自閉症の息子妊娠中、出生前診断を受けた私--母より背が高くなった21歳の息子を見ながら思うこと

ライター:立石美津子
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誰しも「わが子は健康に生まれてきてほしい」と思うものでしょう。私もそうでした。でも、生まれた子には障害がありました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

特別支援学校での経験が自信を失わせた


25年以上前になりますが、私は特別支援学校の教員免許をとるために特別支援学校で教育実習を行いました。

それまで机上で特別支援教育の勉強をしていましたが、実際、障害がある子を目にして、頭では理解しつつも、その支援の難しさを実感し「自分には障害がある子どもは育てられない」と強く思うようになっていきました。

特別支援学校には自閉スペクトラム症、ダウン症候群だけではなく、さまざまな障害のある子どもがいました。光を浴びてはいけない疾患のあるお子さんなどもいて、常に細心の注意をする必要がありました。

出生前診断とは

出生前診断には、形態異常を調べる超音波検査のほか、染色体異常を調べる母体血清マーカー検査や新型出生前診断(NIPT)、羊水検査などの種類があります。

母体血清マーカー検査や、新型出生前診断(NIPT)は診断が確定できない検査です。採血によって行います。羊水検査は診断が確定できる検査ですが、腹部に針を刺し羊水を採取する必要があります。

新型出生前診断の正式名は「母体血胎児染色体検査(NIPT)」といいます。妊婦の血液の中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体異常があるかを調べる検査です。採血による簡単な検査ですが、結果によっては「産む/産まない」の重い決断を迫られることになります。
参考:NIPT | 国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/saniden/nipt.html

検査を受けた経緯

2年間の不妊治療を経て38歳で妊娠したとき、クリニックで「トリプルマーカーテスト」というものを知りました。
この検査で確率が高くより正確な診断を希望する場合、確定診断が可能な羊水検査を行います。

不妊治療中は出口の見えないトンネルをさまよっているようでとてもつらい2年間でした。やっと妊娠したのに、今度はこれから続く10か月の間、「おなかの子どもに障害があったらどうしよう」と不安を抱えながら過ごしたくない気持ちもあり、トリプルマーカーテストを受けることにしました。教育実習のときに「私には育てられないだろう」と感じたことも背景にありました。採血の結果の用紙には「21トリソミー(ダウン症候群)の可能性【80%】」と書かれていました。

翌週、確定診断のために、入院して羊水検査を受けました。おなかに針を刺し、羊水を抜いている処置の最中、ずっと泣いている私に、医師は「何をそんなに泣いているんですか」と厳しい口調で言いました。「どんな子どもでも産もうと考えているならば、最初からこの検査を受けないでしょう。検査を止めますか?」と。

医師の言葉は正論でした。「障害の有無に関わらず、どんな子どもでも産んで育てる」覚悟ができているのであれば、そもそも受けることはない検査だったのです。泣いていること自体、矛盾している態度でした。

出生前診断については「検査でおなかの赤ちゃんに障害があると分かった場合、出産後の育て方について妊娠中、十分考えることができる」と医師が語るのをテレビでみたことがあります。

ですが、確定検査を受けて陽性となった妊婦の多くが人工中絶をしているといいます。

結果が出るまでは約1カ月。医師から「検査結果が出て1週間以内に産むか産まないか決めてください」と言われました。

結果は「21トリソミー(ダウン症候群)の可能性は【ない】」。13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)も陰性でした。
次ページ「ダウン症のお子さんがうらやましかった」

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