冬の服装は「靴の小石」のような痛さ。イルミネーションも防寒具も、ご馳走もつらくて――当事者が語る冬の感覚過敏あるある

2022/01/05 更新
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感覚過敏の困りごとは24時間365日、私たちを絶えず悩ませますが、季節ならではの困りごとも存在します。今回は、冬ならではの感覚過敏の困りごとや、当事者なら「あるある」とうなずいていただけるようなお話をしてみたいと思います。

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加藤路瑛
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

冬の服はとにかく重い

こんにちは。加藤路瑛です。15歳、高校1年生です。自分の困りごとである感覚過敏の問題を解決したいと思い13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。 今回は、冬ならではの感覚過敏の困りごとを私の体験と、私が運営している感覚過敏の当事者と家族が参加できる感覚過敏コミュニティ「かびんの森」の参加者の体験を交えて紹介したいと思います。
寒い冬は、服を何枚も着込み、コートやマフラー、帽子、手袋、ブーツととにかく身につけるものが多い!けれど、服の重さが苦手、重ね着が苦手、首回りが過敏など、触覚に過敏さがある人にはつらい季節でもあります。

私の場合、まず、コートやジャンパーなどの防寒着を着たくありません。コートは重いし、その重みで肌に服があたる面積が増える。うまく表現ができませんが、「着ている感」が強くなるのです。

私立中学校に通っていたときは、コートは学校指定のものがありました。いわゆるPコートと呼ばれるタイプのコートです。値段も高かった記憶もあり、私は「いらない」と親にいいました。親も流石に寒いときに困るから買っておこうというのですが、絶対に着たくない。制服ですら重いのに、コートなんて着たら鉛を背負っているようなものです。私は、真冬もコートなしで制服のみで登校しました。
小学校時代は親に言われるがまま冬はジャンパーを着ていたと思いますが、中学生以降、私はプライベートでもコートを着なくなりました。制服だけで登校するなかで、「なくてもなんとかなるのでは?」と真冬でもランニングシャツとパーカ1枚で外出します。

親には「見てるだけで寒いからなんとかして」とよく言われましたが、身軽さを体験するともう重いコートやジャンパーは着られないのです。そんな状態だった中学1年の2月、北海道に行く用事ができました。「北海道はパーカだけじゃ無理だから何か買おう」と言われ、母が「これは最高級にあったかくて軽いから」と超薄手ダウンジャケットを買ってきました。

確かに軽い。北海道に行く日、はじめてそのダウンジャケットを着て、受け入れられる防寒着ができたことに安心した記憶があります。
高校生になった今も、基本はパーカだけで出かけてしまいます。やっぱり寒いことより、服をいろいろ着込むことが嫌なのです。なので、このダウンジャケットは常時リュックに入れてあります。限界だと思う日に着ます。大体、家を出るときはパーカだけで出て、駅のホームとか外で信号待ちしているときとか、ビル風に吹かれて限界を感じます。そうしていそいそとダウンジャケットを着ます。「そんなの手間だから家から着ていけ」と言われるのですけどね。やっぱり防寒具はできるだけ着ていたくないです。
ダウンジャケットを着る筆者
愛用してるダウンジャケット。と言っても着る機会は少なく、ようやく写真を見つけました!
Upload By 加藤路瑛

そもそも冬はアイテムが多い

冬は、マフラーや帽子、手袋などのアイテムが増えます。どれも私には無理です。厳密には、私の場合、毛糸のマフラーや手袋、帽子はチクチクして難しいですが、ほかの素材なら受け入れられるものはあると思います。でも、寒くてもできるだけ体には何もつけないことを選びます。本当に極寒の地ならば、手袋も選ばざるを得ないのかもしれません。状況を比較して、耐えられるギリギリの選択をしているのかもしれません。こう書くと「着られるなら我慢して着ろ」ということになるのかもしれませんが、これがなかなか苦しいです。

最近、感覚過敏のつらさをお伝えするいい例えを思いついたので共有したいと思います。

外を歩いているとき、ふと、靴の中に小石が入っていることに気がつきます。痛い。気になる。すぐに止まって小石を取り除きたいが、人通りが多く急に立ち止まることができない。数歩頑張って歩いて立ち止まれる場所でようやく靴をぬいで小石をとる。

感覚過敏の人の痛みはこの「靴の小石」に似ていると思います。数歩、数秒は我慢できるけど、ずっとはきつい。小石を入れながら歩き続ける苦しみを想像いただければと思います。

そんな感じで、冬の服装は、ずっと苦しいです。

体が冷え切って限界です

外でも薄着ですが、家の中でも薄着です。私は冬でも家の中はランニングシャツとパンツだけです。エアコンはついていますが、それだけでは寒く、手足、特に足先は氷のように冷たく、親にもびっくりされます。布団の中に潜り込むことが多いですが、机で作業したり、勉強したり、ゲームしているときは肌が露出していて寒いです。布団をかければいいのでしょうが、体を起こしているときに布団をかぶると、ふとんが重くて苦しいのです。

肌着もランニングシャツで、長袖タイプや冬の暖かくなる下着なども苦手で着られません。軽くて、着ていることが苦しくない服を早く作りたいなと思っています。

ちなみに、靴下が最大に苦手な私は、冬、近所に出かけるくらいなら、裸足にサンダルです。
感覚の刺激になるものは最初から避けてしまうのでしょう。
家の中での格好
家では真冬でも毎日、薄着です。
Upload By 加藤路瑛

クリスマスとお正月の食べ物

楽しみにしている人も多いクリスマス。クリスマスパーティーに呼ばれても私は食べられるものが少ないので、参加する直前は「食べられるものあるかな?」と不安になります。誰かの家のパーティーだと残してしまうことが失礼な行為だという気持ちがあるので最初から避けてしまいます。

賑やかなパーティーも聴覚過敏のせいなのか疲れてしまいます。みんなが楽しんでいることを避けてしまうと、寂しい気持ちも生まれます。今は、私の過敏さや食べられないことを理解してくださる人たちと行動することが多いので、気が楽になりました。

それでも、ケーキくらいはという気持ちはあるのですけどね。シンプルなショートケーキならいいなと思うのですが、ショートケーキの中でも食べられるものと食べられないものがあるので、自分の味覚にうんざりします。みんなと「美味しいね」と言いながら同じものを食べる。たったそれだのことができない自分に悲しくなるときもありますが、これが私なのだから、今は受け入れたいと思っています。いつか、味覚過敏で食べられるものが少ない人も、みんなと一緒に食卓を囲み、「美味しいね」と笑いあえる、そんな発明をしたいとも思っています。

お正月の食事も悩みでした。おせち料理はまったく食べられません。子どもならそんなものだとも言われますし、親は食べられるものを出してくれますが、親戚と集まるときは「それだけしか食べないの?」とみんなに言われます。そして、美味しそうにたくさん食べる子どもを褒めます。食べられない私が劣等感を感じる時間でした。「たくさん食べる子はえらい」というのは給食を含め、ずっと感じていることです。「たくさん食べることがえらい。おいしそうに食べることがえらい」そういう見えない常識のようなものが、薄い膜のように食べられない人間を覆うのです。

冬の世界はまぶしい

私は視覚過敏はそこまで強くはないので眩しさで困ることは少ないのですが、私が運営する感覚過敏コミュニティ「かびんの森」のメンバーの中には、クリスマスや冬のイルミネーションが眩しいという方が少なくありません。誰もがきれいだと喜ぶものが喜べないのです。イルミネーションから顔を背けて歩く。

雪の真っ白さにが目に刺さって痛い方もいるでしょう。太陽の光を乱反射させる雪が眩くて目が開けられない人もいるでしょう。

冬は眩しい。夏にサングラスをしていても不審がる人はいませんが、冬、特に夜にサングラスをしていると怪しい人に見えます。イルミネーションだけの問題ではなく、夜のネオンや車のライトが眩しすぎて、季節関係なく夜もサングラスをしたいという人もいます。でも、周囲からの目「あやしい」と思われるのを躊躇して我慢している人もいます。最近は、透明度の高い遮光メガネもありますが、手軽さはサングラスですね。個人的には夜にサングラス、かっこいいとすら思います。そう思っても、当事者はいろいろ周囲の目を気にしてしまうものなのだということを、自分の経験や過敏な方々の体験から感じます。

まとめ

冬の感覚過敏あるあるを集めてみました。冬の服、冬のイルミネーション、冬のイベントなど、感覚過敏の困りごとは季節にかぎらずずっとありますが、冬ならではの悩みがあることをお伝えできたらなと思います。

みんなが当たり前にできたり、楽しんだりすることが、感覚過敏によって少し寂しさやつらさを感じることもあるよということを知っていただけたら嬉しいです。でも、だからと言って、遠慮せずに楽しめる人は楽しんでほしいと思っています。いつか、テクノロジーの進化によって過敏な私たちもみんなと一緒に楽しめるものが増えたらいいなと思っています。

執筆:加藤路瑛
(監修者 井上先生より)

感覚過敏をはじめ、食のアレルギーや手術の後遺症、トラウマなどさまざまな理由や原因によって、服装や食事などに困難がある人がいますが、そうした当事者が気を遣って我慢をしたり、言いづらかったりする場面は実は多々あるのではないでしょうか。

食については、アレルギーによって食べられない人がることは理解されるようになってきましたが、感覚の過敏さによるものはまだ理解されづらいですし、視覚過敏によって強い日差しやイルミネーションなどがつらく感じる人もいます。

私自身、目の手術をした影響で夏場はサングラスをしないとつらいことが多いのですが、園や学校へコンサルテーションや教育実習の監督で赴く際にサングラスをすることに気を遣ってしまう場面もあります。

視覚や味覚についての困難は特に、今の社会状況ではまだまだ理解されづらいと思いますが、こうした状況があることを発信し、さまざまな感じ方をする人がいるということを発信していくことがとても大事だと思います。

対人不安などからマスクをずっとつけている人がいますが、以前はマイノリティーでしたが、現在はみんなが付けるようになったこともあり、まったく問題がなくなったという例もあります。みんなで一緒にサングラスをつける日など、キャンペーンをしてみるのもいいのではないかと思います。
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