「せめてこれくらい…」が子どもを潰す?発達障害の専門医が語る、発達グレーを白にしようとしないでほしい理由
ライター:本田秀夫
私は児童精神科医として30年以上、発達障害の子どもたちの診察を続けてきました。その中で感じるのは、「子どもがどんな大人になるかは育て方次第」という面も大きいということです。「育て方次第」と聞くとドキッとされるかもしれませんが、私が考える発達障害のある子の育て方のポイントとともにお伝えしたいと思います。
執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院こどものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉症スペクトラム学会会長。
附属病院こどものこころ診療部長
「得意」「苦手」「好き」「嫌い」を知っていく
発達障害のある子には、さまざまな特性があります。多数派である定型発達の子どもとは、いろいろな違いがあります。親や先生が、子どもの「得意なこと」「苦手なこと」「好きなこと」「嫌いなこと」などを一般常識にあてはめないで、ありのままに理解していくことが大切です。そうすることで、子どもの育っていく道すじが少しずつ見えてきます。
また、子どもが自分自身を知っていくことも大切です。子どもが自分の得意や苦手、好き、嫌いを知って、どんな活動にどんなやり方で取り組むのかを、自分で判断できるようになっていく。そして、苦手なことや嫌なことを避けられるようになっていけたら、その子は自分らしく、無理をしないで生きていけるようになるでしょう。
また、子どもが自分自身を知っていくことも大切です。子どもが自分の得意や苦手、好き、嫌いを知って、どんな活動にどんなやり方で取り組むのかを、自分で判断できるようになっていく。そして、苦手なことや嫌なことを避けられるようになっていけたら、その子は自分らしく、無理をしないで生きていけるようになるでしょう。
「苦手なこと」「嫌なこと」から全力で逃げ回っていい
子どもが苦手なことや嫌なことを避けようとすると、まわりの大人から「これくらいのことは嫌がらずにやりなさい」と言われるかもしれません。ただ、発達障害のある子には、本人の努力だけでは「これくらい」ができないこともあります。「努力で困難を克服する」という価値観を押しつけられると、それが達成できなかったとき、自信を失ってしまうこともあるでしょう。
私は、発達障害のある子は苦手なことを押しつけられたら、全力で逃げ回ったほうがいいと考えています。他人の基準に合わせて、無理に努力することに時間を使うのはやめて、堂々と逃げましょう。苦しんで傷ついて自信を失うよりも、苦手なことはサポートしてもらって、得意なことや好きなことで活動を広げていくほうが、はるかに有意義です。そのほうが多くのことを学べると思います。
私は、発達障害のある子は苦手なことを押しつけられたら、全力で逃げ回ったほうがいいと考えています。他人の基準に合わせて、無理に努力することに時間を使うのはやめて、堂々と逃げましょう。苦しんで傷ついて自信を失うよりも、苦手なことはサポートしてもらって、得意なことや好きなことで活動を広げていくほうが、はるかに有意義です。そのほうが多くのことを学べると思います。
「その子らしく」育っていける道すじを探す
親が子どもに対して「苦手なところを克服させたい」「平均値に近づけたい」と思っていると、その子は苦しみます。どの子にも苦手なことはあり、克服できない部分はあるからです。克服できない部分が残ったとき、子どもは多くの場合、親の期待に応えられなかった自分を責めます。そのような雰囲気のなかでは、自己肯定感はなかなか育っていきません。
世間の基準に合わせて子どもを追い立てるのではなく、子どもがその子らしく育っていける道すじを探すようにしましょう。発達障害のもともとの原因は育て方ではありませんが、私は、発達障害のある子の生活は、育て方によって大きく変わっていくと考えています。子どもがどんな大人になるのかは、育て方次第という面も大きいのです。
世間の基準に合わせて子どもを追い立てるのではなく、子どもがその子らしく育っていける道すじを探すようにしましょう。発達障害のもともとの原因は育て方ではありませんが、私は、発達障害のある子の生活は、育て方によって大きく変わっていくと考えています。子どもがどんな大人になるのかは、育て方次第という面も大きいのです。