冬の服装は「靴の小石」のような痛さ。イルミネーションも防寒具も、ご馳走もつらくて――当事者が語る冬の感覚過敏あるある
ライター:加藤路瑛
感覚過敏の困りごとは24時間365日、私たちを絶えず悩ませますが、季節ならではの困りごとも存在します。今回は、冬ならではの感覚過敏の困りごとや、当事者なら「あるある」とうなずいていただけるようなお話をしてみたいと思います。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
冬の服はとにかく重い
こんにちは。加藤路瑛です。15歳、高校1年生です。自分の困りごとである感覚過敏の問題を解決したいと思い13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。 今回は、冬ならではの感覚過敏の困りごとを私の体験と、私が運営している感覚過敏の当事者と家族が参加できる感覚過敏コミュニティ「かびんの森」の参加者の体験を交えて紹介したいと思います。
寒い冬は、服を何枚も着込み、コートやマフラー、帽子、手袋、ブーツととにかく身につけるものが多い!けれど、服の重さが苦手、重ね着が苦手、首回りが過敏など、触覚に過敏さがある人にはつらい季節でもあります。
私の場合、まず、コートやジャンパーなどの防寒着を着たくありません。コートは重いし、その重みで肌に服があたる面積が増える。うまく表現ができませんが、「着ている感」が強くなるのです。
私立中学校に通っていたときは、コートは学校指定のものがありました。いわゆるPコートと呼ばれるタイプのコートです。値段も高かった記憶もあり、私は「いらない」と親にいいました。親も流石に寒いときに困るから買っておこうというのですが、絶対に着たくない。制服ですら重いのに、コートなんて着たら鉛を背負っているようなものです。私は、真冬もコートなしで制服のみで登校しました。
私の場合、まず、コートやジャンパーなどの防寒着を着たくありません。コートは重いし、その重みで肌に服があたる面積が増える。うまく表現ができませんが、「着ている感」が強くなるのです。
私立中学校に通っていたときは、コートは学校指定のものがありました。いわゆるPコートと呼ばれるタイプのコートです。値段も高かった記憶もあり、私は「いらない」と親にいいました。親も流石に寒いときに困るから買っておこうというのですが、絶対に着たくない。制服ですら重いのに、コートなんて着たら鉛を背負っているようなものです。私は、真冬もコートなしで制服のみで登校しました。
小学校時代は親に言われるがまま冬はジャンパーを着ていたと思いますが、中学生以降、私はプライベートでもコートを着なくなりました。制服だけで登校するなかで、「なくてもなんとかなるのでは?」と真冬でもランニングシャツとパーカ1枚で外出します。
親には「見てるだけで寒いからなんとかして」とよく言われましたが、身軽さを体験するともう重いコートやジャンパーは着られないのです。そんな状態だった中学1年の2月、北海道に行く用事ができました。「北海道はパーカだけじゃ無理だから何か買おう」と言われ、母が「これは最高級にあったかくて軽いから」と超薄手ダウンジャケットを買ってきました。
確かに軽い。北海道に行く日、はじめてそのダウンジャケットを着て、受け入れられる防寒着ができたことに安心した記憶があります。
高校生になった今も、基本はパーカだけで出かけてしまいます。やっぱり寒いことより、服をいろいろ着込むことが嫌なのです。なので、このダウンジャケットは常時リュックに入れてあります。限界だと思う日に着ます。大体、家を出るときはパーカだけで出て、駅のホームとか外で信号待ちしているときとか、ビル風に吹かれて限界を感じます。そうしていそいそとダウンジャケットを着ます。「そんなの手間だから家から着ていけ」と言われるのですけどね。やっぱり防寒具はできるだけ着ていたくないです。
親には「見てるだけで寒いからなんとかして」とよく言われましたが、身軽さを体験するともう重いコートやジャンパーは着られないのです。そんな状態だった中学1年の2月、北海道に行く用事ができました。「北海道はパーカだけじゃ無理だから何か買おう」と言われ、母が「これは最高級にあったかくて軽いから」と超薄手ダウンジャケットを買ってきました。
確かに軽い。北海道に行く日、はじめてそのダウンジャケットを着て、受け入れられる防寒着ができたことに安心した記憶があります。
高校生になった今も、基本はパーカだけで出かけてしまいます。やっぱり寒いことより、服をいろいろ着込むことが嫌なのです。なので、このダウンジャケットは常時リュックに入れてあります。限界だと思う日に着ます。大体、家を出るときはパーカだけで出て、駅のホームとか外で信号待ちしているときとか、ビル風に吹かれて限界を感じます。そうしていそいそとダウンジャケットを着ます。「そんなの手間だから家から着ていけ」と言われるのですけどね。やっぱり防寒具はできるだけ着ていたくないです。
そもそも冬はアイテムが多い
冬は、マフラーや帽子、手袋などのアイテムが増えます。どれも私には無理です。厳密には、私の場合、毛糸のマフラーや手袋、帽子はチクチクして難しいですが、ほかの素材なら受け入れられるものはあると思います。でも、寒くてもできるだけ体には何もつけないことを選びます。本当に極寒の地ならば、手袋も選ばざるを得ないのかもしれません。状況を比較して、耐えられるギリギリの選択をしているのかもしれません。こう書くと「着られるなら我慢して着ろ」ということになるのかもしれませんが、これがなかなか苦しいです。
最近、感覚過敏のつらさをお伝えするいい例えを思いついたので共有したいと思います。
外を歩いているとき、ふと、靴の中に小石が入っていることに気がつきます。痛い。気になる。すぐに止まって小石を取り除きたいが、人通りが多く急に立ち止まることができない。数歩頑張って歩いて立ち止まれる場所でようやく靴をぬいで小石をとる。
感覚過敏の人の痛みはこの「靴の小石」に似ていると思います。数歩、数秒は我慢できるけど、ずっとはきつい。小石を入れながら歩き続ける苦しみを想像いただければと思います。
そんな感じで、冬の服装は、ずっと苦しいです。
最近、感覚過敏のつらさをお伝えするいい例えを思いついたので共有したいと思います。
外を歩いているとき、ふと、靴の中に小石が入っていることに気がつきます。痛い。気になる。すぐに止まって小石を取り除きたいが、人通りが多く急に立ち止まることができない。数歩頑張って歩いて立ち止まれる場所でようやく靴をぬいで小石をとる。
感覚過敏の人の痛みはこの「靴の小石」に似ていると思います。数歩、数秒は我慢できるけど、ずっとはきつい。小石を入れながら歩き続ける苦しみを想像いただければと思います。
そんな感じで、冬の服装は、ずっと苦しいです。
体が冷え切って限界です
外でも薄着ですが、家の中でも薄着です。私は冬でも家の中はランニングシャツとパンツだけです。エアコンはついていますが、それだけでは寒く、手足、特に足先は氷のように冷たく、親にもびっくりされます。布団の中に潜り込むことが多いですが、机で作業したり、勉強したり、ゲームしているときは肌が露出していて寒いです。布団をかければいいのでしょうが、体を起こしているときに布団をかぶると、ふとんが重くて苦しいのです。
肌着もランニングシャツで、長袖タイプや冬の暖かくなる下着なども苦手で着られません。軽くて、着ていることが苦しくない服を早く作りたいなと思っています。
ちなみに、靴下が最大に苦手な私は、冬、近所に出かけるくらいなら、裸足にサンダルです。
肌着もランニングシャツで、長袖タイプや冬の暖かくなる下着なども苦手で着られません。軽くて、着ていることが苦しくない服を早く作りたいなと思っています。
ちなみに、靴下が最大に苦手な私は、冬、近所に出かけるくらいなら、裸足にサンダルです。
感覚の刺激になるものは最初から避けてしまうのでしょう。