まだ就職先が決まらないのに…自閉症の息子は自立・就労への夢を見て。厳しい現実を心配する母の葛藤とは裏腹に

2021/12/07 更新
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息子は現在、21歳。知的障害を伴う自閉症だ。特別支援学校卒業後は就労移行支援事業所に通っている。

まだ就労先が決まらない息子。就職が決まっていく仲間の訓練生を指をくわえて見ているようだ。企業就労への夢は膨らんでいるようで、こんなことを口にする。

「会社に行ったら家を8時に出る」(勤める会社も決まっていないのに…)
「会社に行ったら、同窓会に行かない」(特別支援学校高等部の同窓会は、平日には開催されないのだけれど…)
夢や希望に溢れている感じだ。

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立石美津子
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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

就労への夢や希望を抱く自閉症の息子

息子は現在、21歳。知的障害を伴う自閉症だ。特別支援学校卒業後は就労移行支援事業所に通っている。 まだ就労先が決まらない息子。就職が決まっていく仲間の訓練生を指をくわえて見ているようだ。企業就労への夢は膨らんでいるようで、こんなことを口にする。 「会社に行ったら家を8時に出る」(勤める会社も決まっていないのに…) 「会社に行ったら、同窓会に行かない」(特別支援学校高等部の同窓会は、平日には開催されないのだけれど…) 夢や希望に溢れている感じだ。

そんな息子に、思わず
「世の中そんな甘くないぞ!」
「お金をもらって働くことは厳しいぞ!」

などと言いたくなるところだが…水を差すようなことは止めておこう、と思った。

私が教えている年長さんも夢や希望を抱いている

私は長年、幼児に幼稚園、保育園で文字の指導((ひらがなやカタカナなどの学習指導)をしているが、そこで出会う子どもたちは、小学校に対して夢や希望を持っている。
幼児に勉強を教える筆者
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親御さんは
「この状態で果たして入学後やっていけるのだろうか…」
「勉強についていけるだろうか…」
「虐められないだろうか…」
「幼稚園、保育園のように遊びは少なく、勉強が主になるが耐えられるだろうか」

と不安でいっぱいなようだが…子どもたちは真逆である。
期待と夢でウキウキしている。

私は毎年3月になると、「小学校に早く行きたい人?」と子どもたちに聞いてみる。

すると、「は~い」とかわいい声で挙手する。「小学校へ行きたくない」と言う子はいない。

さらに「みんな、小学校に何をしにいくの?」と聞くと「お勉強をしに行く!」と元気に答えてくれる。「遊びに行く」という答えは一切、返ってきたことがない。

子どもの答えが正解で、学校は社会性を育てる場でもあるし、友達をつくる場でもあるけれども、学力をつけるところ。自分の未来を切り開くために勉強しに行くのだ。そして、「勉強すること」をとても楽しみにしている。

筆箱、鉛筆、消しゴム、ランドセルも買ってもらい、祝福されてやる気満々になっている。

「勉強大変だぞ!」
「幼稚園や保育園の先生のように踊ったり歌ったりしてくれないぞ!」
「休み時間は短いぞ!」
「給食が口に合わないかもしれないぞ!」
「今までは年長さんで威張っていられたかもしれないが、学校に入ったら2年生から6年生までいて、あなたが一番小さい一年生になるんだぞ」
「友達100人なんてできないぞ!」

こんなことを言って、やる気に満ちている子どもたちに水を差すようなことは止めておこう、と思う。

息子に質問してみると

私「一人暮らしとグループホームどっちがいい?」
息子「一人暮らし」
私「お母さんが老いて死んだら、この家で一人で暮らせる?」
息子「暮らせる。料理はレシピ見て、ひとりで作れる!」
食事をする息子
Upload By 立石美津子
淡々とした冷静沈着な答えで切なくなるが、あと何年か先には起こること。私の方が悲しくなり押しつぶされそうだ。

徐々にシフトさせていく

最近、将来の自立を考えて、何かと「さすが社会人」(就労していなくても社会人と特別支援学校高等部では呼んでいた)などと声がけをしながら、家事を徐々にやらせている。

【やらせている家事】
・ゴミ捨て
・カーテンの開け閉め
・新聞を取りに行く
・トイレットペーパーやテッシュの補充
・洗濯物を干す

もし、私の寿命が息子より一日長かったら、こんなことさせなくてもいいのに…と少し悲しくなる。息子は「就職したら」「会社に行ったら」が口癖になっている。母としては「もう、それ言わないで」と言いたくなる毎日が続いている。

就労への夢も一人暮らしは、親としては心配で仕方がないが、夢を壊すような言葉はグッと胸の中に抑えておこうと思った。

執筆/立石美津子
(監修者・鈴木先生より)

どんな親御さんでもお子さんの将来が心配なのです。

今から5年ほど前に群馬県前橋市で開催された第7回日本小児心身医学会関東甲信越地方会の「適応上の問題を呈している子にどのように繋がるか」というシンポジウムで「発達障害児の将来を見据えた早期介入のできる社会へ~就学前から就労まで小児科医にできること~」と題して講演したことがあります。

そこでは、小児科医と精神科医との連携が重要であり、早期介入のためにはかかりつけの小児科医が日ごろの診療の中で子どもの異変や特性に気づいてあげなければならないとお話ししました。しかしながら、交流がないがために一般の小児科医と精神科医との連携はいまだほとんどみられていません。そして、かかりつけの小児科医においては、コロナ禍で学会や講演会などが中止となったこともあり、発達障害(神経発達症)についての知識が乏しく、専門医との連携があまりできていないのが現状です。

このコラムを書いた人の著書

動画でおぼえちゃうドリル  笑えるひらがな
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小学館クリエイティブ
子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎

このコラムの著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて
松永正訓
中央公論新社
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