気持ちを吐き出していい相手でいるために、変わらずにい続ける

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――専門家の先生方からよく聞くのは、「思春期には、親や先生以外に相談できる第三者との関係があるといい」ということなのですが、葉一さん自身が、子どもたちにとって、そういう存在になっているのかもしれませんね。

葉一:それは意識しています。自分が中学生のときに欲しかったんですよ、そういう存在が。今の子どもたちにとって、大人といえば先生と親がほぼすべてですよね。私は、教育をやっているけれど、学校の先生ではない。相談したときに、その子の周りにうわさが広がることもないから、そういう意味でも気持ちを吐き出せる場所になっていたいと思っています。

そのためにも、変わらない安心感については意識しています。インターネットで活動しているからには、数字を獲らなくちゃいけない世界です。でも、たとえば登録者数が増えただけでも、子どもに「遠くに離れてしまった」と思わせてしまう。そこのバランスが難しいんです。だから自分は数字を狙った動画はつくらないんですよね。「2年ぶりに葉一の動画を見に来たけど、変わってなくて安心した」と言われたりするくらい(笑)。バズることを狙うならば、教科書レベルの授業をすべきではないかもしれません。でもそこは、これからも変えないでいきます。

子どもたちは大人の背中を見て育つ。だから生きる教材でありたい

左:葉一さん 右:牟田編集長(LITALICO発達ナビ)
左:葉一さん 右:牟田編集長(LITALICO発達ナビ)
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――こうしてYouTubeを続けてきた情熱やモチベーション、どういうところにあると思いますか?

葉一:子どもたちからの「分かりやすかったです」とか「ありがとう」を、YouTubeのコメント欄で毎日もらえることですね。ほんとに贅沢な人生だと思うんですよ。今はある程度成功しているように見えるかもしれないけれど、始めた当初の半年間くらいは誹謗中傷ばかりでしたから。だから、頼ってくれる子が一人でもいるなら、やめられないよな、とはいつも思っています。

――きっと、ストイックに続けている姿を見て、みんな信頼するのでしょうね。

葉一:そこは、授業のしかたも、教師としての在り方も、今でも恩師が自分にしてくれた姿を追いかけている部分があります。私自身が中学生のときに大人になりたくなかったのは、自分のまわりにキラキラしている大人がいなかったからでもありました。父は多忙すぎて家にあまりいなかったし、母も忙しくて働くのは大変だとこぼしていたから、歳をとることに対してネガティブな感情を抱いていました。学校の先生にも不信感が強かったころだから、大人になりたいとは思えなかったんですよね。

でも、自分が大人になってみると、すごく楽しいんです。だから、楽しんで、自分の道を突き進んでいく姿を、子どもには見せていきたいと思っています。今、8歳、5歳の子どものパパとして、息子たちに対しても、YouTubeを見てくれている子どもたちにも、自分が生きる教材でありたいと強く思っています。

――今の姿は、10年前に想像した通りですか?

葉一:YouTubeを見て学べるということを浸透させるのが夢だったし、時間をかければ叶うとは思っていたけれど、実は思ったよりも早く実現に近づけました。それはコロナ禍での一斉休校があったからでもあります。人生をかけて叶えるつもりの夢だったので、前倒しにはなってきた感じです。でもまだまだこれからです!

学ぶということ=お金をかけることというイコールを外していく。そこは10年前と変わっていません。手段はYouTubeではなくてもいいと思っていて、今後は、理念が重なる人たちと一緒にやっていきたいです。自分のチャンネルが数字を獲っていくということよりも、お金がなくても学べる方法があるということを浸透させるために、これからも活動していきます。

文/関川香織
撮影/鈴木江実子
葉一さんYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」
https://www.youtube.com/channel/UCzDd3Byvt91oyf3ggRlTb3A
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