微細運動(びさいうんどう)とは?乳幼児の手指の発達目安や、発達障害(神経発達症)がある子どもに多いつまずき、トレーニング方法も紹介

2022/01/05 更新
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微細運動とは、手指の細かい動きのことで、身の回りのことをするために必要な動きです。発達障害がある人の中には、手先が不器用で、微細運動の発達に課題がある場合が見られます。なぜ、微細運動がうまくいかないのでしょうか。また、微細運動の発達を促すためにできることはどんなことなのでしょうか。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

微細運動とは、持つ・にぎるなど手指を使った動きで、身の回りのケアに必要な体の動き

微細運動は手指のこまかい動きのことで、持つ・にぎるから始まり、道具を使う、操作をするといった動きのことです。立つ・歩くなどの体を移動させるための大きな動きである粗大運動に対して微細運動と呼びます。たとえばフォークを使って食べ物を刺し口元まで運ぶ動作、クレヨンを握って紙に何かを書く動作、さらに服のボタンのかけはずしや、靴を履くなど、自分の身の回りのケアに必要な動作でもあります。

微細運動は、いつごろからどんなことができるようになる? 目安は?

もののつかみ方の発達
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粗大運動は、脳に近い部分から体の末端に向かって順に発達していきます。一方、微細運動は背骨に近いところから指先に向かって発達していきます。

新生児が手のひらに触れたものを「にぎる」のは原始反射

新生児期にみられる原始反射に「把握反射」(はあくはんしゃ)という、手に触れたものをにぎるという動作がありますが、これは体の発達が進む間に見られなくなります。手のひらに何か触れると無条件に指関節が曲がって握るという動作は、人類の祖先が樹上生活をしていた際の、木の枝から落ちないための古い記憶からきているともいわれます。

主な微細運動の発達の段階と、できるようになる目安は?

体の中心から末端に向けてだんだんにできるようになっていく微細運動は、どのような過程でできるようになっていくのでしょうか。いつごろ、どんな動きができるようになるのか目安を見てみましょう。

●両手を合わせられるようになる (生後2ヶ月ごろから)
赤ちゃんにとっていちばん身近にある目の前で動くものといえば、自分の手。肩関節から先を動かすことができるようになる2ヶ月ごろから、両方の手を合わせてさわることができるようになります。

●手のひらを使って、にぎることができるようになる (生後5ヶ月ごろから)
生後3ヶ月ごろから細い柄のついたもの(おもちゃのガラガラなど)を、手に近づけてあげればにぎっていられるようになります。ただ、このあと自分でさわろうとしたりするのは、興味があるものに手を伸ばすようになる3~4ヶ月ごろからです。また、肘関節が動かせるようになる4ヶ月ごろから、手のひらでものをにぎれるようになります。

●手に持ったものを別の手に持ち替える (生後6~7ヶ月ごろから)
手のひらでにぎったものを、もう一方の手に持ち替えることができるようになっていきます。また、生後8ヶ月ごろからは、両手につみきなどを持ち、持ったものをカチカチと打ち合わせたりすることができるようになっていきます。両方の手の動きを連携させることができるようになるのです。

●親指と人差し指でものをつまむ (生後10ヶ月ごろから)
自分の意思で動かせる範囲が、かなり末端まで広がっていきます。指の関節が動かせるようになり、こまかいものをつまむことができるようになります。手をなめるだけでなく、おやつのボーロを手指でつまみ上げて口まで運ぶという動作も可能になります。また、ボタンなどを押すのが面白くなってくるのもこのころです。

●肩関節から指の関節までを組み合わせた動きが自在になる(1歳~1歳半ごろ以降)
1歳を過ぎるころから、手に持ったものを、目的をもって動かす動作ができるようになっていきます。スプーンやフォークを握って、口がある場所に持っていき、道具の先端にある食べ物を口にこぼさずに入れるという一連の動作は、分解してみるとかなり複雑な動きであることが分かります。また「こうしたい」という心の発達もともなう動作でもあります。

こうして体幹からだんだん末端へと、自在に動かせる範囲が広がります。

「書く」動作の発達

道具を使う手指の動きには、筆記用具を使って「書く」という動作があります。この動きも体の中心に近いところから末端の手指の関節へと、運動神経が伝わっていくことで、こまかい動作ができるようになります。
● 10ヶ月ごろ…点を打ち付けます。これは筆記用具をにぎり、肩関節を動かすだけでできます。
● 1歳ごろ…線を書く、いわゆるなぐり書きです。肘関節を動かすことで、紙の上に筆記用具を滑らせて書きます。
● 2~3歳ごろ…最終的にまるが描けるようになります。手首を動かすことによって、円を描きます。

また、手の動きだけでなく、筆記用具の握り方も成長します。0~1歳の前半ごろは、いわゆる「にぎり持ち」、指を使わず手のひらを使って筆記用具をもちます。このころは、柄が太く短いクレヨンなど、手と一体になるようなデザインの筆記用具が使えます。だんだんに、柄が細く、握ったところから遠いペン先で書くようになっていきます。握り方も成長します。人差し指と親指で筆記用具を持ち、その他の指で支えるようになり、複雑な線を描けるようになっていきます。

その他の微細運動

ほかにも、ビーズにひもを通す(1歳ごろ)、ハサミを使う(2歳ごろ)、ボタンをかける(3歳ごろ)、ふたを開ける(5歳ごろ)、ひもを結ぶ(6歳ごろ)などといった細かい動作がたくさんあります。

なお、生活に必要な動きのみではなく、手芸や工作などさらに精密な動きをするようになっていくためには、「こういうものをつくりたい」という心の発達が必要であり、どんな人でもトレーニングが必要です。立つ、歩くといった粗大運動とは少し違い、自然にできるようになるものではありません。
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発達障害(神経発達症)がある場合に見られる微細運動の特徴(併存症として発達性協調運動症がある)

それでは、発達障害(神経発達症)があった場合、微細運動の発達には何か影響があるのでしょうか。それはなぜなのでしょうか。

「こうしたい」という意思と、実際の手指の動きがうまく連動しない

●協調運動の課題
発達障害(神経発達症)がある場合、神経伝達がうまく伝わらないことがあります。「皿の上にあるボーロを取って、口に運んで食べたい」と脳で思っても、そのとおりに体を動かせないために、ボーロをつまめない、つまめたとしても力が軽すぎて落としたり、逆に強すぎてつぶしてしまう、また、そのあと口元まで運ぶことがうまくできない、ということがあります。

●感覚過敏があるため、物に触りたがらない
もうひとつの発達障害(神経発達症)の特徴として、感覚過敏があります。そもそも違和感のあるものを触りたがらないために、微細運動の発達の遅れがみられる場合があります。

物の温度・手触り・色・材質・形・におい・その物が発する音などについて、温度覚、触覚、視覚、嗅覚・聴覚等が関わってきます。そうしたものについて、いやな思いをしてしまうと、同じ色のものは触りたがらない、といった傾向もあらわれます。

また、特に冬場の空気が乾燥しているときには静電気もあり、パチッという感覚を怖がって、物を触らないことがあります。これは、発達障害(神経発達症)がない子どもにも、あることです。

こうして、発達障害(神経発達症)がある子どもの場合、微細運動の発達に遅れがみられることがあります。それぞれの動作ができるようになる時期の目安は前述の通りですが、たとえば1歳半を過ぎたころになっても、ものをつかむときに指を使わず手のひら全体でつかもうとしたり、フォークやスプーンがうまく使えなかったりといったことがあります。

「不器用」とは、感覚統合がうまくできない状態

一般的にいわれる「不器用」というのは、感覚とこうした手指の動きがうまく連動できないということです。体の感覚統合がうまくいっていない場合に起こります。

* 感覚統合とは
人間の感覚には、既によく知られている五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。
(中略)
次々と身体に入ってこようとするこの7つの感覚を整理したり分類したりするのが感覚統合です。このはたらきによって、その場その時に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。リハビリではOT(作業療法士)が感覚統合訓練を担当します。発達障害(神経発達症)がある子どもにとって一番いい療育は、感覚統合訓練が含まれている音楽療法と乗馬療法です。

(「感覚統合」とは? 発達障害との関係、家庭や学校でできる手助けまとめ より)

出典:https://h-navi.jp/column/article/35025964

発達障害(神経発達症)がある子どもの微細運動の発達を促すためにできること

微細運動がうまくできない状態は、脳からの神経伝達が体の細部にうまく伝わらず、自分が思ったように手指を動かせないということです。生活する中で身の回りのことを自分でできるようになるためにも、感覚統合を促すようなトレーニングが必要となります。

ただ、子どもが興味を示さないようなトレーニングでは、長続きはしません。道具の選び方を工夫したり、遊びの中でチャレンジする機会を増やしたりしてみましょう。うまくできたら、ほめることも大切です。

手指を使うタイプのおもちゃで遊ぶ

0歳代から遊べる、いわゆる「知育玩具」と呼ばれるおもちゃの中には、手指の動きをトレーニングできるものがあります。ボタンを押したり、ダイヤルを回したりすると音がしたり、形の合う穴に積み木を入れたり、遊びながら手指を使う練習ができます。

握りやすい、使いやすい道具のデザインを選ぶ

ユニバーサルデザインの食器類を使うことで、フォークやスプーンが使いやすくなります。通常のスプーンは柄から先端までがまっすぐで、口に入れるためには手首の動きをこまかく調節して角度を変えなくてはなりません。はじめから角度がついているものなら、そのまま口元へもっていくだけで自然と口に先端が向くようになります。自分でうまく食べられたという成功体験を積むことで、いやがらずにトレーニングを進めていくことができます。

筆記用具は、握り方を少しずつ教えて練習

筆記用具を使う練習は、柄の部分が太く丸いクレヨンなど、手のひらで握ることができるものからスタートします。だんだんと、柄の細い鉛筆やペンに慣れていきます。鉛筆の正しい握り方を伝えるときには、ただ握り方を見せてまねをさせるのではなく、こまかいプロセスに分解して教えることが必要です。親指と人差し指でペンをはさんで持たせてみて、そこに中指・薬指を添えて、小指を紙に接するようにさせて安定した持ち方を覚えます。

衣類の着脱の練習は、ボタンが大きいものから

手指のこまかい動きが必要な、服を着たり脱いだりと言う動作。特にボタンをかけるのは両手の人差し指・親指を使う複雑な動作となります。大きなボタンからトライして、だんだんに小さなボタンも開け閉めできるようにしていきます。

脱ぎ履きがしやすい靴を選ぶ

靴を履くときには、手指の動きだけでなく、足の動きも連動します。足首をしっかり固定する靴のほうが、歩行の成長には望ましいですが、履き口が深い靴は脱ぎはきがむずかしいこともあります。最近は、ひものないマジックテープの靴(※)もあります。

靴ひものある靴は、デザインはよいですが、履くのがとても大変です。特にひもを結ぶ「蝶結び」は、手指の動きの中でもかなり高度なテクニックが必要です。 子どもが自分で脱ぎ履きできるように工夫された靴を選びましょう。
※自閉スペクトラム症のある子どもは、こだわりのためマジックテープの位置が気に入るまで何回もはがすことがあります

ひも通しやひも結びなど、成長に合わせて、さらに複雑な動きへのトライ

このほかに、穴にひもを通したり、ひもを結んだり、両手を連動させるより高度な微細運動にトライしていきます。自分の身の回りのことが一通りできる微細運動よりもさらに複雑な動きは、その子がつくりたいものや、やってみたいことに合わせてトライしてみるといいでしょう。

いずれにしても、繰り返しトライすることでだんだんにコツがわかったり、腕や手指の可動域が広がったりして、できることが増えていきます。そして、何度もやってみるためには、できたときに「できたね!」とほめられて、成功体験となることも大切です。楽しく遊びながらトレーニングをしていきましょう。

微細運動の発達が気になったら、どこに相談する?

微細運動の発達が気になったら、まずは1歳6ヶ月健診や、3~4歳児健診などの健診の機会に相談してみましょう。問診の中で指摘されることもあります。また、かかりつけの小児科医に相談してみるのもよいでしょう。リハビリや作業の訓練などをしてくれる作業療法士につなげてくれることもあります。

作業療法士とは?

医師の診断のもと、体の動かし方、手指の動かし方をトレーニングしてくれます。個々の骨格や関節の動き方を見ながら、その子に合った動かし方を考えて指導します。トレーニングといっても、楽しく遊びながら自然とできるような方法を教えてくれるでしょう。

作業療法士のリハビリを受けるには?

作業療法士は、単独での判断でリハビリを行うことはできません。医師の診断が必要となります。ケガなどが原因で手指が動かしづらい場合には、整形外科での相談もありますが、発達障害(神経発達症)による感覚統合訓練の場合は、小児科医や児童精神科医との連携となるでしょう。

まとめ

微細運動の発達を促すのは、何度も繰り返し練習してみること。楽しく遊びながらでなければ続かないし、やらなくなってしまいます。また、「できた!」という成功体験も大切。「訓練しなくては」ではなく、「楽しみながらできるようになる」ことを目指しましょう。
(監修:鈴木先生より)
かつて、発達障害(神経発達症)は微細脳機能障害(MBD/Minimal Brain Dysfunction)と言われていました。周産期に何らかの微細な損傷が脳内に起こったために多動や不注意など今でいうADHD症状、こだわりや感覚過敏など今でいう自閉スペクトラム症の症状、手先が不器用で協調運動が拙劣など今でいう発達性協調運動症の症状があったと信じられていたのです。しばらくしてそれは否定され、ICDやDSMで「軽度発達障害」という概念が生まれてきたという歴史があります。いずれ、その「軽度」もなくなり、「発達障害」となり、今の「神経発達症」に至っています。今回のテーマである微細運動における障害は、発達障害(神経発達症)のお子さんには比較的多くみられ、「発達性協調運動症」と言われています。手先が不器用でヒモを結んだりボタンをかけたりすることが苦手で、体のバランスや手足の協調運動が悪く縄跳びや球技が苦手なお子さんがこれにあてはまることが多いです。定規を使って線を引くことや字を書くことが苦手なお子さんも多くいます。

ただ、根底にADHDのあるお子さんはADHDを治療することによって発達性協調運動症を多少改善することが可能です。非薬物療法としては音楽療法や乗馬療法などもあります。公園やアスレチックなどでバランスを磨き、ブロックなどを使って指先を鍛えることも重要です。

トレーニングとしては作業療法士が行う感覚統合訓練が有効です。病院や療育などで行われていますが、感覚統合の講習を受けその資格を持った作業療法士のもとで行うことが重要です。
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