自閉症の息子の質問は「オウム返し」するまで続く…。「傾聴」と「承認」が息子の心を安定させると気づいて

2022/01/10 更新
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自閉症の息子は21歳、「いってらっしゃい」と送り出すと、いまだに「いってらっしゃい」と言って出かけていきます。それ以外の会話ではオウム返しは、ほぼなくなりました。けれども、会話の中で私の方がオウム返ししてやるまで納得しないことがあります。

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立石美津子
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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

息子との会話

自閉症の息子は21歳、会話の中で私の方がオウム返ししてやるまで納得しないことがあります。

例えば…

食事中
息子「お母さん、角煮、残していい?」と嫌いなものを残していいか、いちいち聞いてきます。

私「うん」
納得しない様子です。

そこで
私「いいよ」言い直しました。
それでも納得しない様子です。

私が「角煮を残していいよ」と言うまで何度も聞いてきます。

また、別の場面です。

息子「散歩に行っていい?」

私の「うん」とか「いいよ」の返答に納得しません。
私が「散歩に行ってもいいよ」というまで聞いてきます。

「うん」や「はい」だとおそらく安心できないのでしょう。息子の言った言葉をそのままオウム返ししながら、語尾を変えるまで繰り返し確認してきます。

傾聴ボランティアの講座で

私は独居の高齢者支援をできればと、以前、傾聴ボランティアの研修を受けたことがあります。

そこで学んだことなのですが、次の聞き方をすると、ダメだそうです。

×「うん、うん」「はい、はい」とただ言うだけ

これに対して「良い話の聞き方」は、

○相手の話を全部聞き終わったあと、相手の言った言葉をそのままオウム返しする。

例えば
ご老人が「ときどき、もうこれ以上長生きしたくないと思ってしまうんですよね」と言った場合です。

相手の言葉をさえぎって「そんなこと言ってはダメですよ。もっと長生きしてくださいよ」と励ましの言葉をかけてはいけないそうです。

かといって「そうなんですね」と相手の言葉に共感するのも△、「ときどき、もうこれ以上長生きしたくないと思ってしまうんですね」と相槌を打つのがベストな対応だそうです。そして、相手の話をじっくり聞いたあとに、こちらから何か話をするとよいそうです。これで相手は「自分の話をしっかり聞いてもらえた。理解してもらえた」と思う、とのことでした。

これは“傾聴”と言う方法です。「きく」は漢字で書くと「聞く・聴く」がありますが、「聞く」はただ音声として耳に入ってくる音を聞く、耳を傾けて相手の話を積極的に聞くのが「聴く」なのです。

子どもに対しても同じ

この話は、わが子に対して話をするときも同じだと思います。何でも確認しなくては気が済まない息子、強迫性障害のある息子に対しても同様だということに気がつきました。

「うん」とか「いいよ」ではダメでオウム返しして傾聴する必要がありました。

幼児教室に通う保護者との会話

私は長年、幼児教室で指導をしていました。積極的に声がけせずとも自ら考え、学ぶ姿勢のお子さんも、教室から脱走したり、友達を叩いたりするお子さんもいました。

そんな中、ある日、スーパーに買い物に行ったときのことです。幼児教室で当時指導に手を焼いていたお子さんと保護者も同じ店に買い物に来ていました。親子は、私の姿に気がついていません。

通路を走り回り、売り物の野菜の葉っぱをちぎり、カゴに山盛りのお菓子を入れていました。お母さんは、お子さんを叱ったりたしなめたりしながらやっとの思いで必要なものを買っていて、疲れ切った様子でした。

そんなとき、私とそのお子さんのお母さんと目が合ってしまいました。母親は気を取り直す間もなく私の顔を見て次のようにつぶやきました。
「あ!立石先生、私、時々、この子を置き去りにして帰りたくなっちゃうんです…」と…。

そこで思わず、「そうですよね。落ち着いてお買い物もできませんよね。置き去りにしたくなってしまいますよね」とつい口に出してしまいました。そう言ってしまってから、「しまった!」と、お母さんの顔を恐る恐る見上げると、晴れ晴れとした表情をしていました。

そして、目に涙を浮かべながら、「ありがとうございます。分かってくれて。そんな風に言ってくれた人、初めてです」と逆に感謝され、拍子抜けしてしまいました。その後、そのお母さんとは信頼関係が深まり、さまざまな話をするような関係になっていきました。

もし、あのとき、「そんなことないですよ。落ち着きがありますよ。○○君にも良い面がたくさんありますよ」と言っていたら、もしかしたら「先生は週1回しか接しないから分からないでしょ!」と思われ、それ以降、私に何か相談したりすることもなくなっていたのかもしれないと今は思います。

オウム返しして「置き去りにしたくなりますよね」と言ったことが、たまたま傾聴になったのかもしれません。

子どもからの報告への対応

小学生の子どもが帰宅後、「宿題多くて嫌になっちゃうんだよ」と言ってきたとき
「やることやってから、遊びなさい!」とか「宿題やらないと先生に叱られるよ!」とか「宿題多すぎると先生に言ってあげるから!」と言ったらどうでしょう。

子どもは「宿題をやらない!」と言っている訳ではありません。お母さんに気持ちを聞いてもらいたいだけなのです。ですから「そうなんだ。宿題多くて嫌になっちゃうんだ」とオウム返しして共感してあげるのがいいのではないかと思います。

子どもが「幼稚園で○○君が私の玩具取った」と言ったときは、いじめに遭っているんではないかと心配になり、「意地悪されたのね!明日、園長先生にお母さんから注意してもらうから!」と言うのではなく

「そうなんだ、幼稚園で○○君があなたの玩具取ったんだ」とオウム返ししてあげましょう。
すると続けて「でも、その玩具、最初○○君が使っていたんだよね」と言うかもしれません。
「でも、先生が来て仲直りしたんだ」と言うかもしれません。

子どもにも傾聴の技法、是非使ってみてくださいね。

執筆/立石美津子

(監修・鈴木先生より)
ペアレントトレーニングの基本は「傾聴」&「承認」です。心理カウンセリングの基本も「聴いて」あげることです。一般的にも相手の言ったことを自分の中でブレンドして自分なりに吸収したことを相手に伝えることによって相手も安心するはずなのです。
相手の話をきちんと聴いているよというこだわりが自閉スペクトラム症の息子さんにはあるのかもしれませんね。

このコラムを書いた人の著書

動画でおぼえちゃうドリル  笑えるひらがな
立石美津子
小学館クリエイティブ
子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎

このコラムの著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて
松永正訓
中央公論新社
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