくさん紹介されていますが、特に大事だと思われたのは、どんなLSTでしょうか?

れもん:このマンガを描きたいと思ったキッカケでもある、初めての「ハイタッチ(ほめる)」です。毎朝、療育園に行こうとすると、サンちゃんが寝転んで動かなかったり暴れたりしていて、本当に毎日その時間が憂鬱だったのですが、ハイタッチで自転車に乗れた日からは「たぶん今日も大丈夫、行ける」と思えるようになりました。大丈夫じゃない日もありましたけどね!(笑)
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p053
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――ハイタッチは、これが1つできたら達成というものではなく、その後のさまざまなことへの大事な基盤となっていきますね。

れもん:はい。主導権を握るということにつながっていました。このことを初めて教えていただいたときは、その方法にただただ目から鱗…という感じでしたが、後半のネーム(構成)を考えているときに、ハッとして…。

主導権を握ることが信頼関係に繋がっていたんだということや、スキンシップが苦手でも親子の関係を深めることができるんだなぁということにそのとき気がつきました。その気持ちを夢中でマンガにまとめたのを覚えています。

――LSTを初めてからのサンちゃんの成長は読んでいて目を見張るものがあります。特に成長に驚いたエピソードなどはありますか?

れもん:本の中では終盤になりますが、ひらがなの学習を始めてからのサンちゃんはすごいなぁと思いました。
「ちゃんと理解できているんだなぁ」ということが伝わってくる度に、それまで私が日常生活の中で「サンちゃんには難しいだろう」とか、「まぁ、まだいいか」と、伝えないままにしたことがどれだけあったんだろう…と思いました。

れもんさん自身・お母さんについて

――れもんさんご自身の様子が書かれた部分は、多くの読者が共感されるのではないでしょうか。特に、LSTをお休みされた期間のエピソードは、とても大事なメッセージだと感じました。

れもん:サンちゃんが自閉スペクトラム症と診断されてから、いろいろな情報を目にしては、自分はサンちゃんのためになることを、しっかりできているのだろうかと不安になったり、焦りを感じたりすることがあって、そういう自分の気持ちに自分自身が追い詰められるようなことが何度もありました。

もし、この本を読んだ方が、「こんな風にうまくできない、うまくいかない」と思われたとしたら、あくまでもこれは限られたページ数の中に入れられるだけの「いい部分」だけを描いているんだ、ということをお伝えしたいです。

本には書いていない、うまくいかないこともたくさんありましたし、(小さな声で言いますが)トレーニングを休んだ日もあります。

お母さんが一人でやる必要はないですし、完璧にすべてを成し遂げようと思わず、家族や、園・学校の先生、支援者の方に「こういう風に接してほしい」と具体的にお話しして、一緒に考えてもらうことが大事だなぁと感じています。

マンガを描くときのこと

――「発達障害児育児」をテーマとして描くときに、大切にされていることを教えてください。

れもん:同じ診断名がついても、一人ひとりはまったくの別人です。似ているところもあるかもしれないけど絶対に同じではないので、サンちゃんがこうだからと言って、ほかの子もそうだとは限らない、ということは大前提にして描いています。

それから、実生活の中で、つらいことや悲しいことはもちろんありますが、悲しみやつらさをマンガにしていると、どんどん気持ちが暗闇に入っていって、いくらでも暗く悲しい描写になっていきます。なるべくそうならないように気をつけて、話の流れの中でふざけられるチャンスを見つけては、楽しくふざけたシーンを描いています(笑)。

この本に関しては、トレーニングの内容がきちんと伝わるように、動作や言葉選び、間合いなど丁寧に描くことをより意識して描きました。

――ところで、絵のことについてもお聞きしたいことが…。サンちゃんご家族のキャラクターには、瞳が書かれていませんが、この理由は?

れもん:サンちゃんに瞳を描くと、なんだか実際の顔にいまいち似てないなぁ…と感じて、瞳を描いていません。多分、瞳を描かないことで、視線が分かるような分からないような感じが出て、それが実際のサンちゃんの雰囲気と合っているんだと思います。サンちゃんに合わせて、家族も同じように描いています。

――監修者の平岩幹男先生は、‎ 2019年に発行した著者「つま先立ちのサンちゃん」がきっかけで、サンちゃんの様子を実際に見ることになったそうですが、うさぎ先生はなぜ、たれ耳のうさぎなのでしょうか? 

れもん:うさぎ先生の耳は、平岩先生をイメージしながら描いているうちに、たれ耳になっていました。耳がたれているほうが、顔全体がマンガのコマにおさまりやすいし、動きがつけやすいということもあります。ラフを見た先生からは「犬に見えなければいいよ」という感想をいただいたので、犬に見えないように気をつけました(笑)。

そして、うさぎ先生のお髭ですが、実際に初対面のときに、サンちゃんが先生のお髭を触っていたので、そのシーンを入れたくてうさぎ先生にもお髭を描いたのでした。

――テレビから出てくる、という設定も斬新でした!

れもん:サンちゃんはいつもテレビを見ているから、そこからうさぎ先生が出てきたら面白いな、と思って、テレビから出てくる設定にしました。その後、オンラインで先生とお話しする機会が何度もあって、マンガがリアルになってしまったな…と思っていました。描き始めたときは、まさかこんな世の中になるとは思っていませんでしたので…。

読者のみなさんへ「今すぐできそうなことから、お子さんに合わせて試してみてください」

――最後にこの本をどのような方に読んでもらい、どのように活用してほしいとお考えでしょうか。

れもんお子さんが自閉スペクトラム症と診断されたけども、お子さんのために何をしたらよいのかが分からなくて困っている、という方に読んでいただけたらと思っています。本当に「今すぐできる」トレーニングをご紹介していますので、お子さんに合わせて試してみてほしいです!

うさぎ先生のお話の中には、ご家庭だけでなく、支援者の方々にも参考になるアドバイスがたくさん入っていると思います。サンちゃんの成長を見て一緒にワクワクしながら読んでいただけたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

まとめ

本の中では順調に進んでいる部分を切り出して紹介している、と、たなかれもんさんが言うように、どんなに親ががんばっても、子どもの成長は行きつ戻りつするもの。それでも少しずつ前に進んでいます。ときにはお休みしてもいいから、LSTを楽しみながらトライしてみようという気持ちにしてくれる『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』です。

文/関川香織
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